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二章 自称探偵

「貴方は本当にマントを着た骸骨……死神に会ったんですか?」

 その発言を聞いた吉正明よしまさあきらは口をぎゅっと引き締めて冷や汗を流した。

 

 30分前。

 事務所は今日休みでのんびりしているつもりだった。桜は夕食を済ませてゆっくり読書をしていた。匤人はいつも休みの日は気分転換に港に行って夜の海を眺めるのが日課だった。

「…………」

 時計の音と外の車の音以外は何も聞こえない静寂が漂ってる。その時、事務所の入り口からバタバタと誰かが走って来る音が聞こえてきた。桜は地獄耳で直ぐに分かった。

 

 ドンドン!ドンドン!

 

「誰かいませか!!助けてくれ!!」

 桜は刀を左手に持って背中に隠した。聞いた事のない人の声で警戒して入り口に近寄る。

そして、扉を少し開ける。

 

「……どちら様ですか?……。」

 

「あ、あの!すみません。俺吉正明って言います。入り口に探偵事務所って書いてあってそれで」

 

 外見は二十歳前後。服装もとりあえず怪しい所はは見てとれない。確信した桜は扉を大きく開いて珍客と向かい合った。



  

「すみません。今日は休みなんです。所長も今、私用で出かけていて……」

「そこをお願いします!!俺今追われているんです!!マントを着た骸骨に!!」

「え?」

「嘘かもしれませんが本当なんです!!」

 突然理解出来ない話しに桜は困惑して棒立ちになった、神社かお祓いを勧めようとした。

「あのーそれは…うちではなく神社とかに…………」

 彼の瞳を見た彼女は一変した。

「貴方……その目……」

「え!?な、何か」

 この男の話しに彼女は考えた。骸骨に追われている。何よりも瞳が赤く輝いている事に、さっきは目よりも服装に注目していたから気付かなかった。

 

 彼は…………。


「……わかりました、お話しをお聞きしましょう。どうぞ中にお入りください」



 

現在。

「…………」 

 吉正は黙ったままで口を開かない。

 

「吉正さん。殺されると言ってここまで来たんですよね?何故ここだったんですか?」

 そう、この探偵事務所は少し特殊で余程の事がなければここに依頼が来ることはない。通常は他所の探偵事務所が、これは手に負えない案件が来たらここを紹介される。もう一つは警察からの依頼もやっている。

 それなのに彼はここを訪ねて来た。なんの迷いもなく。

「……他の探偵さんにも依頼、しました。けど、……見えない、分からないって言われて……ここを紹介されました」

 吉正はおぼつかない口調で話し始めた。不安なんだろう、他の探偵達から言われて来た呆れた様な言葉の数々が、誰も信じてくれないあの落胆した人間の姿が忘れられないのだろう。

 

「やや、やっぱり!!…大丈夫です!!多分疲れてるんだと思います!!かか、帰ります!」

 吉正は突然立って荷物を抱えてこの場を去ろうとしようとした。

「あ!ちょっと待って下さい!」



 

 吉正がドアノブを掴もうとしようとしたら、いきなり開いた。

「え!?」

 驚いた彼は動けなかった。目の前にずぶ濡れでワカメや海藻がくっついた30代前半のベストを着た男性がいた。左手には上着だろうかジャケットではなくパーカーらしき物を持っていた。


 ポタ、ポタ。雫が落ちる音だけが部屋に響く。


「ん?……!きみかい!?緊急の依頼人は!!」

「あの、えっ……と」

「いやぁ!随分と若いね!いくつ?」

「19歳……です」

「まだ未成年じゃないか!?大丈夫かい!?こんな時間にここにいて!」

 

「えーっと……高校は今年の春に卒業しました。だから多分大丈夫で……す。それよりだ、大丈夫ですか?ずぶ濡れですが……」

 

 吉正がようやくそのことに突っ込んだ。それに桜はため息をこぼした。

 

「はぁ……」

「ああ!大丈夫大丈夫!ちょっとあって海におっこちただけだから!この通り無事帰って来たから安心!!」

「安心じゃないですけどね」

桜はぼそっと小さく呟いた。


 

「ゴホン!!改めて!夕済探偵事務所ゆうずみたんていじむしょにようこそ!ここの所長の夕済匤人です!よろしく」

 匤人は吉正に右手を差し出して握手を求めた。

「あ、ああの」

 匤人は満面の笑顔で吉正に向ける。それに負けた吉正は握手に応じた。

吉正明よしまさあきらと言います」

「私も名乗り遅れました。桂木桜と言います。よろしくお願いします」

 

 匤人は桜に話しかける。

「桜この人にここの事務所について話したのか?」

「あ、」

「全く。警戒し過ぎて忘れていたな」

「……」

  桜は目を逸らす。

「吉正さん」

「は!はいい!」

 すっかり匤人の調子に流された吉正は言われるがままに返事を返していた。

「この事務所はある事について調べて解決する探偵事務所だ」

「はい?ええと?」

「…………単刀直入に言います。最初に!嘘ではありません。…………貴方は誰かに呪われています」

「……………………え?」

「この呪いはこの探偵事務所でしか解決できません!」

「………え?ええ!?えええええーー!!」


匤人は真っ直ぐ吉正の目を見て言う。

「おまかせ下さい!!この夕済匤人が必ず解決して見せます!夕済探偵事務所が!!」


だ、大丈夫なのだろうか…。

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