表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/49

第1話 百光年の暴竜

ハッピーバレンタイン!

いきなりですが、今作はTSトランスセクシュアル展開です。しかも結構残念TSです。すみません。

前作と主人公が変更になっていますが、しばらくすると(第4話くらい?)前作主人公の水島フミトくんも登場しますのでお楽しみに。で、前作主人公が登場すると作品世界を乗っ取られるというガ○ダムシードディスティニー状態になるのは必至かと。

まあ、そんな流れではありますが、デパコレ2学園篇、開幕です!

 全く、この女の体というモノはへんてこだ。

 なまっちろくてあちこちぽよぽよしてて体力も瞬発力もない。声は甲高いし、なによりちびだ。

 屈強で知られる突撃機甲隊XXXV小隊のなかにあって「百光年の暴竜(HLD)」の異名で呼ばれたわしの、太い筋肉と黒光りする肌に覆われた鋼の肉体は失われてしまった。


 どうしてこうなった。


 いや、わかっている。

 この世界に召喚されたときにフレイアが教えてくれた。

 フレイア。

 この世界でのわしのパートナーの女だ。

 神の御遣い、巫女と自称していたが、わしには神なるものがよくわからぬ。

 倒すべき邪神とやらも含め。


 わしのいた元の世界に神などおらなんだ。

 わしが生まれる一万年も前からずっと戦いが続いていた。

 理由などわしにはわからないし、わしが生きている間に戦争が終わることもたぶんない。

 作戦命令に従い出撃し、敵を殲滅し、生きのびてまた明日戦う。その繰り返しだ。

 前線で誰かが死ねばストックから兵士が補充され、何も変わらぬまま戦いが続いていく。


 そうだ。

 わしらは基地のバイオメディック設備で生産され在庫としてストックされているクローン兵だ。

 隊のナンバーXXXVとはメディックに保管されているオリジナルDNAのコードネーム。突撃機甲に最適化した遺伝子だ。

 わしらの誇りだ。

 だからわしらの隊は全員似た容姿・身体能力を持つ「兄弟」だ。

 もちろんセンターから投入された時期により年齢は異なるし、顔かたちも微妙な違いがある。

 わずかな違いではあるが、その違いがわしにとっては(たぶんほかの「兄弟」たちにとっても)意味のある、重要なことだった。

 わしがわしであることの証明だと思っていた。

 だから他の「兄弟」よりも少しでも強く、少しでも多く敵を倒すことに血道を上げた。

 わずかでも時間があれば体を鍛え、前線では先頭を切って敵陣に突入した。

 やがて「百光年の暴竜」という二つ名で呼ばれるまでになり、わしは満足していた。

 戦って、戦って、戦いの中で死ぬことに何の疑いも持たなかった。


 しかしある日、この世に「女」なるモノが実在していることを知った。


 それは本当に偶然だった。

 戦線が伸びきって、敵の一機が非戦闘区域に逃げ込んだ。

 市街地に入る直前に撃破したが、その折に一瞬市民放送を受信してしまったのだ。

 市民放送は軍禁制だ。兵士にとって市民生活を知ることは純粋な戦闘意欲をそぎ弱体化につながるとされ厳に戒められていた。

 追撃中に敵の交信を傍受するために全チャンネルを開放していたための失態だった。


 女が映っていた。


 あまりの衝撃に基地に帰投しても心拍数が130まで上がったままだった。

 ドクターに12時間の休息を取るように促された。

 幸いにしてわしが市民放送を受信したことは交戦中のやむを得ないアクシデントとみなされ大事にはならなかった。

 時間も0.5秒程度だったので、戦闘意欲に影響を与えるほどではないと判断された。

 ただし、その事実を一部でも口外してはならないと厳命された。


 一瞬見た女というもの。


 戦闘ログと同時に自動録画された映像データは即座に消去された。

 しかしその姿は記憶に焼き付いていた。

 もちろん、教育課程で生物の雌雄の別や、人間にも男と女があることは知識として知っていた。

 だがそれは遺伝子の違いにすぎず、ナンバーXXXV以外の、ましてや男ですらないという遺伝子型など意識すらしなかった。


 女の姿を見るまでは。


 わしら男とは全く異なる容姿なのに、同じ人間だとすぐにわかった。

 それが「女」であることも。

 その日から、男だけの世界に生きていることが不自然に思えてしまった。

 わしらは男だけの世界に隔離されていることを知ってしまった。


 わしは、女が見たくて見たくてたまらなくなった。

 見たい。会いたい。触れてみたい。

 誰にも話すことが出来ないこともあり、その想いはわしの心の中でどんどん濃縮されていった。

 しかしわしら兵士は一生涯基地と戦地以外の場所は不可侵であり、それを破れば処罰される。

 感情と記憶の再調整。

 調整が出来ないような重度障害の場合は廃棄処分もありえる。

 ゆえにわしはこの想いを悟られぬようにするのが精いっぱいだった。


 女に会うなど、永遠にかなわぬ夢と思っていた。

 この世界、エクスアーカディアからの召喚メッセージを受け取るまでは。



 …まさかわし自身が女になるとは思わなかったがな。

 しかも、かなり幼い。

 映像で見た女はもっと年齢が上であったはずだが。


 イマジナリボディ。

 想いの力で形成された体。

 フレイアがそう説明してくれた。

 この世界、エクスアーカディアでは強い想いが実体を生む。

 実体を生み出すことが出来る強いイマジネーションを持った者が「勇者」となる。

 そしてわしもその勇者の一人だと。


 この世界を蹂躙中の11体の邪神。

 それらを倒すためにわしらが呼ばれたと。

 この娘の体は、わしの強い想像力で生み出されたものだと。


 という「これまでのあらすじ」はわかったものの、


 …はあ、どうしてこうなった。



※※※※※


「もともとのわしは、あいかわらずの地の突撃機甲隊で戦っておるのじゃな」

「ええ、そのはずです!」

「ならば…よし」


 百光年の暴竜がいなくなったわけではない。

 今のわしは、元のわしから分離したイマジナリボディ。


「わたくしのこの体もXXXVー88501207022PP3R様のイメージで作られたものです!」


 フレイアはあの時見たビデオの女の姿に似ている。

 初めてフレイアに会ったときは心臓が爆発するかと思った。その次は自分が女になってることに気づいて悶絶しかけたが。

 どうせなら、わしがその姿でよかったんではないのか?

 まあ自分で自分を眺めるのは面倒だから、これでいいのかもしれぬ。

 それにしても娘…というかフレイアいわく「よぉじょ」「ろり」というモノの体はへんてこだ…。


 ちなみに言語コミュニケーションは問題ない。

 イマジナリボディの自動調整機能でわしの母国語もエクスアーカディア語もシームレスに理解できる。

 さすがに母国語に該当がない用語はちょっとわかりにくいがの。


「ところでXXXVー88501207022PP3R様って、いいお名前ですけれどそのお姿には似合わないのです」

「いや、それは個体識別階級番号で名前なるものではないのじゃが…」

「ではこうしましょう。今から貴女はヒルダ(HLD)ちゃんです!」

「ヒルダ?」

「はい、かわいいかわいいヒルダちゃんです!」


 そしてわしはフレイアに抱きつかれ卒倒しかけた。

 女怖い。

 そしてものすごく柔らかい。


次回ははじまりの洞窟クリア後、王都到着までのお話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