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第57話 反撃、そして衝撃

「『熱殺火球』!」


「『虚空旋風刃』!」


 イグニスとネージュはそれぞれ火球と空気の刃を放つ。目標は、大穴の空いた外壁の外、上空を飛び回るベルムだ。二人は次々と攻撃を繰り出しベルムに命中させるが、やはりダメージを与えられている気配は見られない。


 しかし、今回はそれで良かった。ベルムが旋回してこちらに視線を向けたとき、イグニスとネージュは満足げに笑みを浮かべた。


「作戦通り、こっちに気付いたわ!」


「よし、次の攻撃の準備だ。構えろ!」


 傷だらけになったイグニスの前に立ち塞がるかのように、ネージュは刀を構えて腰を落とした。ベルムは二人の姿を見つけるや否や、翼をはためかせながらこちらに向かって急加速を始める。そしてその裂けた口には、巨大な火球を生成していた。


「来るぞ! ネージュ、今だ!」


「『虚空螺旋刃』!」


 イグニスの合図と共にネージュは外へと跳躍し、竜巻のように回転しながら夥しい数の空気の刃を打ち出す! それはベルムが火球を放ったのと全くの同時だった。空気の刃の群れは巨大な火球に次々と直撃し、その勢いを減衰させていく。


 巨大火球は無数の刃に切り裂かれ、火の粉をまき散らしながら四散する。ベルムがそれを見届けたとき、その背後からもう一つ、特大の火球が姿を現した。それはもちろん、ベルムが打ち出した火球とは別物だ。


「『熱殺恒星』!!」


 イグニスは、ネージュがベルムの火球を相殺している間に、背後で巨大な火球を成長させていたのだ。彼は手負いの身体に鞭打つように、渾身の力を込めて火球を撃ち出した!


「ゴアアアアアアアアアッ!?!?」


 火球を放った直後であったため、ベルムの口は開いたままだった。そこにイグニスの特大火球が命中! 火球はベルムの口の中で爆発を起こし、彼女は気が動転したかのように空中で身をよじらせる!


「やった! 効いたわ!」


 跳躍した勢いで近くの建物の屋上に着地していたネージュは歓喜の声を上げた。


 鎧のように強固な鱗に攻撃が通らないなら、目や口といった鱗のない部分を狙えばいい。だが目は範囲が小さい上、狙えば容易に閉じられてしまう可能性があった。だが口は、あれだけの大きさがある上に、火球を放った後は開いたままだ。そのためイグニスは、ベルムの気を引いて自分たちへの攻撃を誘発させ、ネージュにそれを相殺させた上で、背後からベルムの口を狙うという作戦を使ったのだった。二人の攻撃は、先ほどまでギクシャクしていたことを感じさせない、見事な連携であった。


 そして今、ベルムには大きな隙が生まれている。彼女が平静を取り戻す前に、イグニスとネージュはさらに彼女の口の中へと畳みかける!


「『熱殺火球』!」


「『虚空旋風刃』!」


「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


 ベルムは二人の連続攻撃によって一気に劣勢へと追い込まれた。藻掻き、叫べば叫ぶほどさらなる攻撃が彼女の口の中へと撃ち込まれる! イグニスとネージュは確信した。この調子なら削りきれる……! 


 だがその時!


「ゴアアアアアアアアアアッ!!!!」


「何ッ!?」


 ベルムは突如として身をひねり、まだ建物の中にいたイグニスへと襲いかかった! イグニスは横に飛び退こうとするが、先ほどの負傷により上手く身体を動かせず、間に合わない。ベルムはイグニスに噛み付こうとするが、イグニスは間一髪でこれを回避。再びベルムの背中へと飛び移った。


「フラムッ!!」


 その背後でネージュの叫び声が木霊する。イグニスは、今度はベルムの頭部から映えた巨大な二本角を両手で掴み、体勢を低くした。ベルムはそのまま建物に突っ込むと、壁を3枚破り、建物の反対側から飛び出した。


「ぐッ……!」


 イグニスはかなりの重傷ながらも最後の力を振り絞ってベルムの角にしがみついていた。頭の上で、至近距離から口に火球を放り込めれば、今度こそベルムを倒せるかもしれない。イグニスは隙を窺いながら、今にも角を離しそうになる傷だらけの両腕に力を込めた。


 ベルムはイグニスを乗せたまま高速で宙を翔ける。だがどういうわけか、先ほどのように街の上空を旋回するようなことはしない。まっすぐに街の最外周部を目指している。いったいどこへ向かうつもりだ……? 


 イグニスが訝しんでいるうちに、とうとうベルムはアエルシティの端を越え、雲のかかった海上へと飛び出した。そして今度は急速に高度を落とし、浮遊都市の下へと降下していく。イグニスは微かに胸騒ぎを覚える。ベルムは一体何をしようとしている……!?


 イグニスを乗せたベルムは遂に、街の底部へと到達した。それはイグニスも初めて目にする光景だった。浮遊都市の底には、青白く光る複雑な幾何学模様が描かれた、超巨大な円盤が取り付けられていた。浮遊都市の動力である、反重力魔法装置だ。イグニスはその存在を知らなかったが、これこそが浮遊都市が宙に浮くための仕掛けなのだろうと直感的に理解した。


 その瞬間、イグニスの脳裏に稲光のような衝撃が走る。まさか……!


 彼の悪い予感は的中した。ベルムは口の中に見る間に火球を蓄えると、アエルシティ底部の反重力魔法装置目がけて撃ち出した!

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