第12話 ドラゴニック・ウォーリア
前回、次回予告を忘れてました。実技授業その1です。前回もそうでしたが、ちょっとグロ風味な描写があります。まあオレTUEEEEE展開ではないので、主人公側が追いつめられるのはしかたがないのです。
出張から帰ってほぼライブで書いてたら、いろいろ齟齬がありました。今回は誤字脱字程度じゃない直しを入れました。すみません。
ランチタイムは例によって即席立食パーティーとなった。
午後があるのでさすがにアルコールは控えたが。
「実技は個人授業らしいが、貴様らはどう戦うんじゃ?」
「ふうん、はじまりの洞窟で一度発現しただけだからね。まだ自分の能力とはいえない。こなれてない。チーム授業までには戦い方を整理するよ」
「わ、わたしはこの6本腕で、その、バーっとっていうか…」
「体の虎成分が固まって戦うのよ」
うむ、全然わからん。
シドウの言うとおり、いずれチームになるからまあよいわ。
「そういうヒルダはどうやって戦うんだい?」
「わしは慣れた戦法じゃ」
といいながらオリジナルとはずいぶん違うがな。だから機密漏洩には当たらん…じゃろう。
午後。
学校の裏庭に転移門があった。
転移先は大聖堂だった。
まあ何となくその予感はしていたが。
各自、パートナーとともに大聖堂を出る。
行先ははじまりの洞窟じゃ。
はじまりの洞窟が勇者ごとに別々になってるのははじめて知ったがな。
「はじまりの洞窟そのものがイマジナリで出来ているのです。太古の魔道光炉の勇者召喚術式のサブセットです」
「なるほどな。チュートリアル付き召喚というわけか」
「はじまりの洞窟だからといって油断してはだめなのです。実技授業モードに切り替わっているのです。初級試練の時とは違いますです」
「ふん、まあそんなもんじゃと思ってはいた。最初からあの能力でいく」
「はいなのです」
わしとフレイアは洞窟に入った。色は紫。いきなり危険度マックスじゃな。
洞窟の奥に巨大な人型が現れた。
バイター・ミュゲルだった。
「実物の5分の1モデルです。来ますです!」
「おう!」
ミニバイターは、自身は動かず紫の雲を洞窟いっぱいに噴き出し始めた。
例の広域電撃魔法雲だ。
「ドラゴニック・ウォーリア!」
わしは技名を唱えた。
別に唱える必要はないのじゃが、かっこいいじゃろ。
よぉじょの体を包むように光が集まり、実態を成した。
強化外骨格。
大きく力強い四肢、背面ユニットと一体となった頭部を覆うヘルメット。
その大きさとシルエットは、かつてのわしの姿を模していた。
機械で出来た「百光年の暴竜」をよぉじょが着込んでいるような格好だ。
「ドラゴニック・シールド!」
左手ユニットを展開した。電磁バリアだ。
と同時にミニバイターの電撃が洞窟いっぱいに放たれた。轟音がとどろき、床や壁が崩れる。
「ファランクス!」
わしはバリアで電撃を偏向させながら、右手ユニットの内蔵ガトリングガンで崩落してくる岩塊を弾き飛ばした。
フレイアは自身で360度バリアフィールドを展開していた。
まあ、奴の心配など端からしていないが。
わしは背部ユニットのスラスターを吹かし、ミニバイターに迫った。
「ドラゴニック・ソード!」
ガトリングガンをビームソードに切り替え、勢いに乗ったままミニバイターを薙ぐように斬りかかる。
もちろん技名は唱える必要はないが、ある種の気合いだ。
ミニバイターは電撃をわき腹に集め、ビームソードをはじいた。こいつも電磁バリアを張れるのか。
「硬いな」
ミニバイターの背後に回ったわしはUターンしつつビームソードを実体剣に切り替えた。剣は直ちに振動し始める。
高周波ブレードだ。
「スーパーソニック・ブレード!」
背中側から斬りかかると、さすがにミニバイターも動いた。
右手が槍状に変化し、振動剣を受け止める。
槍状部分に電磁バリアが利いていた。魔法剣だ。ビデオで見たアルパの技!
「ミニバイターはオリジナルだけじゃなくて各邪神の技もインプットされてますです。言い忘れてましたのです!」
「早く言ってくれ!」
わざとだ。初級試験の時もこいつこんな感じじゃった。まあ、臨機応変は当たり前じゃがな!
ミニバイターを蹴り上げ、距離をとる。
脚部ユニットにもスラスターがあり、滑るように移動する。
ミニバイターは両手を魔法剣に変え、風と雷の二面攻撃で攻めてきた。
嵐に翻弄され、強化外骨格が安定しないところに雷が轟く。
着地した方がいいな。
「ホーミングミサイル!」
接地と同時に肩部から自律誘導ミサイルを全弾射出する。
嵐の中を姿勢制御しつつ左右12発ずつのミサイルがミニバイターに集中する。
全弾命中!
