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第18話 タタラ

 タタラの火炎を超電磁バリアで防ぐ。

 テントの本部は大丈夫なのかとモニターを見ると、魔法障壁を展開していた。

 近衛だから魔法に対抗できる騎士もいて当然か。


「ほう、俺の炎の直撃をしのぐとはたいしたものだな、人間。ではこれはどうだ」


 タタラの一角(ユニコーン)から電子ビームが発射された。これもバリアで防ぐ。

 超電磁の渦が一瞬崩れる。1.3兆電子ボルトだと。陽電子(ポジトロン)か!


「これも耐えるか。次はこれだ」


 HLDOL(ヒルドル)が浮いた。斥力場か。()に落ちる。

 スラスターで姿勢を制御しようとした途端、()に猛烈な力で加速する。超重力場!

 轟音と共にHLDOL(ヒルドル)の形に地面に大穴があいた。

 むちゃくちゃじゃな。模擬バイターの重力井戸よりピンポイントかつ猛烈な加速度()じゃ。

 超光速(タキオン)フィールドを展開していてよかった。HLDOL(ヒルドル)が無事でも中のわしが潰れて死んでるところじゃった。

 穴から飛び出し、高機動形態(ハイムーブモード)に空中で変形した。


「おお、しぶといな。おもしろいぞ、人間!」


 タタラもばさっと一度羽ばたき、追いかけてくる。速い。斥力場と翼の併用で空中機動しているようだ。

 空中戦(ドグファイト)が始まった。

 タタラはランダムな軌道を取りつつ陽電子ビームや火炎を吐いて攻撃してくる。

 わしは両腕のスラスターを縦横に動かし攻撃を避けつつタタラの背後に回ろうとする。

 だが、タタラはトリッキーな動きで自在にその位置を変える。重力操作により慣性をキャンセルしているのだ。

 瞬間移動よりはましじゃが、目で追ってると幻惑される。


 突如超重力場に掴まる。超光速(シープラス)スラスターで離脱。今度は斥力場。リバースをかけこれも離脱。

 すると、予想外の位置からの陽電子ビーム。慣性(イナーシャル)中和(キャンセル)しているタタラの予測位置はシステムアシストでも誤差が大きい。かわしたと思ったら下から蹴り上げられた。超電磁バリアで耐える。かなりのパワーだ。

