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第32話 使命、そして過ち

「フ、フラムさん……?」


 マッキナが辛うじて呟いた。アヴォリオやデレガートたちも驚愕する。


「お前さんら、なぜこの場所に……?」


 呆然と見つめるアヴォリオに、イグニスたちは歩みを進めながら問う。


「アヴォリオさん。一体貴方は何をしているんだ。事情は知らないが、このようなことは断じて許されん」


「女の子を足蹴にするなんて最ッ低ね。あなたたちがこんな極悪人だなんて、失望したわ」


「とにかく、今すぐマッキナと研究員の方々を解放するんだ」


 責め立てるような眼差しで向かってくる三人を見て、アヴォリオは研究員たちの前に立ち塞がる。


「この者たちを解放するわけにはいかない。マッキナのように魔法を使うオートマタがこれ以上生み出されれば、必ず人々の命を脅かすことになる。だから俺はここでマッキナを破壊し、その製造を中止させなければならないのだ」


 歪んだ使命感に駆られるアヴォリオに向かって、リヴィエルが叫ぶ。


「馬鹿なことを言うな!団員から聞いたぞ。あなたは復讐のためにこのような非道な行いをしているのだと!そのような私怨を、まるで正義のように振りかざすんじゃない!」


「ああそうだとも。これは俺の身勝手な復讐だ。……5年前に起こったオートマタの反乱のせいで、俺は大切な仲間を大勢失った。俺はオートマタにその復讐がしたいだけだ。だが、これ以上大切な人を失いたくないというこの気持ちも本当だ。だから、危険を生み出すマッキナはここで破壊しなければならない!」


 アヴォリオは言い放つ。だが、イグニスは冷静に反論する。


「話が飛躍しすぎだ。マッキナが反乱を起こすなどと誰が決めたのだ?貴様は勝手な理由を付けて、マッキナを復讐相手の代表者に仕立て上げ、自己を正当化しているだけだ。貴様にどんな過去があろうと、今貴様がしていることは過ちに他ならない」


 イグニスの言葉に、アヴォリオは俯いて黙り込む。だが、彼は非を認めたわけでも反省したわけでもなかった。再び顔を上げたとき、彼は赤黒く渦巻く目でイグニスたちを睨みつけていた。彼の鬼気迫る表情に、イグニスたちは思わず息を呑む。


「……そうか。どうやら分かってもらえないみたいだな。それならば、お前さんらにも消えてもらうしかねえ」


 続いてアヴォリオは仲間の団員たちに低い声で指示する。


「お前ら、まずはあの三人を叩き潰せ。マッキナの処遇はそれからだ」


「「「「了解!!」」」」


 気合いの入った様子で団員たちは前へと進み出る。剣や盾、アヴォリオと同じツメ付きグローブなどを構え、イグニスたちに向かって身構える。


 イグニスもネージュとリヴィエルに囁く。


「アヴォリオは俺が相手をする。二人は団員を退け、マッキナと研究員たちを救出してくれ」


「分かったわ」


「アヴォリオは任せたよ」


 三人は手短に話し合い、アヴォリオたちと向かい合う。アヴォリオが胸の前で腕を交差させ、言い放つ。


「俺たちの邪魔はさせん!大地魔法発動。『鉄牙裂殺』!」


 アヴォリオのグローブのツメが勢いよく伸びる。そして同時に、団員たちが雄叫びを上げる。


「「「「うおおおおおおッ!!!!」」」」


 各々の武器を振りかざし、アヴォリオたち鉄牙団が三人を襲う!


「大気魔法発動。『虚空旋風刃』!」


「水流魔法発動。『激流拳』!」


 ネージュとリヴィエルはそれぞれの魔法を放ち、団員たちを一掃しにかかる。しかし、ロビーで交戦した団員たちと同じようにはいかない。こちらの団員たちは攻撃を受けつつもすぐさま立ち上がり、二人に襲いかかってくる。試合場に配属された彼らは、鉄牙団の中でも精鋭なのかもしれない。


 二人の戦いを視界の隅に映しながら、イグニスはアヴォリオと向かい合う。一足早く飛び上がったアヴォリオが、ツメを振り上げ飛びかかる。イグニスは身軽な動きでそれを躱しつつ、燃え盛る拳をアヴォリオの腹部に叩き込む!


「『灼熱無双打撃』!」


 だが、イグニスの拳はアヴォリオが身に付ける分厚いチョッキに阻まれ、ほとんどダメージを与えられない。それどころか、反動として鈍い衝撃が腕に伝わってくる。これでは意味がない。防御が手薄な脇腹や二の腕、頭部などを狙うしかないだろう。


 アヴォリオは次々にツメを振り上げ、猛攻にかかる。イグニスはそれを躱しながら攻撃の隙を窺う。しかし、アヴォリオの動きは昼間にマッキナと戦った時とは比べものにならないくらい素早く、動きに無駄がない。彼の復讐心と歪んだ使命感が、戦闘能力をも高めているのだろうか。


 攻撃を休みなく続けながら、アヴォリオが叫ぶ。


「俺はもう仲間を失いたくない!マッキナを破壊すれば死んだ仲間たちは報われ、今の大切な団員たちを守ることができる!」


「仲間を失いたくないという気持ちは理解できよう。だが貴様を突き動かしている力の根源は身勝手な復讐心だ!その使命感が歪んでいるとなぜ分からない!」


 その言葉を聞き、アヴォリオが怒りに顔を歪めたその時、イグニスの渾身のパンチがその脇腹に叩き込まれる!火炎による威力の増大も相まって、アヴォリオは思わず攻撃を中断する。


「グワァッ!」


 アヴォリオが怯んだ瞬間、イグニスは一気に連撃へと移り、アヴォリオの無防備な脇腹に次々とパンチを繰り出していく。殴りながらイグニスはアヴォリオに向かって叫ぶ。


「貴様の過ちは三つある。一つ目は、過去の反乱による憎悪を復活させたことだ!」


「グワァァッ!!」


「二つ目は、復讐相手として無関係なマッキナを標的にしたことだ!」


「グワァァァッ!!!」


「三つ目は、仲間を守るためという理由をつけ、復讐心を正当化したことだ!」


「グワァァァァッ!!!!」


 イグニスの連続攻撃に、アヴォリオはたまらず吹っ飛ばされる。地にへばり呻きながら、アヴォリオは何とか立ち上がろうとするが、よろけて再び倒れ込んでしまう。そんな彼に歩み寄りながらイグニスが言う。


「いい加減自らの過ちに気付くがいい。貴様の使命感はすでに破綻している。さっさと諦め、マッキナたちに詫びるのだな」


 アヴォリオはゆっくりと顔をもたげる。だが、その目は未だに復讐の炎に燃えたままだ。


「黙れ……そんなことは始めから分かっている。だが、こうでもしなければ湧き上がる憎悪が抑えられねえ!」


 イグニスが歯がみしながら歩みを止める。アヴォリオは再びゆっくりと立ち上がると、イグニスへとツメの先端を突きつけた。


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