と思いきや、ミニバイターの背中のとげが飛んでホーミングミサイルを迎撃していた。
アンチミサイル・ミサイルか!いろいろと持ってるな…。
あ、やばい、向こうのほうが数が多い。
逆にミニバイターのとげが何本もこっちにまっすぐ飛んでくる。嵐の影響を受けないのか!
しかも火属性がエンチャントされている。
「リアクティブシールド!トリプル!」
ビームバリアを丸い実体のプレートに切り替える。
複合装甲の盾だ。内部に電磁フィールドを持ち、着弾と同時に開放され弾き飛ばす。
そのプレートを三重に展開する。
展開と同時にとげが着弾し、プレートが1枚、2枚と破壊される。
が、そこまでだ。
とげはプレートの爆発反応により吹き飛んだ。
「もうとげはなかろう!ホーミングミサイル!」
イマジナリボディさまさまだ。しばらくすれば弾は補充される。残弾を気にしなくていいというのは画期的だ。
武器の切り替えが瞬時なのも、イマジナリの恩恵だ。
ふたたび24発のミサイルを発射する。今度は全弾着弾し…あれ?
ミニバイターはわしの背後にワープしていた。しまった空間転移使えるんだった!
背後ユニットが魔法剣で貫かれる。
スラスター全開と同時に後ろに電磁バリアを展開するが、遅かった。
貫通されはしなかったが、わしの背中まで雷魔法が届いた。
「ぐはっ!」
背部ユニットごと電撃で焼かれ、脳が沸騰するような激痛に襲われた。スラスターのコントロールを失い壁に激突してそのまま倒れる。背部スラスターが再起動しない。システムエラーか。
体勢を立て直し起き上がったところにビームが襲った。
ミニバイターが剣を砲に変えてビームを射出したのだ。
だれじゃ減衰するとか言ってたのは。エライ威力じゃないか。
これは荷電粒子砲だ。周囲の放射線量が跳ね上がった。
電磁バリアが貫通された。左手の防御システムがユニットごと吹き飛ぶ。ふたたび壁に激突し崩れるように倒れこむ。
そこに追い撃ちのビーム。脚のスラスターを吹かしてとっさに逃げるが、右足ユニットに直撃した。
バランスを失い、爆風に煽られ、逆さまになって地面に激突する。
ヘルメットがなければ即死だった…。
本当に容赦ないのう。
なんか温かい液体が下半身から垂れてくる。血か、小便か。どっちもか。
さっき喰った昼飯も嘔吐していた。逆さになってるから顔がゲロまみれじゃ。臭い。全身汚物だらけじゃ。
まあ、脱糞してないだけましか。
モニターがアラートサインで埋め尽くされる。隻腕隻脚だからな。
警報を切る。邪魔じゃ。
わしは右手に振動剣を構え、左脚のスラスターをオーバーブーストして弾丸のように飛翔した。
狙いはミニバイターの赤い単眼。
アルパと同じなら、そこをつぶせば魔法は使えないはずじゃ。
荷電粒子ビームを再度撃ってくるが、光速より遅い。機動中ならシステムアシストで避けられる。
砲を撃ってる間は棒立ちだしな。魔法剣の方がスピードがあったわ。
狙いたがわず、突き出した振動剣は勢いに乗りミニバイターの単眼に切っ先をぶつけた。
だが、魔法障壁が阻んだ。
オーバーブーストでも貫けないのか。ホント硬いな。
蹴とばして、距離をとる。片脚だからスラスターを吹かしてホバリングする。
ミニバイターは両手を魔法剣に変えた。
スラスター1基じゃ奴の動きに劣るか。シールドもないしなあ。
だが、まだじゃ。
これからじゃ。
「バンシィカーズ!ウォール!」
わしは空いた左手でカードを飛ばし、土、水、風、火の順でミニバイターとの間に壁を重ねた。
魔法干渉と防御力を考えた構成じゃ。
空間転移があるからほぼ気休めじゃがな。
だが少し時間を稼げる。
わしのイマジナリはまだ限界ではない。
呼吸を整え、イメージを集中させる。
「ハンドレッドライトイヤー・ドラゴン・オーバーロード!」
わしは叫んだ。
一瞬で強化外骨格が復元し、さらにその周囲に大きな光が集まる。
ドラゴニック・ウォーリアごとコクピットに収納した巨体が出現する。
強化外骨格の強化外骨格だ。
まさしくその姿は、突撃機甲と呼ばれたかつてのわしの愛機そのものじゃった。
次回はミニバイターとの決着です。ってこの引きだと王道展開すぎるかも。まあ、ロボットプロレスは燃えてなんぼですからね!
といいところなんですが、ストックがなくなってしまったので次回は3月1日に公開します。しばし書き溜めます。すみません。




