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第3話 〜美味い〜

 ————ガラガラガラ


 保健室の扉が開き、保健室の先生、松下花江(まつしたはなえ)は扉の方を見る。

 そこには勇人が立っていた。

 勇人が保健室にくるのは教室で何かがあった時だ。だから何も追求せず、松下先生はいつも通りの声色で喋る。


「勉強したいなら、いつものようにやっていいぞ」


 勇人はいつものように松下先生の左隣の椅子に座る。

 勇人はこういう時用のために保健室に置いておいた問題集を机の引き出しから出す。


「「……………………」」


 そこから2人はほんとんど話さない。こんな事が1年間も続いている。その為、保健室に来た生徒たちがこの光景と、この微妙な空気に生徒が変な噂をたてるほどた。

 その噂がでかくなり、一部では恋人だという噂がある程だ。


 普通はそんな噂が学校中にひしめいていたら居心地が悪いだろう。だが、勇人はそれが心地よい。そのおかげで誰も勇人に近寄っても来ないし、保健室では松下先生は喋らないので勇人も気が楽なのだ。


 そのまま勇人は問題集を解き続けた。勇人の成績は、上の下。授業をちゃんと受けていたら上の上になっていただろう。

 だが、1人で勉強するのは限界がある。そういう時は……


「そこはこうするんだ」


 松下先生が分かる範囲で教えてくれる。

 勇人は感謝の言葉は伝えないし、そもそも人とまともな会話はしない。

 普通に教えてくれる松下先生を勇人は嫌ってもいないし、好きでもない。普通なのだ。


 それは、勇人の最高の好感度。それ以上高くなったら、勇人には恐怖でしかない。


 ーーお昼ーー


 お昼休みになり、鞄の中に入っているパンを教室に取りに行こうと立ち上がり、保健室を出ようと扉の前に行く。丁度、勇人が保健室の扉を開けようとすると、扉が開く。


「まだここに居て良かった〜」

 

 いきなり開いたドアの外には藍が右手には勇人の鞄、左手にはピンクのナフキンで包まれたお弁当箱を持っていた。

 この状況が瞬時に理解出来た勇人は、この先に藍が喋る言葉が違う事を言ってくれと心の中で自然と願う。


「ほら、勇人君の鞄。この中にお弁当入ってるでしょ? 一緒に食べたいから持ってきちゃった」


「だから! 消え——いった……!?」


 消えろ、そう言おうとしたら松下先生が勇人の頭に向かってチョップをする。

 普通に痛いチョップに勇人は戸惑う。勇人は頭を抑えながら、後ろにいる松下先生を見る。


「私の前では絶対に暴言を言わせないぞ」


 松下先生の心の篭もった強い言葉に、強い眼差しに、勇人は無言になる。

 松下先生の強い言葉に2人は固まり数秒間静寂が続く。

  勇人は藍を睨みながら無言で藍から鞄を取る。


 そのままさっきまで座っていた椅子に座る。

 いつもなら人が少ない学校裏に行き、1人で牛乳パンを食べる。だが、今日は藍と一緒に食べろと松下先生に絶対に言われると確信する。

 勇人は仕方なくここで食べることにした。

 勇人の行動を見た松下先生はまた大きいため息をつく。


「はぁ〜。誰だか知らんが勇人の隣でご飯を食べていいぞ」


「本当ですか!? ありがとうごさいます!」


 松下先生の承諾を受け、意気揚々と勇人の左隣の席に座る藍。藍は左手に持っていたお弁当箱を机に置き、ナフキン取り、蓋を取る。

 勇人は嫌な顔をするがここを我慢しなけれならない。

 勇人は渋々、自分の鞄の中から牛乳パンを出す。


 松下先生も勇人の右隣の席に座り、お弁当箱を出す。

 


「「いただきます(!)」」


 勇人以外、いただきますと言いご飯を食べ始める。

 松下先生のお弁当箱に入っているのは、卵焼き、ウインナー、玄米ご飯と美味しそうな食物、対して藍はミニハンバーグ、お好み焼き、餃子、ケッチャップライスと多種多様な食材が入っていた。


 3人がご飯を食べ始め約30秒。藍は勇人と話したく勇人を横目で見る。


 ————ああ、これは喋れないや


愛は勇人の圧倒的な話しかけるなオーラがビンビンに伝わってくるため話すのを妥協した


「せ……」


 藍は松下先生と会話をしようとしたが、松下先生の名前を知らないためどう話を切り出そうか迷っていると、それを察した松下先生は気を使って喋りだす。


「私の名前は松下花絵(まつしたはなえ)だ。私の名前を知らないということは、今日入ってきた転校生か?」


「はいそうです! 橘藍(たちばなあい)です。それにしても先生のご飯美味しそうですね」


「だろ? 独り身だと料理をしなくなるが、私は逆に料理をしたくなってしまってな」


「へぇ〜、でも私の料理だって負けてないんですからね」


「私の料理と張り合おうというのか、面白い」


 藍と松下先生が会話を繰り広げられてる時、2人は勇人の食事を凝視する。2人が、 こんなにも美味しそうな食事をしているのに、勇人の食事は牛乳パンだと。

 その視線に気づき、なんで見られてんの? と思う勇人。

 勇人のご飯に改めて気づいた2人は、目を合わせ……


「勇人君、これあげる」


「私もあげよう」


 藍は餃子を自分のお弁当の蓋の裏側に、松下先生もミニハンバーグを自分のお弁当の蓋の裏側に置き、勇人の近くに寄越した。

 要ると言っていない物が、急に寄越されて戸惑う勇人。


 強く断ろうとしても、松下先生が居るので暴言吐けない。だから、渋々勇人は素手で餃子を食べ続いてミニハンバーグを食べる。


「………………」


 2人は勇人の見ていたが何も言わない勇人に流石に料理の感想は頂けないだろうと思い、またご飯を食べ始める。

 だが、勇人は約2週間ぶりに牛乳パン以外を食べた感動から言葉が零れる。


「美味い」


小さい声だったがその声はしっかりと2人に聴こえていた。


「当たり前だろ? 料理ばかりは年の功だからな」


「初めてまともな言葉を聞けて嬉しいな」


 1人は当たり前のように、1人は普通に嬉しく。1人は美味いと言った俺は本当に馬鹿だと後悔した。

ここまでは、勇人がどのように生活しているかと書いていたのですが、ここからは本格的に勇人と藍の駆け引きが始まります。

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