「通り抜けできません」
「おい、あの噂知ってるか?」
「最近噂になっていることだろ?」
「失踪している人が出ているらいよ。」
「あれ、本当なんだな。」
「でも、急に現れるらしいぞ。
しかも、失踪している人には理由があるって--」
電車に揺られて眠りに落ちながら、小耳に聞いていた。
(失踪なんて、馬鹿々しい。今どき脇道入って出れないやつは方向音痴すぎるだろ。)
30分程、電車に揺られ最寄りの駅に着いた。
時刻は19時20分、8月だったせいもあって空はまだ明るかった。
不意に脇を見たら、脇道に人が入っていく所だった。
(あんな所に脇道があっただろうか。)
「通り抜けできません。後戻りができない為、ご理解の上お通り下さい。」
そんな文言の看板が細道の脇に立てかけてあった。
おもむろに男は道に入っていったが、後にその男の姿を見た人は居なかった。