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第19話 演習、そして応酬

 直後、イグニスは両手に炎をまとわりつかせながら飛び上がる。リヴィエルは腕から水流を生み出し、巨大な水の拳を形成する。イグニスの見立て通り、リヴィエルが使うのは氷結系水流魔法ばかりではないようだ。


 イグニスは右手を握りしめて拳に変え、空中で振りかぶりながらリヴィエルへと急速に接近する。そこに、リヴィエルの腕から伸びる水流の拳が迫る。


「『激流殴打』!!」


 先日、プーロが練習していた攻撃だ。だが、やはりというべきかリヴィエルの放つ拳はプーロよりも動作が洗練されており、無駄のない軌道を描きながらイグニスを弾き飛ばそうとする。


 だがイグニスは水流の拳に接触する直前、空中で体をひねりこれを躱した。そして拳を開き、攻撃を放った後のリヴィエルへと掌を向ける。


「『熱殺火球』!!」


 イグニスの掌から生み出された火球が射出され、リヴィエルへと猛烈な速さで接近!


「何ッ!『波状防壁』!」


 不意を突かれたリヴィエルはすぐさま水の拳を巨大な波の障壁へと作り替え、火球を防ぐ。火球が波の障壁に衝突し、音を立てて爆発する。水の拳にイグニスがいつも通り近接攻撃で対処していれば、あの爆発が手元で起こり彼は吹き飛ばされていただろう。


 攻撃を回避したリヴィエルは感心したように言う。


「流石だ。やはり遠隔攻撃も使えたんだね」


「当然だ。さあ、まだ戦いは始まったばかりだぞ!」


 リヴィエルに答えながら、イグニスは両手に次の火球を作り出していた。そして、先ほどよりも正確に狙いを定めてからリヴィエルに向けて発射!


 一方のリヴィエルは水流を形成し直し、頭をもたげた蛇のような形状をした水流を自身の背後に二つ作り出す。そして、水流の先端から水の弾丸を高速で射出!


「『熱殺火球』!」


「『大瀑布激流砲』!」


 二人がそれぞれ放った火球と水の弾丸が高速で衝突し、空中で爆発!二人はじりじりと試合場を回転するように動きながら、次々と火球、そして水の弾丸を射出していく。二人は互いの攻撃の軌道を正確に予測し、それぞれの攻撃を相殺しているのだ。そして、相手に弾丸を当てる隙を窺っているのである。生半可な実力の者ならば、対処しきれずに攻撃が直撃し、たちまち吹き飛ばされてしまうだろう。


 試合場の空中で連続して大爆発が起こる。周囲で見ていた生徒たち、ネージュ、そして審判までもがその様子を呆気にとられて眺めていた。二人の戦いはそれほどまでにハイレベルなものだったのだ。


 だが、徐々に押され始めたのはイグニスだった。リヴィエルが背後の巨大な水流から弾丸を放っているのに対し、イグニスは両手から火球を放っているのだ。当然、対処に遅れが見え始め、空中で起こる爆発も徐々にイグニスへと接近し始める。むしろ、今まで持ちこたえていた方が不思議なほどであった。


 そして、ついに水の弾丸がイグニスの腕に衝突!


「グワァッ!!」


 何とか直撃を免れ、吹き飛ばされることはなかったものの大きく態勢を崩されてしまった。これまでの正確無比な攻撃対処の応酬も崩れ、次々とイグニスへと水の弾丸が迫る。


「フラム、遠隔攻撃では分が悪かったようだね」


「ぐッ……」


 リヴィエルはここぞとばかりにイグニスへと水の弾丸を浴びせる。咄嗟に前傾姿勢で腕を交差させ、弾丸の直撃を耐えるイグニス。だが、少女型オートマタであるため体が軽く、少しずつ後方へと押されているのが分かった。


 やがて、イグニスの背後に試合場の枠が迫る。リヴィエルの優勢を見て、一斉に沸き立つ生徒たち。


「先生、いっけー!!」


「やっちまえー!!」


「リヴィエル先生素敵ー!!」


 リヴィエルが勝利を目の前に、イグニスへと声をかける。


「フラム、どうやらここまでのようだ」


 リヴィエルの言葉にイグニスは歯を食いしばる。しかしリヴィエルの言うとおり、このままでは敗北だ。だからといって横に飛び退けば、それこそ恰好の的になってしまう。もはやこれまでか……?


 いや、その時だ。イグニスは耳にした。必死に彼を応援する二人の声を!


「フラム!!あなたの力はそんなものじゃないでしょ!!」


「フラムさん、頑張れ!!負けるな!!」


 ほとんどの生徒がリヴィエルを応援するなか、ネージュとプーロだけがイグニスを応援していたのだ。


「おいプーロ、なんであの子を応援してんだ!」


「あんたも先生を応援しなさいよ!」


 周囲の生徒がプーロをとがめるが、プーロは止まらない。


「フラムさんは僕を助けてくれたんだ!!こんなところで負けるはずがない!!」


 リヴィエルへの応援に対し、イグニスへの応援はたったの二人だけだったが、イグニスの心を奮い立たせるにはそれで十分だった。自分を信じてくれる人が少しでもいるならば、その期待を裏切るわけにはいかない!


 イグニスは水の弾丸を受けながら、全身に力を込める。力を込めると言っても、機械の体なので気持ちの問題だ。そして、彼の集中が頂点に達したとき、彼は叫んだ!


「『炸裂熱波』!!」


 その時、闘技場にいた誰もが息を呑み、思わず腕で顔を覆った。イグニスの体を中心にすさまじい熱を帯びた爆風が吹き荒れ、水の弾丸を吹き飛ばしたのだ!イグニスの真っ正面で、水の弾丸が大爆発を起こす!


 爆発が晴れたとき、リヴィエルは視界の正面に堂々と仁王立ちするイグニスの姿を目にした。


「フラム……!」


 先ほどまで勝利を確信しつつあったリヴィエルが驚愕に言葉を失う。


 イグニスはその様子を見ると、燃え盛る拳を構えて言い放った。


「さあリヴィエルよ、ここから本当の勝負といこうではないか!!」

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