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第45話討伐完了と美味しいご褒美

お互いが振り抜いた武器が、交差する。


 「ブモッ!?」


  受け止められると踏んでいたギガントバッファローは握りしめていた柄の部分から上が無くなっていると驚愕していた。

ぶつかった武器が火花を散らすこともなく、削れるわけでもなく。

 使えなくなった武器を捨てて、振り返ったギガントバッファローが相手を探そうとした時、左腕に違和感を覚えた。

 左腕を上げて見ると、あるはずの左腕がない。

綺麗に切られた断面からは自らの鮮血が滴り落ちて、沼地を赤く染めている。

 

 「・・・・・・・・・・・・ッ!?!?」


 再び振り返ると、ギガントバッファローの視線に映ったのは己の血で濡れた武御雷を持つ冒険者の姿だった。

 ケネスは武御雷を構えなおすと、一足飛びに近付くと一気に飛び上がる。


 「これで、最後だッ!!」


 ギガントバッファローの首に向けて得物を一閃する。

然したる抵抗もなく、ギガントバッファローの首は胴体を離れていく。

 下へと落ちる前に、ケネスはアイテムボックスに仕舞うと続いて胴体もしまう。


 「討伐、完了」


 静かに得物である武御雷に付いた血を風魔法で吹き飛ばしてから、鞘に仕舞う。

リア達の所に戻ろうと沼地を移動している。


 「???リア達、何してるんだ?」


 特に脅威になりそうな魔物の反応がないが、幾つかの魔法が放たれていることに気が付く。

速度を上げて、彼女たちの元に行くと。

 積み上げられた魔物の死体と、やり切った表情を見せるリアとイゼルナの二人に、呆れた表情のミス・パープルの姿があった。


 「お待たせ。ギガントバッファローの討伐、終わったよ」

 「・・・お帰り、早かったのね」

 「お疲れ様です。主」

 「・・・・・・帰って来たのね。・・・貴方、二人にどんな訓練をしてたの?」

 「何かあったのか?」

 「どうにもこうにも、近づいてきた魔物を見つけ次第魔法で殲滅していったのよ。・・・・・・あり得ないほど数の魔法をバンバン使ってね。それに、魔力が少なくなると躊躇うことなく近接戦闘をしたりと普通の魔法使いの戦い方じゃあないわね」

 「・・・・・・ああ、そうなんだ」

 「ケネスちゃんも大概だと思ったけど、姫様も大概よね」

 「取り敢えず、伯爵を安心させる為に街に戻りませんか?」

 「そうね。ギガントバッファローの討伐は終わったのだから、ここに留まる理由はないわね」

 「ええ。・・・・・・リア!イゼルナ!街に戻るよ!」

 「・・・分かったわ。でも、アイテム袋に入れるから少し待ってて」

 

 リアが討伐した魔物をアイテム袋に収納していく。

ロックアインにオーク、フットダイル等の魔物が周囲に散らばっている。

 中には複数のアイスアローやグレイブが体の至る所に刺さった状態の魔物も見て取れた。

 暫くすると、回収が終わったのかリア達が満足そうな表情をしながら戻ってくる。


 「・・・お待たせ」

 「おかえり。怪我は・・・なさそうだね」

 「・・・うん。あの訓練のおかげで考えた通りに体が動いたわ。これからももっと頑張る」

 「それは・・・良いことだね。うん、でもあんまり心配はさせないで」

 「・・・ケネスは、私が戦う事、心配?」

 「それは・・・もちろん」

 「・・・嬉しい。でも、貴方にただ護られる存在にはなりたくない。だから、もっと強くなる!だから、何処までもずっと一緒だからね」

 「・・・・・・・・・・・・ありがとう。リア」


 お互いに見つめ合う二人、ここに誰もいなければもっと先へと進んでいたであろうが。


 「ねえ。いい雰囲気になるのは良いのだけど。あなた達には少~~~し、早いのじゃない?」

 「あッ!」

 「・・・!!」


 二人は距離をとると、顔を別の方向に向ける。

近くで見なくてもわかるほどにお互いの顔は赤く染まっていた。

 恥ずかしさのあまり、顔を両手で隠して座り込んでいるリアは戦っていた時の凛々しい表情とはうって変わって、年相応の表情となっている。


 「はい、あなた達。街へと戻るわよ。帰ってお風呂に入りたいしねえ」

 「そうですね。そうしましょう。リア、イゼルナ帰るよ」


 ケネス達は帰り支度を手早く済ませると、領都へと帰路に着いた。

ギガントバッファローの討伐したためか、道中一切の襲撃を受けずに帰ることが出来たために出発よりも早く領都へと帰って来たのである。


 「只今戻りました」


 冒険者ギルドに入ると、中にいた人間が一斉にケネス達を見た。

そんな視線を気にすることもなく、受付に向かう。


 「すみません。ギガントバッファロー討伐の件で報告が」

 「はい、ケネスさんですね。・・・・・・やっぱり、討伐は無理でしたか?」

 「いいえ、討伐成功したので、その報告に」

 「・・・ま、まさか!本当に討伐できたのですか?」


 受付嬢の反応にその場にいた人たちも動揺する。

あんな小さな子供がAランクであることもそうだが、ギガントバッファローを討伐できたといことも信じがたかった。

 彼らの視線には、驚きと畏怖、戸惑いとそんなはずないというモノばかりである。


 「ギガントバッファローを持って来ているので、買い取りをお願いします」

 「・・・え!?持って来ているのですか?」

 「ええ、何処に出せばいいですか?」

 「そ、それでは、奥にある訓練場にお願いします。・・・こちらです」

 

