無限大少女
やっと面白いのが書けました。ぜひ読んでください。
私は死なない。というか死ねない。
それに気が付いたのは確か高二のころだった。
まだ未成年のくせしてイキって酒や煙草を嗜み、夜遅くまで騒ぎながら歩いていた。
その日もいつものように夜道をふらふらした足取りで歩いていると、突然腹部に異常な熱を感じた。
ハッとして前を見ると、おそらく会社帰りのサラリーマンらしき人が私の腹に包丁を指しているのがわかり、明確に熱の原因を理解し倒れこみながら大声を上げ悶絶した。しかしそんなことは知らぬかのようにその女が語りかけてきていた。痛みと私自身の叫び声でかき消されていたが、女がなにを言っていたのかははっきりと覚えている。
「痛いか?なあ。痛いか?痛いか?痛いか?」
あれだけ繰り返されればわすれることもできない。女はただただ痛いか?と繰り返し、そのたびに私を刺した。
刺しては抜き問いかけ、刺しては抜き問いかけを繰り返される間に最初に感じていた熱が全身に広がるのがわかった。倒れこんでいるところに血が広がっていくのをなんとなく全身で感じていた。
次に来たのは寒さだった。一気に熱を感じなくなり、全身の感覚はなくなった。私はようやく死を理解した。はずだった。
当時は知らなかったが、数回の実験の結果、あの時も私が目を覚ましたのは意識を失って二分後だとわかった。
我に返ったのか女は刺すのをやめていて、ただ茫然と"死体"を見ていた。遠くから警察のサイレンが聞こえてくるのがわかった。近隣住民が叫び声を不信に思い通報したのだろう。
それから私は立ち上がって、こっちを不思議そうな目で見る女に言った。
「痛ってえよ、絶対にぶっ殺す」
女は逃げて行った。しかしその道中で捕まったらしい。朝見たニュースでは、殺人の容疑で捕まっていて、最高の気分だ。と言っていた。女は快楽殺人犯で何人もを殺しているが、最後の死体はまだ見つかっていない。まあ、私だからな。
そんなことがあって以来、私は二つのことを始めた。
一つ目は私自身の研究だ。さっきも言った通り私は死後二分で蘇る。もちろん痛いし苦しいが傷はすぐ治る。大きな怪我をしてこなかったせいで気付かなかったが、身体に穴をあけても何かを通していなければ五時間もあれば塞がるだろう。
いろいろ研究し尽くして、私のことなら何でも知っている。
ここまでのことを記したのは、私が始めたもう一つのことへの言い訳のためだ。
私が始めたもう一つのことは、人殺しだった。
確か昨日殺した奴で三十人ほどになるだろうか。すべて同じ方法で殺し、若い女女を狙っていたので、すぐさま連続殺人犯たちの仲間入りだ。
方法はまず口を塞ぎ、包丁で刺して痛いか、痛いかと問いかける。そして動かなくなってから二分待ち、立ち去る。
あえて女と同じ方法で殺すのは、死ねない身体を持った同士がいるかもしれないという好奇心からの思い付きからだったが、実際に実行してみるとある考えが浮かんだ。
同じような罪を犯せばあの女にもう一度会うことができるのではないか、と。
それから女への復讐のために数回犯行を行ううちに、そこに快感が生まれてしまった。
その人の将来を奪い周りの人を傷つけ、全ての元凶である私は今、介護施設に勤め人のために生きている。
老後の人を助けながら若い芽を摘んでいく。ヤンチャだった若い頃にいろんな経験をしたが、一番の快感はこれだった。
でもこの数年続けた殺人も今日で終わりだ。あの女は今月、死刑が執行されるらしい。
最後の犯行現場はずっと昔に決めていた。今日は声の通る女の子にし、口を塞がずに大声を出させて通報させた。
私以外の断末魔の声を聞いたのは初めてだったが、これもまた興奮した。
もはやあの女に対する殺意、憎悪はなくなっていた。
相手が声も上げなくなり、私が絶頂に達し、あの女に復讐ではなく感謝を伝えるために警察の到着を待っていた。
目の前の死体が動き出し、
「その問いに対する答えは、痛い、です。そして私は今からあなたを殺す」と言った。
私は同士を発見した喜びと共に、まだ捕まりたくないと感じた。
あの女へ感謝を伝えることよりも、私以外にも死ねない人間がいることに対しての好奇心が勝ったのだ。
だから私は何とか逃走を図ったが、元々捕まるつもりの犯行だったため逃げることは叶わなかった。
私は警察に向かって、
「最高の気分だ」
と笑顔で伝えた。
どうでしたか?無限"die"少女。結構いいものが書けた感じがします。
一つの危機的状況下に置かれると他のことが手につくのなんなんでしょうね。赤点無いように頑張ります。遅いですけど…。
今回の話、タイトルも話もなかなか気持ちよく完成しました。こういうのを筆が乗ったっていうんですかね、久々の感覚です。
多少は怖かったでしょうか?やはり僕にホラーは書けないのでしょうかね。
ここまで読んで下さりありがとうございました。それではまた。




