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第23話 イマジナリの限界

第22話と同時公開です。よいこの皆さんは第22話をスキップしてここから読んでくださいね。


すみませんイマジナリ限界稼働時間を何回か書き直していたらおかしくなってましたので、3月25日修正しました。ストーリーそのものには影響がないことですが、サブタイトルになってることを間違えまして申し訳ありません。

 たーちゃんを抱いて教室に入ると、いつもの4人だった。今日もフミトは休みだ。


「おはようヒルダ。今日もかわいいね」

「おう、シドウ。今日もかわいいじゃろ」

「あら、ヒルダちゃん、なんか変ったわね」

「じゃろ、ダムド。わしもいろいろ知ったのじゃ。お前たちが言っとったフェチとかも理解したぞ。ああ、性交の方法もわかったぞ」

「ぶーーーーーっ!」

「噴くなシドウ。女にも慣れてきたぞ。どうじゃすごいじゃろ」

「すごいというか普通になっただけよそれ…」

「うっ、パヴァは容赦ないの…」

「ところで、ヒルダ、邪神の件だが、この世界由来ではないことはほぼ確定のようだ」

「やはりそうか」

「あら、その話うちのサザロイも言ってたわ。知らなかったの?異世界から来たって」


 サザロイはダムドのパートナーだ。

 なんだ周知の事実か。


「巫女ネットワークのデータベースに情報が載ってるわよ。見てないの」


 見てない。フレイア奴…。

 ヒルダちゃーんとかヒルダ様―とか言ってすぐハグするくせに、肝心なことは教えてくれんの。


 あ、もしかして性交に関する情報などもデータベースにあったのかもしれんな。なんか遠回りをした気分じゃ。


 どうもこの世界は技術レベルがおかしくて、出来ること、出来ないことがわかりにくい。

 鉄鋼の精錬技術は未熟なのに、電子機器があったり。飛行機どころか自動車もないのに、ワープゲートがあったり。電話もないのにネットワークがあったり。

 そもそもこの体、イマジナリの仕組みはさっぱりわからん。

 このたーちゃん、式の仕組みもわからんが、タタラは長年の研究と言っておったから、技術としては独立したものじゃろうな…。


 星からの神々の遺産だとしても、その製造技術は今もある。魔法工学も進んでいる。にもかかわらず、ある部分だけが突出して高度化していて、普段の生活に供される技術は歴史時代のレベルだ。何かがおかしい。


 タタラに聞いてみるか。星からの神々がいた頃から現代までの歴史の生き証人だからな。


 午前の座学が終わり、わしとフレイアは学校の馬車で王城に向かった。校長とギルフォン教諭が同乗する。

 今日は追走する馬車は無しか。昨日のあれは警備、というより監視じゃろうな。HLDOL(ヒルドル)で暴れでもしたら城などすぐに陥落じゃ。

 してみると、一応の信頼を得た、ということじゃな。


 城の転移門前では、アゼット技官長率いる計測チームがスタンバイしていた。エルゼル調査団長もいるが、騎士の数は昨日に比べるとずいぶん少ない。

 ガルガーチャ宰相もいないな。

 ファド・ストルゲンの姿はあった。手を振っておる。軽い奴じゃの。


「今日は炊飯部隊がいないので、ここで昼飯を食ってからアジャルガ高地に向かう」


 エルゼル調査団長がわしとフレイアに風呂敷に包んだ弁当を渡してくれた。


「遠慮なくもらうぞ。フレイア、うちの弁当は?」

「今朝はルーイがお詫びを優先したので、簡単なサンドウィッチにしましたのです」

「じゃあそれはまたおやつにする。今はこの弁当を喰うのじゃ」

「そういたしますのです。いただきますです」


 エルゼルがくれたのは、おにぎりとシャケの塩焼き弁当だった。ピクルスもついておる。エルゼルによれば、シバヅケというらしい。


「これはニホンから召喚した勇者の残したレシピで作ったものだ。このハシなるもので食べるとよいぞ。使い方はこうだ」


 エルゼルがハシの使い方を実演してみせてくれた。


 ああ、パヴァとダムドとフミトの元の世界だったな。

 ニホンからの被召喚者の率が多いのは、何か理由があるのじゃろうか?

