第11話 〜超絶怒涛〜
「……」
藍が嬉しいと言ってから約5分が経った。勇人は何も話さない、藍もなにも話さない。部屋に聞こえるのはジュージューという日佐人が料理している音だ。
何故か藍も喋らない状況になってしまった。携帯をいじるのも忍びないし、藍がずっと勇人の目を見ていて勇人は居心地が悪い。
その時、台所の方から日佐人の声が聞こえる。
「よしっ! できた!」
ドアの向こうから聞こえた日佐人の声。その数十秒後扉が横に動き台所と繋がる。扉の前には平らなお皿をを手に持っている日佐人が立っていた。
扉が開いた事によってこの部屋に美味しそうな匂いが漂ってくる。
「藍さん! 俺の超絶怒涛の自信作のオムライスです!」
日佐人は俺の横の机にオムライスを置く。見た目は普通のオムライスだが、オムライスで絶対に誰もがやるケッチャップで文字を書くという事を日佐人は堂々とやっていた。
その書いていた文字は……
「好みってなんで好み?」
藍が言った通り、ケッチャップで書いた文字は好み。絶対に好きと書きたかったが、書いてる途中で恥ずかしくなって止めたとバレバレだ。それを見て勇人は思わず「ブフォッ!」と笑ってしまった。
勇人に笑われたことによって顔を赤くする日佐人。
「そ、それは好みって書きたかったんで」
「そうなんだ。食べてもいい?」
「も、もちろんです! 食べちゃって下さい」
藍はベットから床に下りオムライスと向き合う。
藍は日佐人がオムライスと一緒に持ってきたスプーンを持ち、オムライスを掬い口に運ぶ。
「もぐっもぐっもぐっ」
もぐっもぐっと口で音を出し考えるような仕草をする藍。
それを見た日佐人は何それ可愛いと思う反面、俺の自信作のオムライスは美味しいと言ってくれのかというハラハラ感を味わっていた。
「うんっ! 美味しい!」
藍の感想を聞いて「良かった〜」と言いながら力が抜けて床に座り込む日佐人。藍はそのままオムライスを食べ続ける。
————なんで俺ここにいるんだろう?
藍の食べる姿を見て疑問に思う。日佐人は料理を作り、藍を看病するという名目がある。なのに勇人は日佐人の信念に負けて藍の部屋に案内しただけなのに、いやそれすらおかしいことだ。
勇人は前まで、人を寄り付かせないように暴言吐いていたのに昨日の蕾ちゃんの夢を見た時から、藍が蕾ちゃんに似ていると思った時から勇人が変わった。
「ご馳走様でした」
勇人はこれからどうすればいいのかと考えていると、藍がオムライスを食べ終わった。オムライスは藍が風邪をひいているため少量しかなかったが十分にお腹がいっぱいになっただろう。
「いやー俺のご飯を食べてくれるなんて嬉しい限りですよ!」
「日佐人君のオムライス、普通に美味しくてビックリしたよー」
この2人の会話に参加する気はない勇人はこれからどうしたらいいか考え、1番の元凶はやはり藍なんじゃないかと答えに辿り着く。
なら、どうやって藍と距離を置こうかと考える。
ふと、藍の顔を見る。藍の顔は絶対にさっき玄関で見た顔より赤くなっていた。気のせいかさっきより声の覇気がもない気がした。
「あれ! 藍さんむっちゃ顔赤いじゃないですか!?」
今まで恥ずかしくて藍の顔を見てなかった日佐人が藍の顔を見て、藍の顔が赤いことを気づく。
日佐人が心配してくれたお陰で藍は張り詰めていた心が解かれ体から力が抜ける。
「藍さん!? 大丈夫ですか!?」