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出会わなかった方が良かった人なんていない

美しい花には刺や毒があるもの

その刺や毒も飲み込んで本当の美しさを知る

闇は深ければ深いほど美しい

毒も闇も飲んだつもりだったが1人残されて深い闇に落ちていくのは彼女ではなくわたしだった

この小説を出会ってたった半年で逝ってしまった彼女に捧げる


序章~暑い夏の日の出会い

2010年の夏、記録的な猛暑が続くなか東京はリーマンショックの影響から抜け出せずにいた

リーマンショック前に上向いた景気はまたもや失われた20年の不況真っ只中に再突入

破綻処理の時代にまた逆戻りなのかと後ろ向きな日々が続いていた

毎日の仕事に終われ趣味で過ごす時間などあるはずもなく、財閥大手と言えど世の中は業界大手であってもブラック企業さながら消耗の日々を過ごしていた

そんな景気は激寒、外は酷暑の年の夏、出会いは偶然だったのか必然だったのか…彼女と出会ってしまった

とあるプロジェクトの打ち上げの三次会、広告代理店の営業に連れられて西麻布の隠れ家みたいなお店に行ったことが、その後の運命を変えることになるなんてそのときは微塵も思わなかった

どうやって入るのか分かりにくいそのお店は会員制なのか入店する前のチェックが異常に厳しい上に屈強な店員ばかりでまともじゃない人間が関与している店であることは一目瞭然だった

会社からはこういう店でトラブルを起こすことを禁じられていたこともあり、付き合い程度でさっさと終わらせてタクシーで帰るか新橋のサウナかな?

なんて考えながら薄暗い高級な空間でタバコに火をつけてボンヤリしていた

暫くすると誰が見ても美女とわかる若い女性が4人やって来た

一人はお嬢様大学として名高い女子大生、一人はどこかで見たことのあるモデル、一人は売り出し中の女優、もう一人が他の三人とは違う少し影のある雰囲気を纏った彼女だった

お店はこの手のお店によくある気に入った女の子は連れて帰れるシステムの様で、良い子を揃えていることもあり、お店はこんな時間なのにかなりの繁盛だった

料金も格段に高いお店だろうなと気がついたものの、疲れて早く帰りたい自分はあまり興味がなかった

そんな気を察したのか有名女子大の女の子は

「どんなお仕事されてるんですか?」

「このお店よく来るんですか?」

と、自分たちを売り込んでくるがキャバクラとかとは何かが違う

明らかに繁盛しているのだが、全く他のお客さんが見えない仕掛けになっており、一度トイレに立った際にあまりの暗さに間違えて席に戻ってしまい、そこには有名な歌舞伎役者がいた

「お間違えですよ、お客様はこちらです」

と、言葉は丁寧ながら店員の目が異常に鋭くこの店員はカタギではないというのは理解できた

ここは銀座とは真逆の華やかさとどす黒さが同居した欲望の空間

恐らく女の子へのお店のバックも多いのであろう

こういうお店に来たことが会社にバレるのもちょっと嫌だなと社畜根性もあって聞かれた会社名もあえてスルーするか誤魔化す様に警戒しながら持ち帰らなくても売上に貢献すれば何事もなく帰れるかな?、と

「君達が飲みたいもの全部持ってきて」

短期戦にして帰ろうと代理店の営業の思惑とは真逆のストラテジーに打って出ることにした

想定していた違う展開に彼は気まずそうにしていたがどこにでもある会話を適当に話を流していた

すると、隣についた彼女は唐突に

「ハルカです、お昼は女子大生やってます!忘れたくないのでお名前伺っても良いですか?」

忘れたくない?特徴的な珍しい自己紹介に戸惑いながらも

「あれ、さっき言わなかったっけ?あぁ、苗字じゃなくて名前の方ね、俺はセイラ」

何をどうしてそう言ったのか、偽名にしてもひどい偽名だな?と思うものの言ったものは仕方がない

「え?どんな漢字なんですか?」

と戸惑う彼女に、もういいやと腹をくくり

「聖なる夜でセイラって読むんだ」

などとホストじゃあるまいしホントにそう読めるのかなというとんでもない嘘をついてしまった

そのあとのことは言ってしまった偽名ばかり気になって何を話したか…とにかく笑える話をすると彼女はよく笑いよく飲んだ

笑顔がとても楽しそうだったので早く帰るつもりが何だかんだで気がついたら3時になっていた

会計をするように代理店の営業に言うと

「この後どうされますか?」

予想していた問いに

「楽しかったからこのまま帰るよ」

と、店を後にすることにした

店を出る際に彼女は見送りに出てくるのかと思ったが何故か一切顔を見せなかった

「暑いな」

エアコンの効いた店から出るとこんな時間でも西麻布は熱帯夜らしく暑かった

見送りくらいして欲しかったな…なんて思ったもののそのあとの持ち帰りをしなかった自分が悪い、そんなもんだよと少し反省した

西麻布の交差点でタクシーを拾い新橋で軽くサウナに入り狭いカプセルの中で

「いい子だったな」

そんな思いにふけるのも一瞬、間もなく眠りに落ちていた

朝起きたら深酒もたたり調子は最悪

パチンコ屋の前の喫茶店でアイスコーヒーをがぶ飲みするも。余計に気持ち悪くなり昨夜の楽しさなど忘れて普通に日常へ戻っていった

それがファーストインパクトだった

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