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第7話 11の邪神

設定紹介篇ラストです。長くなって申し訳ありませんでした。そしてフミトくん相変わらずほったらかしです。

 過去召喚した勇者の戦闘経験をもとに生み出された邪神対策を学び、貴重な「勇者」の損耗を防ぐ。

 それがこの勇者専門学校の目的だ。

 3万人もの勇者が死んだ後でそこに気づくの遅すぎだろう!とは思ったが、3万人目にして初めてイマジナリボディに秘められた能力を発現させたという。

 それまではオリジナル体の能力のみで戦っていたらしい。

 だが、異世界の戦士とはいえ、そのままでは邪神には太刀打ちできなかった。


 ワザリー教諭の講義はそこで終わった。そして休み時間。


「フミトきゅんどうしたのかなあ…」

「パートナーがいるし、ほっとけほっとけ。そのうち帰ってくるじゃろ」

「かわいい子は多い方がよいのにねえ。お姉さん的には」

太古の魔道光炉オラトリアクタ・アルマイネって気になるね。そんなのがあの聖堂の地下にあるとは知らなかったなあ」

「いくら勇者でも王国の秘術をそう簡単には見せてくれんじゃろ。起動するのに国王を犠牲にするくらいだしな」

「そりゃそうだね」


 と言いながら、シドウもわしも、元の世界に帰還出来るときには持ち帰る気満々じゃがな。がはは!



 休み時間の後は別の教諭による11体の邪神についての講義だった。

 教諭は軽装鎧姿で、近衛騎士隊一番隊副隊長ラミレスとの自己紹介があった。昨日会った三番隊のファドとは甲冑のデザインが異なっていた。

 隊が違うからか、階級が違うからかはわからなかった。


 バイター・ミュゲルは超広域雷撃魔法を使ったが、邪神11体は物理攻撃主体のもの、あるいは爆炎や凍結、腐食性の毒を吐くものと多彩だ。


 1の邪神:アルパ・ヴィゲルド。邪神のうち最も背が高く、細身。両腕の先端部が剣状になっており、刺突主体の物理戦闘スタイル。

 時に剣部に魔法をエンチャントすることもあり、炎の剣や氷の剣などを繰り出す魔法剣士でもある。


 2の邪神:ベルタ・ザダルドス。みぞおちのあたりに大きな開口部があり、そこから極太の長射程魔法を打つ砲撃タイプ。

 火炎砲、瀑流砲、電撃砲と様々な魔法を撃ち分けるが、なかでも轟嵐砲は広範囲に甚大な被害をもたらす。

 出現から消滅までほとんど動かないのも特徴。


 3の邪神:ガーマ・アルゲリア。生物はもとより、岩や大地をも溶かす粘液を吐出する。また粘液が気化した腐食性ガスも致死性でやっかい。


 4の邪神:デウタス・ゾーマ。両腕が球状になっており、その表面に魔法をエンチャントして殴る戦闘スタイル。

 1の邪神に似ているが、スピードがやや遅くその分パワーに勝る。魔法拳闘士とでもいうべきか。


 5の邪神:イプス・デレルダ。頭が異常に長く、先端部にぽっかりと開いた口がある。この口から轟く甲高い音は、耳をふさいでも聴こえ、心を壊す。

 この邪神との戦闘の生存者は比較的多いのだが、ほとんどが何かにおびえ日常生活もままならぬ廃人と化した。


 6の邪神:ジータ・バレル。全身がとげに覆われ、そのとげの先端から一気に電撃魔法を発射する。さらにとげがそれぞれ本体から分離、空中を飛び回りながら電撃魔法を撃つ。

 最初の邪神バイター・ミュゲルの上位互換のような機動型超広域電撃魔法タイプ。


 7の邪神:イエタラ・ブラン。灼熱の炎の壁を自身の周囲に張り巡らせる。炎はそれ自体魔法攻撃であり、かつ魔法や、弓矢、槍なども防ぐ。攻防一体型。


 8の邪神:シタララ・アーキド。吸引魔法とでもいうべき謎の引力を発生させ、周囲のもの一切を吸い込み圧潰消滅させる。


 ふむ、ブラックホールのむき出しの特異点か?重力井戸?偏光重力波?