 受付嬢は隣にいた同僚にギルマスを呼んでくるように言づけるとケネス達を案内していく。

それに続くように、中にいた冒険者たちがついていった。


 訓練場で練習をしていた冒険者などを端に寄ってもらうとアイテムぼボックスからギガントバッファローを取り出す。


 「「・・・ひッ!!」」


 小さな振動と共に出現した()()を見た冒険者たちは思わず息を呑んだ。

目の前に横たわる凶悪な表情を保ったままのギガントバッファローを見て、ある者は武器に手をかけ、ある者は地面へとへたり込み、またある者は恐怖し体を震わせる。

 討伐したての生々しい血の匂いが、仲間の物でないはずなのにメンバーをしきりに探す者もいた。


 「・・・・・・・・・・・・こ、これほどの魔物を倒せたのですか?」

 「ええ。それで、これの買取は出来ますか?」

 「ほお、ギガントバッファローと聞いて来てみれば、何じゃこの状況は?」

 

 向かいの扉から出てきた老人が、そう呟く。

 枯れ枝のような体ではなく、幾度の死線をくぐり抜けてきたであろう鍛え抜かれた肉体と、老いても衰えることの無い鋭い眼光が印象的だった。


 「・・・ぎ、ギルマス!?」

 「ふむ。・・・お主が、これを倒したのか?」

 「ええ、伯爵の指名依頼を受けまして。魔石は伯爵に肉は私がもらう約束です」

 「成程のう。・・・あい、わかった。急ぎ、解体の人間を手配するんじゃ。伯爵にも連絡を入れろ」

 「はッはい!ただいま」


 受付嬢は駆け足で訓練場を後にするのだった。


 「しかし、統括から聞いていたが流石と言うべきかのう」

 「え?」

 「最年少でAランクに昇格した者がおると、ファレストドラゴンとジャイアントセンチピード、クイーンアントの討伐したお主じゃから問題は無いと思っておったが」

 「なんとか討伐できてよかったです」

 「・・・この調子なら、近いうちに昇格の話もあるかもしれんな」

 

 ギルマスと昇格の話をしていると、訓練所に息を切らしながら伯爵が入って来た。


 「はぁはぁはぁ。ケネス殿!」

 「伯爵様、お待ちしておりました」

 「はぁはぁ・・・っ、もしや、後ろに倒れている魔物が」

 「ええ、このカーソン伯爵領を脅かしていた。「ギガントバッファロー」です」

 「いやはや、本当に倒されるとは。我が領を救っていただきありがとうございます」

 「討伐出来てよかったです。これで伯爵領が脅かされることはありませんね」

 「はい、この度はありがとうございます。お礼としてこれを」

 

 そういうと、伯爵はカーソン伯爵家の家紋が入ったバッチを渡してくれた。

宰相様たちからも貰ったことのある、それを受け取ると大切にアイテムボックスにしまっておく。

 伯爵にギガントバッファローの魔石を渡してもらうのと肉を一部買い取ってもらい残りをもらうことを、ギルマスにお願いしてから冒険者ギルドを後にする。


 「じゃあ、私はここで失礼するわね」

 「今回の件、色々ありがとうございました」

 「いいのよ。私も楽しめたしね。それじゃ、次は王都でね」


 ウインクをしたあと、ミス・パープルは人混みの中へと紛れるように消えっていった。

 彼女を見送ると、ケネス達は食材を扱う市場へと歩きだす。

このカーソン伯爵の目的の一つである食材探しであった。


 「さてと、ここではどんな食材があるかな?」

 「・・・楽しみ。早くいこう、ケネス」


 リアに手を引かれながら、市場へと歩きだす。

冒険者が少なくなり、商人や一般人が多くなり始めると商人たちの活気のいい掛け声が響き渡ってくる。

 同時に多くの食材の匂いがしてきた。


 「いらっしゃい!いらっしゃい!」

 「そこの綺麗な奥さん!いい食材が手に入ったよ!安くしとくから、買って行って!」


 市場で行きかう人々の間をすり抜けるように歩きながら、各商店の商品を見ていく。

流石は王国の食糧庫と言われるほどの市場だからか、王都では見たことの無い食材もちらほら散見した。

 リアも楽しそうに商品を見ているので、それだけでここに来た価値があるという物だった。


 「リア、余り離れないでね」

 「・・・わかった。ケネス、あれは?」


 リアが指さした先には、主食の小麦などを扱う商店のようだが彼女が興味を示したのは隅に置かれたものである。

 

