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第5話 男の挨拶

 休み時間になった。


 これからいいところだったので、続けて聞いていたかったが時間割(プログラム)ならしょうがない。

 わしは6本腕のダムドに声をかけた。

 見た目に親近感がわいたからだ。


「邪神討伐か!腕が鳴るの!おまえさんは3倍鳴りそうじゃがな!がはは」

「ひっ、ヒルダちゃんそんなキャラだったの…」

「なんじゃダムド。お前、見た目のごつさとは似合わぬえらい臆病な物言いじゃな」

「だって私、コールセンターで派遣やってるOLだもん…毎日毎日クレーム処理で、もう怖いヒトなの」

「OLってなんじゃ?オリエンテーリング係か?」

「オフィスレディ…女性社員のことよ」

「なんと貴様女か!これは参った!イマジナリボディあなどれんな!」

「そうよ。毎日毎日怖い電話かかってきて、でもようやく決まった派遣口だから我慢して我慢してひたすら謝って」

「なるほどその抑圧から強さを求めた姿がそれか」

「ううっ言わないで。ようやくこの姿を受け入れられてきたところなのに」

「いや、わしはカッコいいと思うぞ。腕の本数を別にすれば元のわしによく似ておる」

「え、そう…なの?てかヒルダちゃんってもとはオジサンなの?」

「おお、これでも歴戦の兵士じゃ。百光年の暴竜と呼ばれた」

「意味わかんないけど、中身はオジサンかあ。リアルBLもいいわね。ガチ肉体系で」

「BLとはなんじゃ?」

「今は知らなくていいわ。ふふふ。この世界で楽しみができたわ!」


 なんかよくわからんがダムドのテンションが上がっていた。立ち直ったならまあよし。

 しかし元女か。考えればわしの逆もありうるのはあたりまえか。

 これはうかつだったな。


「ぼ、僕は見た目のままだよ。元の姿と変わりない」と、銀髪痩身のシドウ。

「ふむ、そのなりで戦闘は大丈夫か?」

「ここにくるまで戦ったことはなかったよ。僕は研究員だったからね」

「ほう、なんのだ?」

「君ならわかるかな?虚空域誘導理論(セオリーオブフレア)

「そうか、貴様、の軍のものだな」

「ということは君はやはりの軍のものだね」


 わしとシドウの目が光った。


「やめておこう。ここは一万年戦争の場ではないからね」

「なかなか切り替えが早いな」

「今君と争っても何の利益もない。君もそうだろう。ここの遺跡技術(エンシャントテック)に興味があるはずだ」

「互いにな」

「利害は一致したね。まずは邪神討伐、そのうえで」

「おお、ここの技術をどちらが持ち帰るか、決闘じゃな」

「いや、協力して元の世界に戻る方法を探そう」


 正論だ。

 まあその後にこいつは殺せばいい。それまでは仲間でよしとする。


「了解じゃ」

「よかったー、君みたいなカワイイ子と敵同士なんて人生の損だからねえ」


 シドウが破顔した。

 なんじゃこいつ。

 カワイイって、なんじゃ?


 そういえばフレイアも(かわいいかわいいヒルダちゃんです!)とか言ってたな。

 カワイイ?かわいい?

 何かのキーワードか。戦術的価値があるかもしれぬ。記憶しておこう。


 ふと横を見ると、虎娘のパヴァと6本腕のダムドが黒髪のよぉじょフミトと話していた。


「パヴァ、フミト、わしもおぬしらと話がしたい。よいか?」


 フミトが助けてくれと言わんばかりにわしのところにダッシュしてきた。

 背中に隠れるようにわしを押し出す。


「おお、なんじゃ?」


「ヒルダちゃん、この子、男の子ですぅ」


 うれしそうにダムドがいう。野太い声なのに語尾の上がった感じがなんか生理的に気持ち悪いな。ぞくぞくする。


「オトコの娘、大好物~。おねえさんがき・も・ち・よ・く・さ・せ・て・あ・げ・る」


 パヴァが舌なめずりしながら両手を構えて近づいてくる。

 わしの肩をつかんでいるフミトの小さい手がわなわなと震えていた。


 ううむ、これはいかんな。


「戯言が過ぎるぞ!パヴァ!」


 わしは一喝した。よぉじょの声なので甲高いのがいまいちだったが、百光年の暴竜の怒声、圧力という点では高音の分増したかもしれぬ。

 パヴァはたちまちしゅんとした。


「悪かったわよ…。でもケモ娘になった上にオトコの娘なのよ。テンションマックスなの仕方ないじゃん…」

「その獣人の姿はイマジナリによるものか?」

「そうよ、ダムドと同じOL。私は派遣じゃなくて正社員の事務方だけど。ダムドの話を聞いてると時代も少し違うみたいだけどね」


 それは薄々気が付いていた。わしらは時空を超えた異世界から召喚された。それは空間的に異なるだけでなく、時間的にも異なる世界かもしれぬ。

 そもそも元の世界においても、事象の地平線を超えた超光速国家たるわしらに「同時」というのものは存在せんのだが。

 そのあたりの話は、今は捨て置く。


「どうやら私とダムドとフミトは同じ地球という星の日本という国からここに召喚されたっぽいのよね。で、親交を深めようかと」

「すみませんやらかしました。わたしもついうれしくて」


 ダムドが合掌×3しながら首を垂れる。謝罪のポーズのようだ。


 ふむ、同郷とわかればこうなるか。わしはまだ背中に隠れているフミトにくるりと回って相対した。


「見た目で護ったが、おぬし男なのじゃな。わしなど執着のあまり肉体まで女に変わってしまったが、男なら受け止めよ」


 わしは右手を伸ばしてフミトの股間を握った。ずばっと。


「おお、まこと男ではないか!男の源はここじゃ。力をこめよ!」


 わしはフミトの金玉を握りしめた。


「握りつぶされたくなくば、おぬしの膂力、示すがよい」

「い、いたいよ、痛い!やめてくれ!」


 フミトは赤くなったり青くなったりしながらじたばたしておる。

 わしの隊では金玉握りあいながら我慢比べするのが最初の挨拶だ。


「こ、この!」


 フミトもわしの手を伸ばしてわしの股間を握った。


「ふははは!わしは今はほんとに女じゃ!なにもないぞ!」

「あっ、ご、ごめん!」

「ははは!よいわ。金玉握り返してくるとはなかなか見どころのある奴! あいてっ!!!」


 ダムドにヘッドチョップくらった。


「なにやってるのよヒルダちゃん、フミトきゅん涙目になってるじゃないの。それにそんなかわいいのにキン…なんていっちゃだめ!」

「いたたた…。軍隊式スキンシップなのに。あ」


 手を放した途端、フミトがダッシュして教室を出て行った。

 逃げの一手か。まあよし。がはは!


 授業が再開された。引き続きワザイア教諭の邪神概論だ。

 フミトが戻ってこない。

 授業ふけるとは、案外大胆なやつかも。

前作をお読みの方はご存じのとおりそもそも水島フミトは…。

逃げ出したフミトくんは置き去りにして、次回はバイター・ミュゲル討伐から勇者召喚に至るお話です。


第9話でヒルダのキャラデザイラスト公開します。しばしお待ち下さい。

早く見たいという奇特な方は、私のpixivに別バージョンを公開していますのでご高覧ください。

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