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第7話 〜いい日になりそうだ〜

 ————チリリリリリ! チリリリリリ! チリリリリリ!


「うん……」


 勇人は朦朧とする意識の中で腕を動かし、スマホを手に取りアラームを止める。いつもはアラームが鳴る前に起きれるが、今日は起きれなかった。

 いつも予備のためにアラームを設定しといて良かったと今日初めて思う。


「生きてるか……生きてるよな」


 勇人は今日もいつも通りに生きているかを確認した後、何故か変な気持ちになった。

 今日はいつも通りの日常ではない。今日は生きている事を確認した後に涙は出なかった。


「これも……あいつのせいか……」


 1週間の心との葛藤、そしてその葛藤から解き放たれた勇人は確実に心の成長をしていた。

 

「パンないし……どうしようか」


 顔を洗った勇人は立ち尽くす。主食のパンが無ければ食べる物がない。


「コンビニに行って、学校で食べるか」


 学校で牛乳パン食べるまでのプランを考え、勇人は直ぐに制服に着替え家を出る。家を出ると春らしい匂いが漂ってきた。今日は本当に良い日になりそうだと確信する。


「今日は居ないな」


 外に出てまず最初に確認するのは、藍が藍の部屋の前で寝ていないかだ。いつも、絶対に自分の部屋の前にいる藍。そんな藍をちょっと心配してしまっている勇人。


 それは絶対に誰にも言えない心境。その心境のおかげなのか、今日は藍は居なかった。


 その声色は安心してそうな声色。そんな声色にさせるほど藍は勇人を変えた。

 自分の心境を分かっていない勇人はそのまま学校の最寄りのコンビニに行き、牛乳パンを買おうとする。コンビニに入り、カゴを持ち、牛乳パンをカゴに沢山いれる。

 レジにカゴを持っていこうとすると丁度、人がコンビニ入って来る。


 いつもならコンビニに人が入ってきても気にしない。だが、今日は見てしまった。


 コンビニに入ってきた人は、勇人と目が合い笑顔になりながら勇人に近寄って来る。


「おお! 勇人! お前、やっと学校に来る気になったか! 心配したんだぜ!?」


 ————誰だこいつ?


 勇人は困惑する。いや、知っているはずだ。勇人が学校の中でトップ5に入るほど嫌いな奴だ。


「馬鹿っ! 違うぞ!? お前の心配なんかしてねぇからな!? 勘違いするなよ! お前の家に行ったのも全て藍さんの為なんだからな!?」


 ————誰だこいつ?


 またもや、勇人は困惑する。昨日の夜中に藍の顔を見た時よりも目の前の人物に集中する。


「なんだよ!? そんなに俺を見て!? お前に見られるとすげぇ気持ち悪いんだけど」


 その言い草を聞いてやっと理解する。こいつは日佐人だと。

 それを理解した勇人は、更に困惑する。こいつはこんなにも友好的だったかと。前までは勇人が暴言を吐く度に悪辣な言い方をして勇人を罵った。

 なのに今はこんなにも勇人に友好的になっていた。


 その理由は勿論、恋のせいだ。


 いつの間にか日佐人からの勇人の立場は、恋のライバルになっていた。嫌いな奴から、恋のライバルへの転換。そのせいで日佐人が友好的になっていた。


 まぁ、そんな事は勇人にとっては関係ない。勇人は店員にカゴいっぱいの牛乳パンを差し出した、


 日佐人は、勇人の会計している姿を見て自分がゴンビニ居ることを思い出す。


 コンビニに来たのは、日佐人が好きなほうじ茶を買いに来たからだ。日佐人は勇人から一旦離れ、一瞬でほうじ茶持って勇人の後


 日佐人が並んだ時、丁度勇人の会計が終わる。

 勇人はそそくさとコンビニを出ていった。

 日佐人は勇人と一緒に行ったら藍に会えると思い、会計を終えた後、勇人に追いつくように走る。


 学校に最寄りなコンビニなので勇人はもう学校の校門前にいた。

 勇人に追いついた日佐人は、周りをキョロキョロして不思議に思う。


「あれ? 藍さん居ないのか?」


 いつもなら絶対に勇人の近くにいる藍。だが、今日はいない。


「今日、藍さんはどうしたんだ?」


「黙れよ」


 心の闇が少し晴れてもいつも通りのスタイルを勇人は維持する。

 勇人の言葉を聞いて、ニタァと笑う日佐人。その顔を見て、少し不安な気持ちになる。暴言を吐いて、日佐人がこんな顔になることがなかったからだ。


「あー、なんかお前の暴言が心に響くな。これがライバルって奴か」


こいつは何を言ってるんだと勇人はまたもや困惑したが、それ以上に自分の暴言を聞いてもこんなにいい顔をした日佐人を見たことが無い。


それが無性に気持ち悪く、妙に腹が立った。


「あー、なんで俺ら2人だけで教室に行ってんだよ。早く藍さんに会いたいな〜」


 日佐人はそれを見上げ、藍を青空に写し出す。


だが、日佐人の思いは届かなかった。

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