 ふむ、なるほどこれは冷めても旨い弁当じゃな。シバヅケをシャケにトッピングするとまた味に変化があって楽しめるのう。


「ニホンはイセカイテンイという魔法が一般化していて、呼びやすいそうだ。それ以上詳しいことは神官にでも聞いてくれ。俺は、戦力になればどこの者でも構わん」


 異世界転移…そんな魔法が一般化していたら相当混乱した世界になると思うが。パヴァとダムドに聞いてみるか。

 そういえばあいつら異世界で異形の姿になったというのに、初めから馴染んでいたな。元の世界で慣れていたということか?


「よっし全団食事終わったな、高地に行くぞ!」


 昨日とえらい違うの。昨日のラッパや命令口調は宰相や貴族の手前、格式ばっていただけなのか。


 アジャルガ高地に着くや否や、タタラが空から降りてきた。


「おー、タタラ。今日も何か作るのか?」

「いえ、そんな予定はありませんが、何か作れと言われればお作り致しますヒルダ様」

「そうか、ヒルダ式は貴様の話し相手をちゃんとしておるのか?」

「ヒルダ様式は偶像(アイドル)でございますゆえ、もっぱら眺めておるだけでございます。あの後またヒルダ様が直々に憑依されないかとワクワクしておりましたが、どうもお忙しかったようでございますね」


 たーちゃんベッドに置いていたな。こいつマシュとの昨夜の件を知っておるな。


「そんなに頻繁に覗く気はないぞ。わしはこれでも貴様を信用しておるのじゃ」

「有り難きお言葉!タタラ感動いたしました!」


 泣きながら土下座した。ちょろい奴じゃの。これで昨夜の件をタタラが口外することはなかろう。


「貴様ともっと話したいことがあるが、今は授業なのでな。また後でな」

「はい、ヒルダ様、タタラはおとなしくお待ちしております」


 こいつ数千年生きてる知性ある龍インテリジェンス・ドラゴンなのに、こんな扱いで納得しとるのが不思議じゃのう。これもわしのかわいいの力なのじゃろうか。


「で、今日は何をすればよいのじゃ?」


 わしは団長であるエルゼルに聞いた。


HLDOL(ヒルドル)を2体以上出せるか?」


 ああ、なるほど。わしを複数は作れないが、わしがHLDOL(ヒルドル)を複数生み出せれば、結果は一緒か。

 それは試したことがなかったな。なぜなら、


「やってみてもいいが、複数作っても動かせるのはわしだけじゃぞ」

「なぜか?」

「わしがイメージできるのは、わし用の突撃機甲(アサルトアーマー)だけじゃ。そしてそれはわしの生体認証でしか起動しない。HLDOL(ヒルドル)を何体作っても、わしが一人なら、動かせるのはそのうちの一体だけじゃ」

「ああ、HLDOL(ヒルドル)部隊を造ろうとしているわけではない。昨日の測定で仮に我々が搭乗したとしたら、HLDOL(ヒルドル)の機動性に体が耐えられないことが判っている。これを扱えるのは君だけだ、ヒルダ。それは我々にとって安心でもある。盗まれたりコピーを作られても、動かせないなら脅威ではないからな」