 対面してみないとよくわからんな。

 教師も謎のって言っておるし。


 9の邪神:イオ・ガリガーチャ。両腕が長銃状になっており、電撃や炎など各種の魔道砲を撃つ。2の邪神と違い、機動力が高く移動しながらの砲撃を主とする。

 着弾の効果範囲は狭いが、そのぶん速射に優れる。


 10の邪神:カパダキア・グレイド。浮遊能力を有する、確認された中では唯一の空中戦型邪神。基本空中におり、上空から魔法攻撃を仕掛けてくる。

 空中で静止することもできるなど、飛ぶというより浮かんでいる。斥力物質を取り込んでいるのかもしれない。


 11の邪神:ラムダ・バイン。攻撃自体は魔法ではなく殴る蹴るという格闘戦主体だが、瞬間移動能力を持ち突然背後に回られたりする。


 邪神ナンバーはトラヴィストリア王国軍並びに勇者軍が会敵した順だ。後半になるにつれ兵力の損耗がひどくなり、情報が少ない。

 ただ、勇者召喚と並行して巫女ネットワークが整備構築されていったので、薄い情報ながらも失われることなく集められている。


 講義を聴いているうちに、この世界では物理攻撃でないものはなんでも魔法と呼んでいるようだが、魔法じゃないものが相当混じっている気がしてきた。

 いくつかの邪神の武器は荷電粒子砲か電磁加速器的な代物じゃないか?


 わしが覚えているのは、魔法とは精神波を伝播するπ粒子が量子幾何学でいう8次元立体格子に干渉し、4次元上にその結果が射影されるというものだ。

 つまり高次空間からの事象の書き換えの結果生じるもろもろの現象のことだ。

 座標を書き換える空間転移テレポート、重力ベクトルを書き換える念動テレキネシス、情報を書き換える念話テレパシーなどの超能力サイキックも同じ原理なので、我が軍の戦術運用上は同一カテゴリーとされる。

 火や水、風や雷といった可視化されやすい現象の場合を、主として魔法マジックと呼ぶ。

 身体強化魔法や防御魔法、収納魔法など魔法マジックなのか超能力サイキックなのかあいまいな現象も多い。

 魔法と呼ぶかどうかは定義というよりは慣習に近い。


 それはともかく、事象の書き換えは対象や範囲を決めて行うのが定石セオリーだ。

 だから光線砲のように射出するというのは、魔法の遣い方としては無駄だ。

 高次空間からの書き換えとはいえ、現象となった時点で4次元時空の物理法則の影響を受ける。光線や音波なら減衰する。

 直接対象を書き換える方が威力が高い。というか、魔法の価値はそこにある。きわめてピンポイントに零距離攻撃が出来るということだ。

 もちろん発動した後は単なる物理現象だから、魔方陣(マジック・サーキット)のような4次元サブセットを使って偏光させたり収束させたりは可能だ。

 バイター・ミュゲル戦でアウロ=シュダンジュ連邦魔道師団が使ったアレだ。


 この世界の人々も、邪神が使う魔法が常識を外れている(常識外れに無駄)ということに気がついている。

 だからこそ、よこしまな神と名づけたのだろう。


 だが、きっと、邪神が使うのは魔法じゃない。

 この世界とは違う設計思想で作られた兵器…。

 一度戦ってみないと断言はできんが、わしはそう確信した。


 トラヴィストリアの王国騎士団、魔道師団も今ではほぼ壊滅しており、王城並びに首都防衛の近衛騎士団がかろうじて残っているだけだ。

 先輩勇者たち3万人も戦死した。

 フレイアは何も言わないが、その勇者の巫女たちもみんな亡くなったのだろうな。

 あ、でもネットワークが残ってるということは巫女だけは生き残っているのか?


 いずれにしてもこの世界の戦力は、もうわしらしかいないのじゃな。

 これは頑張らねばならぬな!


 今日は初日なので、午前で授業は終わりだ。

 別室のパートナーも教室に来て、昼飯だ。

 久々の座学で頭を使ったので糖分が足らん。腹が減った。

 時間割も行事予定もわしは知らなんだが、フレイアはちゃんと弁当を持ってきてくれていた。


 そしてフミトはついに帰ってこなかった。

 フミトのパートナー、アリューナの姿もなかった。

次回はランチタイムです。やっとキャラたちが動き出します!

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