第15話 〜最悪だ.......〜
ーー学校ーー
学校に着く頃には丁度、4時間目の授業が終わる頃だった。
「勇人君、絶対に逃がさないからね」
勇人と藍は腕を組みながら歩いている。
勇人は思う、このまま2人で教室に入ったらあらぬ誤解を招くのではないかと。いいや、確実に誤解される。
ただでさえ藍が勇人と一緒に居るのがおかしいのに、勇人と一緒に遅れて学校に来たことが広回れば最悪の場合、勇人に被害が出るかもしれない。
その為、勇人はここまでくる途中何度か藍を撒こうとした。
だが、その逃げ出す行為は何度も失敗し、藍は勇人が逃げないように腕を無理やり腕を組み、勇人は抜け出そうにも藍の馬鹿力によって抜け出せなくなった。
本当に最悪だ。逃げようとしなければ状況が悪化しなかったのに……と心の中で何度も思いながら藍の腕から逃れようとする勇人。
だが、逃げ出そうとしても藍は絶対に腕を離さない。
「ほら、だだこねないの!」
勇人は学校には行かない気はさらさらないのに、藍は勘違いして絶対に組んだ腕を離さない。
こういうのは普通に弁明すればいい話だ。なのに、勇人はそんな簡単な事が出来ない。
今だって勇人は何度も喋ろうとしている、なのに喋れない。絶対に抜け出せないこの状況。勇人は諦め、藍の思うままになる。
「えーとここは、この問題式を使ってだな……」
(勇人と藍さん、どうしたんだろ)
ここは教室。日佐人は今も来ない藍と勇人を心配している。
もしかしたら変な事をしているから遅れているのではないか?
それとも、藍の熱が下がらないから勇人が頑張って看病しているのか?
それとも、藍の風邪が勇人に移って勇人も風邪をひいて2人共寝込んでいるのか?
それとも、それとも、それとも……
日佐人は午前中の中で何個もの可能性を想像をする。その度に朝様子を見に行けば良かったと後悔をする。
その時————
————ガラガラガラ
教室の後ろ扉が横に動く。扉が開いたことに気づくのは生徒と向かい合っている先生だ。
「遅刻か? ほら、遅刻連絡票を取りに来い」
先生の言葉によって後ろの扉の方に遅刻者が居るんだなと教室に居る生徒全員が思う。
教室の生徒の中で1番最初に扉の方を見たのは日佐人だった。
日佐人の目には腕を組んで立っていた藍と勇人の姿が見えた。
ーーお昼休みーー
「ねぇねぇ、藍ちゃんと中川君って付き合ってるの?」
先程の授業が終わり、藍の元に駆けつける女子達。
藍の机のまわりには女子の大群が出来ていた。
「そんな訳ないよ。私と勇人君はただの友達……でもないし……う〜ん、ただ私がかまってるだけかな?」
「えーーー!? それって好きって事じゃん! えっ!? えっ!? えっ! ? 中川君の何が好きなの!?」
普通に恋バナを咲かせる女子達。それは当たり前のことだ。
この学年でもトップに食い込むほどイケメンな日佐人の好意を断り、しかも、この学年、いいやこの学校でトップに食い込むほど可愛い藍が学校でも随一の問題児と付き合うなんてそれは話題にもなる。
藍の席に女子が群がるなら、勇人の方には男子が群がるはずだ。なのに、今男子が群がっているのは……
「おい、どうするんだよ日佐人!? あの勇人に藍ちゃんを取られるなんて!?」
「そうだぜ!? あの勇人に藍ちゃんが!?」
「ああ、そうだぜ藍ちゃんが取られるなんて!?」
「おいお前ら!? 俺ですら藍ちゃんなんて呼んでないのに、なんでお前らが藍ちゃんって言ってるんだよ!?」
「ああ、まだお前は藍ちゃんって呼んでなかったな。藍ちゃんって一回でもいいから言ってみろ? 物凄く何かが解放された気分になるぞ?」
「なんだよそれ!?」
男子は日佐人の席に群がっていた。
その時、勇人は隣に女子が群がり居心地が悪くなった勇人は教室を出ようとする。
教室を出ようとするまで勿論、クラスメイト達からの視線が勇人に向けられるはずだ。
その目線に妙な感情があった。
————ああ、最悪だ……
勇人は人の心に敏感すぎて目線にどんな感情がこもっているか分かるようになっていた。
目線に篭っていた感情は、感謝、軽蔑、嫉妬、暴力がこもっていた。