「じゃあなぜ2体以上出せるか聞くのじゃ?」

「負荷テストだ。昨日のテストではほとんど負荷がかからなかっただろ?それでは実戦の際の限界稼働時間が判定できない」

「ああ、なるほど。タタラすら瞬殺した以上、戦闘で限界を判定できるとしたら、邪神そのものと戦う時じゃろうな。

 残る負荷としてはイマジナリ自体の限界を調べるしかないということじゃな」

「理解が早くて助かる。要は、何体までHLDOL(ヒルドル)を生み出したらお前さんのイマジナリが枯れるのかってことよ」



 千体のHLDOL(ヒルドル)が高地に並んでいた。

 出現させてそろそろ1時間経つが、わしの体に変調はない。

 千体で止めたのは、台数と出現時間の掛け算が負荷になるからだ。イマジナリの限界が来た時に、HLDOL(ヒルドル)が暴走でもしたら大変じゃからな。

 安全マージンじゃな。


「壮観だな。これが全部動けば、邪神など何の脅威でもないな」

「作るのはまだまだいけそうじゃが、動かせるのは一体だけじゃ。すまんの」

「ヒルダがいるだけで心強い。今日宰相がいないのは各国と連絡を取っているためだ。おそらく来週には4大国家にヒルダの力を示すことになると思う」

「それはどういう事なのじゃ?」

「人類の希望、邪神を倒す力が遂にエクスアーカディアに現れたことを知らしめるのだ」


 ははん、裏を返せば勇者召喚も期待されていないということじゃな。三万人もの勇者を損耗させているからな。

 トラヴィストリアにとっても、わしの存在が重要ということか。


「しかし、お前のイマジナリは底なしだな。もう千体作れるか?」

「やってみよう」


 二千体のHLDOL(ヒルドル)が並んだ。

 1時間待つ。特に変調はないが、おなかがすいてきた。

 馬車でフレイアと一緒にサンドウィッチを頬張る。


 もう千体追加した。高地に突撃機甲(アサルトアーマー)の大部隊がすらりと展開しているように見えるな。

 動けるのはうち1機だけじゃがな。なんかもったいないのう。


 30分もしないうちに猛烈に腹が減ってきた。サンドウィッチ喰ったばかりなのに。

 これがイマジナリの枯渇か。

 わしの場合、空腹に現れるのか。

 逆に言えば、飯さえたらふく喰えればいつまでもイマジナリが使えるのか?

 あっ、でも睡魔にも襲われたな。空腹と眠気か。


 エルゼル調査団長とアゼット技官長にその旨報告する。

 最後の千体はノーカウントとして、千体2時間、もう千体1時間。合計HLDOL(ヒルドル)3千体時間。

 わしのイマジナリの実用限界は、HLDOL(ヒルドル)1体なら3千時間の静的稼動(アイドリング)ということになる。

 アゼット技官長が昨日測定した結果によると、戦闘稼働はアイドリング時のおよそ百倍の負荷と推定され、この結果、わしの戦闘稼働限界はおよそ連続30時間となった。


 ふむ、なるほど。多いような少ないような時間じゃな。実際には30時間も連続戦闘していたら、判断力が鈍るし、腹は減るわ眠いわでわし自身が持たんじゃろうな。

 特にこのよぉじょの体では。


 たーちゃんがプルプルした。


(タタラでございます。秘話モードでお話ししたいことが)


 抱いているたーちゃんからわしだけにタタラの声が聞こえてきた。テレパシーのようなものか。


(おお、なんじゃ)

(さすがヒルダ様、秘話モードばっちりでございますな)

(お世辞はよい。なんじゃ?)

(あのHLDOL(ヒルドル)軍団ですが、ヒルダ式を使えば動かせると思います)

(なに!?…いや、そういえばそうか。等身大のヒルダ式を造れば可能か…)

(等身大では強化外骨格(パワードスケルトン)が別に要りますので、大人のヒルダ様をかたどった式を造ればよいのです)

(なるほど)

(いかがいたしましょうか)

(その話、ここだけにしておけ。何体かは作っておいてくれ。いざというときのためにな)

(大きな式は作るのにそれなりの時間をいただきます。出来るだけ早くお作り致します)

(よろしく頼む。くれぐれも、大人のヒルダ式を勝手に動かすな。わしが命じる時まで伏せておくのじゃ)

(心得ております)


 何があるかわからんからの。

 式を使えるのはタタラだけかどうかわからぬし。

 万一、大人ヒルダ式をハッキングされでもしたら大変なことになる。

 セキュリティ対策を考えておかねばならぬな。


 それに、タタラが裏切らないとは限らんしな。


 あらゆる可能性を考えて行動する。

 そうでなければ、戦場で生き残れないからな。

次回はタタラが星からの神々について語ります。3月29日21時更新予定です。

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