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第21話 閑話:マシュ・ゼッテンその1

区切りの関係で短めです。すみません。

 今日の晩御飯はチキンと豆のサラダ、あさりとキャベツのスープ、野菜たっぷりのトマトソースグラタン、羊肉の煮込み、オレンジソースたっぷりのヨーグルトじゃった。

 ルーイがメニューを決める主調理人(シェフ)を担当したらしい。フレイアとルーイが主調理人(シェフ)副調理人(スー・シェフ)を日替わりで交替し、イターとマシュが下ごしらえや洗い物などのサポート係(コミ)となっているそうだ。


「ルーイ、今日もどれも旨かった。それに見た目も華やかで良かったのじゃ」


 マシュにナプキンで口を拭かれながら、料理を褒めた。


「ありがとうございます」


 ルーイが照れる。

 マシュはまたナプキンを丁寧に畳んでポケットに入れておるな。


「では風呂を頼む」


 例によって今着ているドレスは自分では脱げないので、メイドたちに手伝ってもらう。

 そういえば、タタラが着せ替え人形とか言っておったな。ということはあいつこんな複雑な構造の衣装を作れるということじゃな。

 あのごつい手で器用なもんじゃ。


 風呂上がりの髪梳きは、今夜はマシュの当番じゃった。

 鏡には、床に正座しているマシュの胸から上が椅子に腰かけているわし越しに映っている。


「マシュはずいぶん背が高いな」

「ふぇっ、申し訳ありません」

「別に謝ることではないぞ。背が高いのは有利じゃ。高いところや遠いところに手が届く。支配領域が大きい」


 わしなどHLDOL(ヒルドル)に乗るためにわざわざ強化外骨格(パワードスケルトン)を装着せねばならん。


「でも、なんだか目立ちますし、(はり)や看板に頭をぶつけたり、それに、かわいい服もあんまりなくて、男物を仕立て直したりして…」

「そうか?わしは早くマシュぐらい大きくなりたいと思うぞ」


 主に戦闘面においてな。このなりではカードを投げるのが精一杯じゃからな。


「そ、そんな、ヒルダ様はヒルダ様だからよいのです!私みたいになるなんて、そんな、…あれ?」


 言葉に詰まったと思ったらマシュの顔が赤らんできた。なんじゃろうか?


「…美しく成長されたヒルダ様…確かに素敵かも…無垢なヒルダ様から成熟したヒルダ様へというのは…それもあり…」

「マシュはきれいじゃと思うぞ」


 美しい、きれい、かわいい。似てはいるが、異なる言葉。その意味するところが理解できはじめている。


「ふえっ!」

「マシュはかわいいより、きれいとか美しいとかいう形容詞が適切じゃと思う。かわいい服を選ぶより、きれいな服を選んだ方がマシュらしいと思うぞ」

「ヒルダ様!」


 マシュに後ろから抱きしめられた。頭の上に重いものが乗る。マシュの胸じゃな。


「あっ、申し訳ありません!つい」

「いや、いい。マシュ、お前は背が高いことを悪いことだと思っているようじゃが、そんなことない。お前がお前自身をしばっておるのじゃ。わしは、マシュがきれいだと思うし、大事に思う」

「ヒルダ様!」


 マシュは丸くなって全身でわしを抱くようにした。フレイアに匹敵するでかい胸に密着する格好になった。フレイアより柔らかい分密着度が高くて息がしにくい。

 マシュの顔がすぐそばにあった。

 そのほっぺたに、口づけをした。お休みのキスじゃ。

 マシュの頭から湯気が出て、鼻血を噴いた。顔が真っ赤じゃ。


「あっ、申し訳ありません!」


 マシュが鼻を押さえながら飛びのくように離れる。


「よい。血は慣れておる。キスというものは初めてしてみたが、なかなか良いな。マシュのほっぺたは柔らかくて気持ちがよい」

「ヒルダ様の初キス…」


 マシュの鼻血が太くなった。どくどく流れておる。


「大丈夫か、マシュ?」

「はい」


 といいながら、ポケットから出したナプキンで鼻血を拭いた。あれはさっき折りたたんでたやつか。


「そのナプキン、何かに使うのではなかったのか?」

「いえ、これはもう…必要ありませんので」


 はて、どういう意味じゃろう?


