第15話 高速反省会:パヴァ、ダムド、シドウ
前回のフリどおり、サブキャラ三人の反省会は1話にまとめました。三人分なのに短めです。
結論からいうと、パヴァ、ダムド、シドウはミニバイターを倒すに至らなかった。
パヴァは、イマジナリの虎を生み出した。
黄金に光る虎だ。
今のところ2匹まで出せるらしいが、2匹目を出すと本体が元の人間に戻るそうだ。
獣人化の恩恵である攻撃、防御、敏捷性を失うのは危険なので、虎1匹と虎女のコンビネーションでミニバイターと対戦した。
黄金の虎はある種の力場で出来ているようで、攻撃をすり抜けたりパヴァを包み込んで護ったりするほか、毒や麻痺の追加ダメージを与えるなど、なかなかの戦力だった。
パヴァ自身も鋭い爪と牙を用い、スピード主体のヒットアンドアウェイ戦法で善戦した。
だが、ミニバイターはそもそも固いうえに電磁バリアを持つ。
2体のコンビネーションでヒット数は稼ぐものの、なかなかダメージが通らない。
終盤、疲労からミニバイターの攻撃に掴まり、虎がパヴァをかばってビームの直撃を受け爆散した。
怒ったパヴァが巨大な球電を生み出し、ミニバイターにぶつけた。
加速された電子がバリアを貫通し、ミニバイターの一部を破壊した。
その後しばし球電対広域電撃のぶつかり合いになったが、30分経ってミニバイターが撤退した。
最後は加速電子対加速電子の戦いじゃったな。
プラズマに勝てるのはプラズマだけ!
というところか。
けど惜しかったな。あと1、2匹本体とは別に虎が出せれば勝てるかもしれん。
精進あるのみじゃな。
「ところで、なんで虎なんじゃ?」
「虎娘が出てくるお気に入りのマンガがあるの。『うる虎なやつら』。テキーラちゃんがダーリン一筋でかわいいっちゃ!」
全くわからん。マンガってなんじゃ?
パヴァとダムドがテキーラちゃんとやらの話で盛り上がりかけたが、すぐラミレス教諭に怒られた。
まったく。真面目にやらんか。
ダムドは予想どおりというか見た目どおりというか、6本の腕を使った戦法だが、意外にも近接物理攻撃タイプではなかった。
両手×3対それぞれに小さな板状の機器を持ち、その機器を操作して戦う。スマホというらしい。
本来は通信機器とのことだが、アプリをインストールすることで機能を拡張できる。
個人情報端末の一種じゃな。
3台のスマホを駆使し、フラッシュによる幻惑や音楽による催眠、アバターという身代わりを召喚したりして30分逃げ切った。
スマホは補助効果中心のようだから、1台減らして腕一対は攻撃に回したらどうかと提案したが、
「殴りあいなんてしたことないわよ!スマホは得意なの!」
とキれられた。
実は、バイブ振動やブログ炎上などの攻撃も行っていたらしいが、全然効かんかったそうだ。
ブログ炎上って、なんじゃ?
シドウは一人で踊っていた。
最初、こいつ何をしとるんじゃ、気がおかしくなったのか?と思った。
くるくる回ったり、手足をばたつかせたり、ジャンプしたり。
ミニバイターの撃った電撃が、シドウの回りで断ち切られ、離れた場所に出現するのを見て合点がいった。
あの動きで空間を斬っているのだ。
次元斬とシドウは説明した。
高次誘導関数により、4次元時空を繋ぎかえる。
ダンスのようなアクションは、そのパラメータを変化させるためのものだそうだ。
「なんで身体を使わないといけないのかは突っ込まないでくれ。僕にもよくわからないんだよ」
わしの技名叫びより恥ずかしいんじゃないか。
さっき自嘲気味だったのはこういうことか。
まあ、案外ダンスは様になっているが。
わしだってテーブルマナー同様、高官の謁見に備えて社交ダンスも訓練したのじゃ。実際に披露する機会はなかったがの。
しかし攻撃を繰り出すミニバイターとその前で踊り続けるシドウの図は、なんというか、シュールじゃった。
「これは、疲れるじゃろうなあ…」
「精神的にまいるよ…」
「ちなみに、何次誘導関数なんじゃ?」
「今は6次元だよ」
「それで防戦一方なのじゃな」
「ああ、8次元以上、できれば10次元を超える誘導関数を展開できれば攻撃に転じられると思う。エネルギー密度が跳ね上がるからね」
「出来そうなのか?」
「原理は分かっている。振付を工夫すれば出来そうなんだけどね」
「そういえば、貴様は虚空域誘導理論の研究員じゃったな」
「そっちの方は、何次誘導まで成功したかは言わないよ」
「わかっておる」
パヴァ、ダムド、ラミレス教諭が諦めたような目でわしらを見ていた。
結局シドウも防戦一方のまま30分経ってミニバイターが消え終了となった。
その後もダンスを工夫していたので、帰還が遅れたそうだ。
「ヒルダは別にして、攻撃型がパヴァ、防御型がシドウ、補助型がダムドか。バランスはいいようだな」
「ただ、圧倒的にレベルが足りません。特にヒルダの戦いを見た後では、戦力の底上げの必要性を痛感します」
「もちろんだ、シドウ。そのためのこの学校だ。イマジナリの力は成長する。それは君たちの先輩勇者が皆そうだった。今日の実戦でそれぞれの実技プログラムも調整する。明日からも訓練に励め」
「はいっ!」
わしらは声を揃えた。
おお、いいぞこの一体感。
兵士とはかくあるべし。
「ひとついいか?ラミレス教諭」
「かまわぬ、ヒルダ」
「ミズシマ・フミトはどうしたのじゃ。奴のデパートガール・コレクションもかなり強力な能力と聞いておるが」
「フミトは病気だ。パートナーが付いているから近々復帰できるだろう」
「そうか。病気か。なら仕方ないな」
「ほかになければ今日はこれまでとする」
放課後になった。
レオナールに市場を馬車で流してもらった。
揺られながらしばらく繁華街を見ていたが、昨日のデパートガールたちは見当たらなかった。
途中でフレイアがうずうずしだしたので、許可した。
それからたっぷり2時間ほど買い物につきあわされた。もちろん着せ替えもさせられた。
回復薬や死の身代わり人形なども買い込んでいた。今日みたいに危なくなったら使うように言われた。
フレイアなりに気を使ってくれているんじゃろう。
昨夜立ち聞きしたメイドたちの会話を思い出した。
わしの命は、もうすでにわしだけのものではないのだろう。
簡単にはくたばらん。
あらためて、わしはそう決意した。
フラグ立てまくっているヒルダですが、次回更新は3月9日21時の予定です。あいだが開いてすみません(´・ω・`)
早く書き上げられたら、9日を待たずに更新します。