 模擬バイターより強いかもしれん。

 と、上から尻尾で叩かれた。墜落しかけるが、腕のスラスターで落下を支え距離を取って上昇する。

 そこへ陽電子ビーム。超電磁バリアの一部が対消滅する。

 単一結晶装甲モノクリスタルアーマーに衝撃が伝わるが、バリアを貫通はしなかった。


 火球が四方八方から飛んできた。火炎放射だけじゃなくてこんなこともできるのか。

 表面温度6百万度。内部はプラズマ化しているな。超電磁バリアと引き合うからちょいと面倒だ。

 火球をかいくぐって飛ぶ。

 こちらの軌道が制限される中、陽電子ビームが襲う。

 超電磁バリアを渦を巻くように回転させて展開、吸い寄せられてくる火球をスピンで撥ね飛ばしつつ、対消滅のエネルギーも()らす。

 ギザギザの軌道を描いてタタラが接近する。太い鞭のように尻尾をしならせて襲ってくるが、超光速スラスターで間一髪逃れる。


「どうした。逃げ回るだけでは勝てんぞ、人間」


 タタラがあざけるように言う。

 そのとおりじゃ。

 そろそろいいか。


双極励起誘導銃(イレーサービーム)!」


 両腕から分子間力を消滅させるビームを発射した。

 タタラは光子の対消滅場アンチフォトンフィールドに包まれ、一瞬でバラバラの肉片になった。


「なんというか、生物相手に過剰攻撃じゃな…」


 巡航形態(クルーズモード)に変形、着地した。

 血と肉片がぼたぼたと降ってくる。空中に残っていた火球も消えていった。


 攻撃は多彩だが、防御はないも同然じゃったな。


 と、肉片がプルプルと震えて這いだした。みるみる集まり合体していく。

 肉の塊が盛り上がり、手足が太く長い巨大な人型にまとまった。

 顔は猿、一角(ユニコーン)もそのまま付いている。


「ちょっと驚いたぜ。スーパータタラ化するのは久々だ。さあ2回戦だ!」


 巨大猿人化した(スーパー)タタラがファイティングポーズをとる。なんか嬉しそうだ。


「貴様、ほんとに生物か?」


 わしは半ばあきれながら、HLDOL(ヒルドル)格闘形態(グラップモード)に変形させた。

 こっちも人型になって立ち上がるが、スーパータタラの方が2回りくらいでかい。邪神並みじゃな。


「そっちもまだいろいろ持ってそうだが、こっちにもまだあるぜぇ」


 スーパータタラが両こぶしに光を集めた。陽電子のフィールド?

 そのままこぶしをガチンと撃ち合わせた。


 陽電子衝突加速器(ポジトロンコライダー)か!


 10兆電子ボルトの高エネルギービームが放たれた。

 超電磁バリアを4重に展開するが、コライダーのエネルギーの方が高かった。

 貫通され、単一結晶装甲モノクリスタルアーマーの一部が消失した。

 消えた質量分のエネルギーが解放される。

 この膨大なエネルギーはさすがに魔法障壁程度では防げない、だろう。

 超電磁バリアを偏向し対消滅エネルギーを上空へ逸らした。

 空へとプラズマの柱が立ち、続いて猛烈な嵐が巻き起こった。

 大気がプラズマ化して、低圧になったせいだ。


「まだまだいくぜ~~!」


 嵐の中、スーパータタラは陽電子でこぶしを覆ったまま、重力で加速して殴ってきた。

 腕でブロックすると今度は蹴ってきた。脚にもご丁寧に陽電子コーティングしている。こっちは斥力加速か。


 超光速で避ける。空振り、と思いきや、慣性キャンセルで加速して追ってきながらコライダービームを飛ばしてくる。

 これではギャラリーが危ない。


陽電子(ポジトロン)ビームはやめるんじゃ。周りに迷惑じゃ」

「命乞いか?なら止めてみせろよ!人間!うははは!」


 こいつ戦闘狂(アホ)じゃな…

 超電磁バリアを逆位相で放物線状に展開、ビームを弾く。背後の湖に巨大な水柱が上がるが、気にしてられない。

 舟などがいないことを祈る。


 ん?水の爆発?陽電子?

 そうか、大気中で陽電子など安定して存在できない。プラス電荷…おそらく水素イオンのバリアの内側で陽電子を加速させているのだ。

 粒子衝突の時だけバリアに穴をあけているのだろう。

 陽電子ビームも水素イオンでコーティングした二層構造だろう。大気で減衰しないのはそんなカラクリじゃな。

 なら。


 わしはスーパータタラに抱き着き、スラスターを全開にした。


「人間、何の真似だ!」

「ハグじゃ。よぉじょのハグは格別らしいぞ」


 フレイア基準だがな。

 そのまま、湖に突っ込む。スーパータタラの手足に展開しているフィールドが爆発した。

 予想どおり。

 水素イオン爆発、水を作るあれじゃ。幼年課程の実験でやった奴じゃ。

 さらに露出した陽電子が対消滅し大爆発を起こす。巨大なゴンゾワール湖の全域が沸騰した。わしらの回りは気化しておる。

 水産物、全滅じゃろうなあ。すまぬ。

 吹き飛んだ水が雷雲となってもはやあたり一帯は暴風雨じゃ。


 スーパータタラの手足が無くなっていた。

 胴体を抱いたまま、高地に戻る。


「ふん、人間、これで勝ったと思うなよ。スーパータタラ2!」


 掛け声とともにスーパータタラの手足が一瞬で復元し、さらに金色の髪が伸びた。黄金に輝くオーラに包まれる。シュンシュンと音がしている。


「人間にこの姿を見せるのは初めてだぜ…。これで終わりだ!ぐへっ!」


 いい加減面倒くさくなって光速衝撃拳スターバーストマグナムをお見舞いした。

 スーパータタラ2の顔が無くなった。


光速衝撃拳連打スターバーストマグナム・マスファイア!」


 残ったボディに超高速のこぶしを叩き込む。

 あっという間にスーパータタラ2はミンチの山になった。

 

