一章 やってきた青年
吉正明(20)はよるの街を走っていた。彼がたどり着いた場所はとある海の見える丘の家。そこにはこう書いてあった。お悩み事、浮気調査、怪奇譚、お話し伺います!お気軽に相談下さい。夕済匤人探偵事務所。と書かれた表札が立っていた。青年は息を荒げて表札を見たそしてこう叫んだ。
「助けて!死神に殺される!!」と
走って走って息が切れるぐらい走っている。
「はぁ!はぁ!……殺される!!死神に!!」
夕闇に響く青年の声音は恐怖を帯びていた。まるで何者かに怯えている様な感じだ。けれど背後には誰もいないあるのは朝霧町の町だけだった。
彼は港の防波堤あたりにいた。海風に耳をすませながら静かに座ってただ夜の海を見ていた。
夕済匤人それが彼の名前だ。
「…………」
目を瞑って波の音を聞いて静かに心を落ち着かせていた。そこに携帯電話の着信音が鳴った。着信画面を見ると助手の桜からだった。
「ん?…どうした?桜」
「…………え?依頼?今日は何んにもないだろう」
呆れた口調で電話を切ろとした時、桜の話で思いとどまった。
「……本当か?…………わかった今直ぐ帰る」
「はい、わかりました。では……。吉正さん大丈夫ですよ所長が来てくれるそうです」
息を切らした青年が事務所のソファで恐怖の様な顔で佇んでいる。それを見かねた桂木桜はため息をついて肩をおとした。そして、桜は事務所の台所の棚にあった、コーヒーの粉を取り出して丁寧に焙煎されたコーヒーを入れ始めた。
ゆっくりゆっくりお湯を注いでコーヒーを抽出する。いつの間か香りが部屋中に充満していた。
「……コーヒーの匂い」
それに気付いた吉正はようやく我に帰った。吉正の緊張が少しでも和らいだ様子を見た桜は一安心した。この事務所はカウターキッチンの目の前にお客さん用のソファがあって、いつも仕事の依頼はそこでやっている。その隣りに所長の机や作業テーブルがある、ちょっと変わった作りの事務所だ。桜は吉正に先程入れたコーヒーを出した。
「あ、ありがとうございます……」
吉正と向かい合いに座る桜。そして
「……コーヒーの香りには精神を落ち着かせる効果があります。飲めなくても香りだけを楽しむこともできます」
「そ、そうですか。でもせっかくいい香りだったから頂きます」
「…………ふぅー。美味しい」
「それは良かったです」
カップを持ちながら微笑む桜。時計をチラリと見た彼女はすぐ目を逸らした。所長の匤人が中々帰ってこない。それを諦めた桜は吉正に話しかける。
「……ところで吉正さん」
「は!はい!」
「その……所長が来るまでいくつか質問してもいいですか?」
「は、はい」
「………ありがとうございます。では、貴方は本当にマントを被った骸骨を……死神をみたんですか?」
初めまして、クマといいます。小説を書くのは初めてです、よろしくお願いします。
面白かったら幸いです!!