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第31話 鉄牙団、襲撃

 イグニスたちは魔法技術研究機構の敷地内の真っ暗な道を抜けて、闘技場へとたどり着いた。闘技場の真上から光が漏れており、そこでアヴォリオたちが何らかの事件を巻き起こしていることが分かる。


 見ると、闘技場の入り口が破壊されている。開いているのはそこだけであり、正面突破するしかないようだ。三人は顔を見合わせて頷くと、割られたドアのガラスを慎重にくぐり抜け、ロビーへと侵入した。


 その時である。突如として暗いロビーに明かりが付き、周囲から声が響き渡った。


「誰だてめえらは!邪魔者は蜂の巣だ!」


 照明が点灯した直後に出現したのは、鉄牙団の団員たちだった。ロビーに置かれた椅子や自動販売機などの陰から現れた彼らは、三人を取り囲んで筒状武器の砲口を向ける。三人はロビーの中央で背を合わせ、周囲の団員たちの攻撃を警戒する。彼らは三人の姿を目にすると、驚いたように言った。


「お前らはあの時の三人!なぜここにいる!」


「それはこっちの台詞よ!あなたたち、一体どういうつもりなの?あなたたちは野良ガーディアンでしょ!」


 団員の問いかけに、ネージュは叫ぶ。だが団員たちは悪びれる様子もない。


「アニキの命令だ!アニキはマッキナを破壊し、オートマタに復讐を果たすのだ。そして同時に、あのような危険なオートマタが反乱を起こすのを未然に防ぐつもりだ」


 まるで正義感にでも駆られているかのように叫ぶ団員をリヴィエルが怒鳴りつける。


「復讐だって?馬鹿なことを言うな!詳しい事情は知らないけど、そんな勝手な理由を反乱の防止などと言って正当化するなんて、許されるとでも思っているのか!」


「黙れ!お前らにアニキの腹づもりなんて分かりゃあしねえんだ。邪魔するなら問答無用で撃ち殺すだけだ!」


 砲口を突きつけて脅す団員たちに、イグニスが叫んだ。


「俺たちは引き下がるつもりなどない。貴様らにどのような理由があろうと、このような行いは許されないからだ。俺たちはアヴォリオさんを止め、マッキナを救い出す!」


 突然昼間とは口調が変わったイグニスに、団員たちは一瞬面食らったようだ。しかしすぐに気を取り直して筒状武器を構えると言い放った。


「構うものか!『念動投石銃』、撃てェーーーーッ!!』」


 瞬間、筒状武器から大量の弾丸が放たれる!だがその弾丸はイグニスたちに届くことはなく、分厚い氷の障壁に阻まれた。


「『氷結障壁』!」


 攻撃の予兆を感じ取ったリヴィエルが、三人の周囲に瞬時に水流を生み出して凍結させ、障壁を生み出していたのだ。弾丸は氷の障壁を貫通することなく受け止められる。


「チッ、水流魔法か!」


 団員の一人が舌打ちする。しかし、イグニスたちにも余裕はなかった。放たれる弾丸の数があまりにも多く、氷の障壁が見る間に穴だらけになり、脆くなっていく。リヴィエルが次々と水流を生み出して凍結させ、補強するが間に合わない。貫通するのは時間の問題だ。


「このままじゃ私たち、本当に蜂の巣よ!」


 ネージュが焦燥を顔に浮かべながら叫ぶ。


「分かっている……」


 リヴィエルは水流を生み出しながら歯を食いしばる。だが相手にはまだ残弾があるようで、攻撃が止む様子はない。見かねたイグニスが二人に言う。


「ここは俺に任せてくれ」


 イグニスの意図が分からないながらも、二人は頷いた。その様子を見届けると、イグニスはすぐさま飛び上がり、筒状に形成された障壁の内側を蹴って上へと上がっていく。


 そして、障壁の最上部に開いた穴から飛び上がってその姿を現した。周囲の団員たちは驚愕の表情でイグニスを見上げている。イグニスは天井の間際で体の周囲にいくつもの火球を出現させると、団員たちの頭上めがけて一気に投げつける!


「『熱殺火球・散弾』!」


 団員たちは避ける暇もなく、火球が頭に直撃!


「「「「「グワァァァァッ!!!!」」」」


 砲撃が止まった瞬間、リヴィエルは氷の障壁を溶解させる。そして、リヴィエルとネージュは怯んだ団員たちに畳みかける。


「『大瀑布激流砲』!」


 リヴィエルの生み出した水流から放たれた水の弾丸が、筒状武器の砲口に当たった瞬間に凍結!


