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第11話 子孫、そして訪問

「すいませーん。この街に四大勇者アクアの子孫がいらっしゃるって聞いたんですけど、どこにお住まいかご存じですか?」


 ネージュが道行く年配の男性を呼び止めて尋ねる。


「ああ、リヴィエルのことかい?アクアシティ第3区画の住宅街に住んでいるよ。大きな屋敷だから、行けばすぐに分かるだろう」


 どうやらアクアの子孫の名はリヴィエルというらしい。男性が尋ね返す。


「君たち、リヴィエルに何か用があるのかい?」


「いいえ、観光に来ているものですから、お住まいを一目見てみようと思いまして」


「そうかい。……しかし、四大勇者のアクアといえば、500年前に魔王に敗れ一人逃げ帰ってきたそうだよ。リヴィエルはそんなご先祖からの七光で大富豪、立派なお屋敷に住んでいるというわけさ。全く、うらやましい限りだね」


 男性はそんな嫌味を言いながら苦笑すると、二人に挨拶して去って行った。


「どうやらアクアの子孫、市民からはよく思われていないようだな」


「ええ、そのようね……」


 二人は男性に教わった住宅街へと再び歩き出した。


 イグニスは黙って歩きながら考えていた。四大勇者であるとはいえ、自分たちは魔王に敗れたのだ。人間が地上を追われた原因であるとも言える。人々からの評価が低いのは当然のことだ。頭では分かっていたつもりだったが、実際にそのような声を聞くと、改めて自分たちの敗北の責任がのしかかってきた。彼は再びやり場のない悔しさに襲われた。


 そんな彼の様子に気付いたのか、ネージュが声をかける。


「もうフラム、暗い顔になってるわよ。気持ちは分かるけど、何のために私たちがリヴィエルのところに向かっているのか思い出して」


「……ああ、そうだな。すまない。敗北の汚名を返上し、地上を取り戻すために俺たちは旅を始めたのだ」


 二人は話題を変えて気分を改めながら歩いた。アクアシティの建造物はどれもこれも乳白色の芸術品のようである。道のところどころに流れる水路や、交差点の広場に設置された噴水が良いアクセントとなっている。どこまで歩いても風景に飽きることはなかった。二人はしばしの間、観光気分を満喫した。


 第3区画の住宅街までの道のりは遠く、到着した頃には日が空高く昇り、二人を頭上から照らしていた。男性の言っていたとおり、住宅街に入ってすぐに開けた場所に出て、塀に囲まれた広大な屋敷が遠くに見えてきた。


「あれがリヴィエルの屋敷のようね」


「確かに、随分と立派だ」


 塀の向こう側にそびえ立つ屋敷の威容は、見る者を圧倒するかのようだった。まるで巨大な白亜の神殿のようだ。このような建物に人が住んでいるとは信じがたいほどである。


 二人が塀の周囲を歩いていると正門があり、その前にガーディアンに似た鎧を着た門番が立っていた。ネージュが門番に声をかける。


「あのー、こちらがリヴィエルさんのお宅で合ってますか?」


「ええ、そうですが……お二人はご来客の方ですか?」


 門番が怪訝そうな顔で二人の恰好を見やる。確かに、この神殿のような屋敷に尋ねてくるには似つかわしくない服装だ。


「ええ。リヴィエルさんに用事がありまして」


「来客の予約は取られていますか?」


「いや、予約は取っていないんですけど」


 ネージュが言うと、門番は話にならないといった様子で首を横に振った。


「リヴィエル様は非常にご多忙なのです。予約を取ってからまたお越しください」


 当然と言えば当然だが、二人は門前払いされてしまった。すると、イグニスが前に進み出て門番に言った。


「聞いて欲しい。にわかには信じがたいかもしれないが、俺は四大勇者のイグニスなのだ」


「ちょ、フラム、何言ってるの!」


 ネージュが驚いて制止するが、イグニスは止まらない。突然の名乗りに困惑した様子の門番に構わず、イグニスは続ける。


「俺は四大勇者の子孫を探している。リヴィエル殿は四大勇者アクアの子孫なのだろう?ぜひお会いしたい。ここを通してはもらえないか?」


 だが、イグニスの行動は無茶だった。門番が信じるはずもない。


「な、何を言ってるんだ君は!とっとと去らないと、ガーディアン本部に通報しますよ!」


 その時、門番の背後で閉ざされていた門が自動で開き、中から白い光沢を放つ大型の魔動車が姿を現した。イグニス、ネージュ、門番がそちらを注視すると、魔動車は門の外へゆっくりと進み出た。そして三人の前で停止すると、後部座席の窓がゆっくりと開き始めた。


「門の前で一体何の騒ぎだ?」


「リ、リヴィエル様……」


 門番が慌てふためく。窓から姿を現したのは、青い髪に瑠璃色の目をした青年だった。

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