第4話 魔王、家を探す
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人間達と別れ、僕は光と河原に来ていた。僕が転がっていた河原だ。日も傾き、辺りは薄暗くなっている。
「光、僕は何処で眠れば良い。家は、屋敷はどこだ?」
「え?」
「…?」
流石に人間の身体で河原に眠る訳にはいかないだろう。それは光も同じだったようだ。
とりあえず君寝る場所を探す為、2人で河原沿いに歩いていくと前方に何やら煌びやかな屋敷が見えてきた。光り輝くネオンが眩しい。城のような出で立ちは、魔王が住むにはうってつけではないだろうか。
「光、ここはどうだろうか。」
「魔王よ、ここが何なのかわかっているのか?ここは、あれだぞ。男と女が乳繰り合う場所だぞ。」
「そうか、人間はこのような場所で子を成すのか。しかし、もう少々暗い方が好いな。明かりを消してやろう。」
僕は屋敷内の明かりを全て粉砕してやった。城の中からガラスの割れる音が聞こえる。それに合わせて女性の悲鳴や男の驚いた叫び声も聞こえてきた。どうやらこの屋敷の中には複数の男女が乳繰りあっていたらしい。悪い事をした。
また少し歩いていくと、道が開け緑に囲まれた森が現れた。広さは大してない。けれど木々に囲まれるのはとても落ち着く。僕は光とその中でも特に大きな木の頂上まで飛んでみた。
「うむ、中々良い眺めだ。」
地面に着々すると、突然眩しい光を浴びせられた。
「何事だ、敵か。」
「君達、どこの学校?こんな遅くに出歩いたらダメだよー、家は?ちょっと話聞かせて貰うから署まで着いてきてくれる?」
「家は今探しているところだ。」
「探すって…、君、家出でもして来たの?親御さん心配してるよー」
「親はもう随分と昔に死んでしまった。」
「あ、え、そうなの?…ごめんね、おじさん嫌な事思い出させちゃったかな…ほら、こんな所で話すのも何だし、署までおいで?飲み物くらいは出してあげるから、ね?」
「気遣いは無用だ。彼等は僕の命を狙ってきたのでな、奴らが死んでいなければ僕が死んでいた。」
「え、ちょ、えー…君、それこの前ニュースに出てた奴?あれ、君の家だったの?その後家も燃やされちゃったんでしょ?おじさんそういう話弱いんだよ…辛かったよなぁ、」
「おじさん、お前が泣くことは無い。仕方がなかったのだ、過ぎたことはもう良いのだ。」
「うぅっ…君…いい子だなぁ…こんないい子に、全く…」
「少し話しすぎたな、おじさんとやら、お前も夜道は危険だ。気をつけるのだぞ。行こう、光。」
腕で顔を多い涙を拭っているおじさん(お巡りさんです)を残し、僕は光とその場を後にした。
結局、そのまま僕達は元の河原に戻ってきた。河原に架かる橋の袂に腰を降ろす。
「やはり、ここが1番落ち着くな。」
「でも、流石に地面に寝る訳にはいかないでしょう。」
「問題ない。」
僕は地面に手をかざし、そっと目を閉じた。僕の手から青白い光が発せられ地面全体が光り輝いた。暫くすると光がゆっくりと消えていく。僕の足元に四角いマンホールのような蓋が現れた。開けると、中には階段が続いている。
「さぁ、出来たぞ。僕達の家だ。」
僕の後ろで、「おー」と歓喜の声をあげながら光が拍手をくれた。