 ミンチの山がうごめいて、また形を成す。


「油断した…スーパータタラ3!」


 一撃で砕いた。


「ぐぬぬ…アルティメットタタラ!」


 双極励起誘導銃(イレーサービーム)で消し飛ばした。


「アルティメットタタラ2!」


 同じく消し飛ばした。


「ウルトラスーパーデラックスタタラ!」


 同じく消し飛ばした。


「ウルトラスーパーデラックスタタラマーク2!」


 同じく消し飛ばした。


「人間よ、よくここまで来た。褒美に神の領域を見せてやろう。震えるがよい、ゴッドタタラ!」


 一撃で砕いた。


 最初の知性ある龍インテリジェンス・ドラゴンの姿に戻ったタタラが仰向けになって雨に打たれながら遠い目をしていた。

 こいつ不死というのは本当かもしれん。


「人間、お前強すぎだろう…」

「自信満々だったのに、泣き言か」

「いや、むしろ楽しいな。こんな気分になったのは数千年ぶりだ…星からの神々と称する連中が来た時以来だ」

「貴様、えらく長生きじゃな」

「ふん、それなりに強くなったつもりだったが、まだまだだったな。稽古をつけてやるつもりが、完敗だ」

HLDOLヒルドル相手に貴様もよくやったと思うぞ。単一結晶装甲モノクリスタルアーマーが破壊されるとは思わなんだ」

「人間、お前の姿を見せてくれ。その乗り物は遮蔽が濃くてお前が認識できない」

「確認する。降参か」

「ああ、降参だ」

「ならばよし」


 HLDOLヒルドル強化外骨格(パワードスケルトン)を消してタタラの前に立った。

 暴風雨でたちまち髪や制服が濡れる。


「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」


 タタラが飛び起きて土下座した。

 その瞬間、暴風雨が止んだ。


「不肖タタラ、貴殿の配下となる所存です。どうかご無礼お許しを!」

「貴様いきなり何を言っているのじゃ?」

「誠に申し訳ございません。心底感服いたしました!なんでも、なんでもこのタタラ()にご命令ください!炊事洗濯ごみ捨てなんでも!むしろご褒美!」

「うちメイド四人もいるから要らないのじゃ」

「ぐはっ!」


 タタラが鼻血を出しながら倒れた。どどーんという衝撃。


「貴様迷惑だからそのまま動くな。わしは本部に行ってくる」


 タタラはひっくり返ったままぴくともしなくなった。

 律儀な奴。



「…どうしたらいいんじゃ」


 わしはガルガーチャ宰相に聞いてみた。


「タタラをノーリスクで使役できるのなら、我が王国軍にとってメリットしかない。配下にすると言えばよかろう」

「この高地から出られんのじゃろう。たいした使い道無さそうじゃが」

「タタラは半ば神の領域にある存在だ。知識もある。利用価値は大きい。配下にすれば香を焚く必要もない」


 神の領域(ゴッドタタラ)とやらは一撃だったので興味はないが、星からの神々に会ったと言っていたな。確かに、その知識は欲しいかもしれん。


「わかった」


 わしは鼻血を出したまま固まっているタタラのところに戻った。


「タタラよ、わしの配下になるがよい」


 タタラは飛び起きてまた土下座した。


「ありがたき幸せ!御身のために不肖タタラ誠心誠意お仕えいたしますっ」


 大歓声が沸いた。

 騎士たちが拍手している。

 作業員たちはその様子をビデオで撮っていた。魔法障壁の外にいたので気になっていたが、全員無事なようだ。プロだ。

アジャルガ高地でのお話は、もうしばらく続きます。次回は明日3月11日21時更新予定です。

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