第48話 明日、天気にな~~~あれ。
お久しぶりです。
「・・・雨ね」
「雨だな」
俺はソファーに座りながら読書をしていると、窓際に頬をつきながら外を眺めているリアが憂鬱そうにつぶやく。
零れた声に反応するように俺も返事を返した。
「・・・雨は、嫌いよ。外には出れないし、それにジメジメするし、髪も纏りづらいし」
手で自分の髪をとかしながら、不満の声を上げる。
視線を向けると、いつもよりも若干膨らんでいるようにも見えるから、気にしているのだろ。
「でも、雨が降らないとリアが口にしている食事も困ることになるよ」
「・・・そうだけど、憂鬱なのは変わらないわ」
まあ、彼女が不満をため込むのも無理はない。
ここ数日降り続けているために、早く止んでほしいと思うのは俺としても同じ思いである。
「じゃあ、早く晴れるように御まじないでもしようか?」
「・・・教会がどうにかできるの?」
「教会は関係ないよ」
俺はリアに返事をしながら、アイテムボックスから必要なものを取り出していく。
幾つかの布とインクにペンをテーブルに出す。
「・・・それで、何を作るの?」
「雨を掃うための、人形だね」
「???」
彼女の不思議そうな視線を、受けつつ作り始める。
といっても作りは簡単だ。
丸めた布をさらに正方形の布で包んで、紐で頭と胴体の間を結んでからペンで目と口を書けば、てるてる坊主の出来上がりである。
「・・・・・・と、はい完成」
「・・・なにこれ?・・・吊るされた人形?」
窓際に吊るしたてるてる坊主を見た、リアの口からそんな言葉が飛び出す。
「まあ、確かに紐で吊るしているけど、もう少し言い方を考えてね」
「・・・この人形にはどんな効果があるの?」
「このてるてる坊主は、雨が晴れるようにってお願いを込めて軒先や窓際に吊るしておくもの」
「・・・ふぅ~~~ん」
不思議そうに首をかしげる彼女。
でも、仕方ないことだろう。この世界にてるてる坊主があるかどうかもわからないし。
そもそも、てるてる坊主の原型は中国の掃晴娘と言われている。
大まかな話としては、ある村が連日の長雨により深刻な水害に陥っていた。村に住んでいた少女は雨の神である龍神に長雨を止めてくれるように祈ると、天上から龍神が自らの妃になるのならこの雨を晴らそうと告げると、少女はこれを承諾し、雨は止み空は晴れ渡った。
村の人間は少女を探したが、彼女の姿は何処にもなかったそうだ。
その話をもとに作られたのが、今のてるてる坊主である。
掃晴娘が箒を手に雨雲を掃ったという話もあり、てるてる坊主に箒を持たせることもあるという。
「それで、天気になったら最後に川に流すんだ」
「・・・面白い話ね。私も作ってみようかしら」
「いいよ。材料はいっぱいあるし」
俺も一緒に作り始めると、意外なことが分かった。
「・・・んっ?・・・??」
無言で作っているリアの手で完成したてるてる坊主は・・・
「・・・どっかにぶつけたの?もしくは馬車にひかれたの?」
「・・・言わないで」
簡単な工作のはずなのに、彼女の完成させたてるてる坊主の頭はぼっこぼこにへこんでいた。
書かれた目や口もどことなくけが人を思わせる。頭がへこんでいるから余計にそう見えてしまう。
「ま、まあ、効果は変わらないよ。うん」
「・・・吊りましょう」
リアの作ったてるてる坊主を窓際に吊るすと、今度は事故にあった後に自殺した人に見える。
硬く口をつむり、我慢しようとこらえていると。
「失礼します。お茶をお持ちしました。・・・旦那様、何ですか?あの不気味な人形は?」
「ぶっ・・・!?」
イゼルナの一言で、我慢が出来ずに噴き出した。
落ち込むリアにどう声をかけていいか悩んでいると。
「・・・あっ、晴れてきた」
「嘘っ!?」
あれほど雨を降らせていた分厚い雨雲の間から太陽の光が差し込んできた。
連日に渡って雨を降らせていた雨雲は、ケネスの屋敷を起点に散り散りとなって空に青空が広がってくる。
「・・・この人形って、すごいのね」
「・・・・・・そ、う・・・だね。(本来はこんなに効果なんてないはずなんだけど)」
窓に太陽の光が差し込んで来る。
それは、望んでいたことであるために問題はないのだが・・・
「・・・ケネス、明日にでもこの人形たちを川に流そうね」
「ああ、そうだね」
先ほどまでとは、うって変わった彼女の笑みはこれ以上ないほど輝いていた。
後に彼女が、お城でもてるてる坊主を吊るすようになると、話を聞いた人が真似はじめ、やがて王国中に広まっていくことになるとは思いもよらなかったのである。
余談だが、この後いくつものてるてる坊主を制作したリアだったが、重傷姿のてるてる坊主しかできなかったようだ。
※※※
しばらくたった後。
「では、巡回に行ってきます」
「おう、気をつけろよ。・・・うん?お前、口金に何をつけているんだ?」
「えっ?・・・ああこれですか?てるてる坊主ですよ。俺の巡回中に雨が無いようにって」
「なるほどな。でも、それ「では!行ってきます」・・・おい」
声をかけるが気が付かずに、詰所から出ていく。
呼びかけようかと迷っていたが、その時。
「・・・・・・ぎゃあ~~~」
「大丈夫か?!」
仲間の叫び声に、槍を手に詰所を出ようとしたがその前に同僚がびしょ濡れで飛び込んできた。
「ひどい目にあった。詰所を出たとたんに土砂降りにあったんですけど、なんでだ?」
「・・・ああ、もしも原因があるなら、お前のてるてる坊主の可能性があるな」
「え?・・・でも、これは天気になるようにっていうやつですよね?」
「ああ、正しい向きならそうだな。だが、お前にてるてる坊主は逆さまだ」
「・・・え?でもそれが・・・」
二人の視線は、彼のやり先につけられた逆さまのてるてる坊主に向けられる。
「俺も聞いた話だから、確証はなかったがな。頭を上に吊るすと天気になるようにというおまじないになるが、逆さまにすると逆の意味になって雨乞いになるそうだ」
「・・・マジですか?!」
「ああ」
「みんながやっているから、簡単に考えてやっていましたがこんなに効果があるなんて」
「俺も驚いている」
二人がまじまじとてるてる坊主を見ている頃。
「っと。逆になってしまったわね」
明日ケネスとデートを楽しみにしているリアが、天気になるようにぶら下げたが紐の位置が悪かったのか逆さまになってしまった。
ゲリラ豪雨が降ったのは、リアのてるてる坊主が逆に吊るされた時であり、兵士がびしょ濡れになった原因なのかもしれない。
初めて作った時も長雨を止めたほどの効果を見せたことからも、これがそうかと考えることもできた。
だが、鑑定スキルを持つケネスなどが調べたらしいが、誰も口を閉ざしたという。
陛下にも報告したが、その時に使い方を間違わなければ問題ないと目元を抑えながら大きくため息を吐いたそうだ。
ほぼ一年ぶりの投稿になり申し訳ない。
これからもどうかよろしくお願いします。
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