「『虚空旋風刃』!」


 ネージュの抜き放った刀から放たれた空気の刃が、筒状武器に直撃して切断!


 団員たちの筒状武器があっという間に無力化されていく。一通り攻撃を終えた二人の元に、イグニスは着地する。


「ありがとう、フラム。おかげで助かったわ」


「何、このくらいどうということはない」


 再び背を合わせた三人は一切の攻撃を受けておらず、無傷のままだ。一方団員たちは飛び道具を失い、困惑したまま目を見開くばかりだ。


「な、なんてこった……こんなに強えなんて……」


「悪いけど、あなたたちにこれ以上構ってられないわ。さあ、先を急ぐわよ!」


 ネージュの声に頷き、イグニスとリヴィエルも試合場へと走り出す。


「畜生、待てぇ!」


「アニキの邪魔なんかさせるか!」


 後から団員たちが武器を振り上げ追いかけてくる。イグニスたちは全速力で駆け、試合場に繋がる通路へと滑り込んだ。通路入り口の扉を閉めた後、リヴィエルはそれ以上団員が追ってこられないように取っ手を凍結させてしまった。


 ……イグニスたちがロビーで戦闘を繰り広げている頃、試合場ではアヴォリオがデレガートにグローブのツメの先端を突きつけて脅していた。デレガートを始めとするマッキナ開発チームの研究員たちは、鉄牙団に突如として襲撃され、体を縛られてこの闘技場に連れ去られていたのだ。


 突きつけられたツメを目の前にして、デレガートは恐怖に震え冷や汗を流しながらも、暗い目で見下ろすアヴォリオを睨み返していた。


 アヴォリオの背後では、団員たちが縛られたマッキナを取り囲み、笑いながら足蹴にしていた。マッキナはどういうわけか機械の体に力が入らず、魔法を使えずにいた。団員たちに蹴飛ばされ、その顔や腕は傷ついて内部機構が所々露出している。彼女は悔しそうに歯を食いしばるが、体を上手く動かせない以上逃れることもできない。


 痛々しい姿となったマッキナの頭を踏みつけながら、団員たちが口々に言う。


「ギャハハハハ!昼間のかっこいい姿はどうしちまったんだよ、お嬢ちゃん!」


「このままじゃ全身スクラップになっちまうなあ!」


「その前にもっと楽しいことしようや!」


「馬鹿、こいつどうせ家庭用オートマタが素体だぜ」


「んだよつまんねえな!」


「じゃあぶっ壊しちまうしかねえなあ!ギャハハハハ!」


 侮辱的な言葉を投げかけられるが、マッキナは抵抗することもできない。そのような団員たちの声を背に、アヴォリオは低い声でデレガートを脅す。


「どうだ。あのままでは、マッキナはもうじき破壊される。その前に、貴様らに選ばせてやろう。貴様らが自ら責任をとってマッキナを解体し、今後魔法が使えるオートマタを一切製造しないと誓うのなら、解放してやろう。しかし、断るというのならマッキナは俺たちが破壊する。そして貴様らも同じ運命だ。さあどうする?マッキナが全壊する前に決めるんだな」


「ち、畜生……。マッキナは私たちが心血を注いで作ったオートマタだ。テラの力を再現するためにどれだけの時間をかけたと思っている!破壊などさせるものか!」


 悔しげに叫ぶデレガートの頭を、アヴォリオは勢いよく蹴り飛ばす。そしてその頭を踏みつけると、再びツメを眼前に突きつける。他の研究員たちはその光景に震え上がり、声を上げることすらままならない。


「黙れ。どのみちマッキナは破壊されるしかない。あんなものはこの世に存在しちゃあならねえからだ。後は貴様らが生きるか死ぬか。その道しか残されちゃいねえんだよ」


 アヴォリオの宣告に、デレガートは悔しげに歯を食いしばりながら涙を流す。その後ろではいよいよ団員たちが武器を振り上げ、マッキナを破壊しようとしている。このままマッキナは破壊され、研究員たちは命を奪われてしまうのか……?デレガートが、マッキナが絶望しかけたその時!


「貴様ら!一体何をしている!」


 突如として、試合場に少女の声が響き渡った。アヴォリオやマッキナを始めとする全員が声のした方を一斉に振り返る。そこには、イグニス、ネージュ、リヴィエルの三人が立っていた。


旧版第25話の内容を流用していますが、どうかお見逃しください。

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