大人にもなって親と買い物に行くとかwww
まだ遠過ぎて分からない事であるのに、意外と近かった事である。
スーパーの買い物カゴを手に持って、あれやこれやと詰め込んで、泣き叫んでもレジには通せず、返されたあの消えちまった思い出があったにも関わらずにだ。
それから10年後くらいが経ち。スーパーからショッピングモールとスケールアップをし、そこで友達と一緒に買い物したり、遊びに来たりと。親なんかとは絶対、買い物なんぞ来ないお年頃になった。
老いた親と寄り添うおっさん、おばさんを見ているとアホだねぇ~って、若さある内心が浮かぶ。
買い物のお手伝いは大変ですねぇ。
若さがあってもいずれそーなる、そんな事など分かるはずもない。
もしかすれば、介護ロボができて生活を支えてくれる時代になるかもしれない。
「うわぁ」
正直、引いた。
息子らしい男が、母親らしいおばさんと一緒に自転車コーナーに入っていった。
食品コーナーとかならまだ分かるけど、自転車とかマジで意味不明。それくらい自分で買いに行けってもんでしょー。付き添いないとダメなパターン?
もしかして、男の方は30後半くらいの見た目だから、流行りのこど○じ系なのかなぁ?おばさんの方に介護されてるのかな?
「電動自転車ってどれですかね」
「電動ですか。それならこちらですよー」
「ちょっとちょっと、正明。10万とか高すぎよ。母さん、電動自転車じゃなくても……」
「いいのいいの。気にするなよ。母さんは車の運転できないんだから、電動自転車にして買い物くらい楽にしなって」
えーーーっ!?
自分が買って親にあげるとか、バカなんじゃないですかーー?しかも、電動自転車。自分が使うならまだしも、親に電動自転車って……。マジ意味不明。親が買えよ!今まで子供を育てながら働いてるんだからさ、金あるでしょ。
私だって、こうしてバイトした金で買い物にくるわけだし。
「俺のボーナスくらい好きに使わせてくれ」
親孝行とか、私は絶対にしない。
自分の金は自分のモノよ。
「……分かったわよ。正明に多少は、甘える時ね」
「そうそう。ま、予算は13万ぐらいのもので、買い物で使うだけなんで手頃な感じの」
「かしこまりました」
人のために生きるとか、アホらしい。自分のために生きるが人生じゃない。
まぁいいや。自転車のカタログを読んでるフリして、あの親子の様子を見てみよ。って、自転車高っ!!ママチャリでも、もうちょい安いのあんでしょ。
「……………」
「はー、なんか落ち着かないわね」
「普段自転車屋に来ないしな。一緒に出掛けるのも久しぶりだし」
親と仲良くできるとか、マジでおかしいわ。親なんてただ衰えて、動けなくなる財布みたいな存在。家にいるペット以下なもんでしょ。飯も食うし、お風呂も入るし、喋るし、屁も出すし。
友達や将来の彼氏にマジで紹介したくない。
「こーいうのどうですかね」
「どう?母さん」
「そ、そうね。電動ということはバッテリーの付け方とか、充電の仕方が簡単なのが。いいかしら」
「大丈夫ですよー。簡単ですから」
「機械音痴なんだよな。未だにスマホは電話が精一杯」
親って流行りにも弱いから困ったものよ。
「できるかしら」
「覚えればいいだろ。バッテリー付けないと、普通の自転車より重いんだからよ」
…………それにしても、なんでこんなバカな事する人っているんだろ。
親に物を買ってあげるなんて。
「彼は社畜だから、金が余っているのよ~」
「うわぁっ!?」
そんな私の後ろから声を掛けてきたのは、自分よりも綺麗で大人なお姉さん。
心の中を透かされた言葉にビックリして、カタログを落としてしまった。
「三矢くんの事が気になってたでしょ?」
「だ、誰の事よ。なんなんですか!?いきなり」
「いやいや、別にー。ただ、面白そうだったから揶揄っただけ。これくらいポンッと出せる大人なだけよ。分かった、嫉妬女子高生ちゃん」
「!おばさんがいきなりなんなの!もうっ!!」
そういって見下す事に粋がる女子高生は、早足で店から出ていった。
「親を助けられるくらい余裕のある人と付き合った方がいいわよ。金もある証拠なんだから」
って言ってあげれば良かった、酉さん。
そんな雑なやり取りを、ほとんど最初から見抜いていた三矢はため息をもらす。
本音と共に。
「はぁ~……なんで偶然会うんだ?」
「正明。早く結婚してよねぇ。ほら、後ろにいる綺麗な子とか」
「いや、酉さんはちっと……」
「え?知り合いなの?あの子と」
親にも紹介したくない知人はいるもんだろ。