 寝る用意ができると、フレイア達が寝室にやってきた。


「お休みのキスなのです!」


 ルーイがわしの額に、イターが右ほほに、マシュがあらためてと言いつつ左ほほにキスをした。

 フレイアがわしの口にキスをした。


「ああっ!フレイア様!それはずるい!」

「やられたずら!」

「なんということでしょう!ヒルダ様のくちびるが!」

「キスとは本来こうなのです!ヒルダ様の唇は甘いのです!ヒルダ様も嫌がっていないのです!大丈夫です!」


 確かに嫌がってはおらんが、なんかちょっと電気が走ったような気がしたな。ピリって。

 唇のキスは特別なのだな。覚えておこう。


「あ、明日はヒルダ様の唇を…」

「そうずら。あしたは口へチューずら」

「(でもヒルダ様の初キスは、わたくしが頂きましたわ)」


 聞こえておるぞマシュ。わしの索敵スキルは高いのじゃ。ささやき声もキャッチするのじゃ。


 4人は下がっていった。

 あっ、ルーイに種付けのこと聞き忘れた。また今度でいいか。別にルーイじゃなくてもよいしな。


 深夜。また目が覚めた。

 ほんとこの体は便所が近いのう。


 ダムドいうところのギシアン展開な物音もせず、わしは寝室に戻った。

 扉の前で、気配を感じた。

 寝室に誰かおる。


 バンシィカーズは部屋の中じゃ。徒手空拳ではさすがに不利じゃな。誰か呼ぶか。

 しばらく扉の前で気配を伺うが、どうも殺気は感じられない。フレイアか、メイドの誰かかもしれんな。

 そっと開けてみた。


 月明かりの部屋のベットの上でもぞもぞしているのは、あの身長から見てマシュだな。


「おい」


 声を掛けた。マシュがびくっとするも、帰ってくるのはわかっていたのか、ゆっくりと起き上がる。質素なパジャマ姿だ。


「おかえりなさいませ…ヒルダ様…」


 目つきがちょっとあやしい。


「マシュ、どうしたのじゃ。ここは貴様の部屋ではないぞ。寝ぼけておるのか?」

「ヒルダ様、ルーイ姉様はレオナールの部屋に行かれたままですし、イターは寝たらぴくともせず話もできません。フレイア様はどちらに行かれるのか夜はいらっしゃらないですし、ヒルダ様とのキス、抱きしめて、あれから、マシュはもう心が爆発しそうで、胸が苦しくて苦しくて我慢ができません…」


 フレイアが夜いないというのは初めて聞いた話じゃな。

 ルーイは今夜もレオナールの部屋なのか。ギシアンが聞こえなかったのは種付けはしていないのか、もう終わって寝ておるのか。


「マシュはもうおかしくなっているのかもしれません。ヒルダ様の部屋に忍び込んで、でもいらっしゃらなくて、どうしたらいいのかわからなくなって」

「忍び込んで何をするつもりじゃったのじゃ?」

「ヒルダ様の寝顔を見たら、戻るつもりでした。天使のヒルダ様のお姿を拝見したら、心が落ち着くと思って」

「わしとキスしたり、抱きしめたりしたらマシュはおかしくなったのじゃろう?わしを見たら余計おかしくなるのではないか?」

「いえ、ヒルダ様は天使です。お姿を見れば癒されます」

「そんなものか。なら、一緒に寝るか」

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ」


 ちょっと前までのわしならそんなことは提案しなかったじゃろう。女が怖かったからな。

 わしの変化は、かなり進んでいるようだ。


「いやか?」

「とんでもございません。寝ましょう!今すぐ、今すぐ、寝ましょう!ぜひ寝ましょう!」


 マシュと一緒に寝具にもぐりこんだ。

 そっと抱きかかえられる。マシュの大きな胸が柔らかくて気持ちいい。


「ヒルダ様…」

「ん、どうした?」

「マシュは幸せです…」

「わしも気持ちがいいぞ」

「このお屋敷でよかった。初めてのお勤めで、こんなに素敵なご主人様にお会いできるなんて」

「マシュはどうしてメイドになったんじゃ?」

「私の家は、代々教会の事務をしていたのですが、その教会がなくなってしまい、子どもも独立しないと食べていけなくなったんです」

「なんでなくなったんじゃ?」

「レグランドにおりましたので…」

「そうか、家族は無事だったのか?」

「はい、両親と、兄二人がおります。別々の場所で暮らしていますが、元気でやっています」

「兄弟がおるのか。達者なのは何よりじゃ」


 ふと、思いついて聞いてみることにした。


「マシュ、性交ってどうするのじゃ?」

「ふぇえええぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええぇぇぇぇ!」

公私色々あって次回は3月24日に公開します。なお、第22話は(R-15の範囲で)エッチ―な展開になる予定ですが、飛ばしても問題がないお話になりますので、よいこの皆さんは第23話をお待ちください。

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