 「あれは・・・・・・もしかして、米か?」

 「・・・コメ?」

 「すいません。これは?」

 「いらっしゃい。これは白麦というんだが、人気がなくてね」

 「どうしてですか?」

 「粉にしてもパンに出来ないから、お湯で煮込んだりして食べたりできるんだがな」

 「成程。では店主、これを全部買い取りたいが幾らだ?」

 「えっ!宜しいので?・・・・・・でしたら、これくらいでどうでしょうか?」


 店主が提示した値段は他の商品の小麦の半値以下であった。


 「いいのか?かなり安いが?」

 「ええ、ここで売っていても売れるか分かりませんので買ってくれる方がおられるのでしたら」

 「わかった。有難く買うよ。・・・・・・これでいいか?」

 「・・・・・・はい、確かに」


 念願のお米を手に入れた俺はホクホク顔で店を後にした。


 「・・・ケネス、待って」

 「・・・・・・ぐえっ!?」


 嬉しさのあまり側に居たリアを置いていく形で店を後にしようとしたケネスを彼女が襟をつかんで強引に止める。


 「・・・それは、何に使うの?」

 「明日の昼食か夕食にでもしようかと」

 「・・・美味しいの?」

 「俺は好きだけど、リアはどうだろう?一緒に作るから、食べてみる?」

 「・・・よろしく」


 他にもいろいろな食材を見ていったが、特にこれという物がなかったので馬車へと引き上げていく。

宿に泊まるのも考えたが設備的に自前の馬車の方が性能が高く、こうして新しい料理を作ることもできる為に無理に宿泊することもないと考えてしまう。

 翌日、ギルドでギガントバッファローの肉と報酬を受け取ると馬車に戻っていく。

 馬車の中に入ると、リアはソファーに座りながら魔法書を読んでいたり、イゼルナもそんな彼女にお茶とお菓子を用意していたりと思い思い過ごしていた。

 調理場に移動した俺は、購入した白麦もとい米を炊くべく、準備を始める。

 前世よりも精米技術が劣る為に米にはかなりの糠が付いているために水でよく洗い流す。

時折神の目で鑑定をして丁度いいくらいまで洗ったら、水に浸して約一時間ほどつけるのだが時空間魔法で早送りして土魔法で作った土鍋で米を炊いていく。

 最初強火で沸いてきたら弱火に調整して炊き上げるとこ10分ほどしたら火を止めて蒸らす。

 米を蒸らしている間に他の用意を始めていく。

今回は念願の米が手に入ったので、シンプルに丼ものにしようと思う。

 鍋に醬油と砂糖、赤ワインを入れて火を入れていく。

一度沸かしたしたら火を調整して、丼に蒸らし終わったご飯を盛ってタレをかけて、カットした玉ねぎのスライスを鍋に入れる。

 ある程度火が通ったらスライスしたギガントバッファローのバラ肉を投入してほぐしながらさっと火を入れて、ご飯の上に乗せればギガントバッファロー牛丼の完成である。

 甘いタレの匂いが調理場内に充満して、食欲を否応なしに掻きたてる。

サルレノの海で採って来たわかめで作った味噌汁をつければ、今日の昼食の完成だ。


 「・・・・・・美味しそうだな。リア達を呼んで食べるか」

 

 一応約束したので呼ばないと、かなり面倒なことになる。

ミーティングルームにいる二人を呼んで食堂に向かい、新メニューであるギガントバッファローの牛丼を目にするとリアは目を輝かせていた。


 「・・・こ、これが新作メニュー!?」

 「ギガントバッファローで作った牛丼さ。皆で一緒に食べようか?」

 「・・・そうしましょう」


 全員が椅子に座り、食べ始めると皆言葉を失う。

 以前王都に来るときに使ったレッドバッファローは、前世でいう所の赤牛で赤身とサシのバランスが程よく、うまみの濃い赤身とクリーム色の脂身が美味しかった。

 しかし、ギガントバッファローはこれとはまた違った味わいがある。

 レッドバッファローに比べて、赤身が多くサシが少ないが肉質は柔らかく甘みも十分。

前世の例えでレッドバッファローを赤牛といったが、ギガントバッファローは短角牛と考えていいかもしれない。

 肉のうまみと玉ねぎの甘みと食感、それらをまとめ上げる甘辛いタレがこれでもかと襲いかかってくる。

 もしも、この二つから選べる時は赤身を食べたい時はギガントバッファローにして、もう少し脂身をという時はレッドバッファローを選べばいいだろう。

 丼を半分ほど平らげた時に、顔を上げて二人を見ると彼女たちが一口ごとに顔を綻ばせながら食べていた。

 確か、短角牛の脂身は脂肪を燃焼させる効果のある成分が多かったはずなので女性には嬉しいだろう。


 「・・・美味しかった」


 丼に米一粒も残さずきれいに食べ終えると、満足気な表情を見せていた。

その時にふと、見せた表情にケネスは思わず視線を外してしまう。


 「・・・どうしたの?顔を逸らしたりして?」

 「あ、ああ、今見せた顔をあまり他の人たちに見せないで欲しいんだ」

 「・・・?」

 

 ケネスの言葉に疑問を持ち、両手で頬をムニムニとしてみたがピンと来ないようだった。

 

 「・・・あんな顔を、と言っても、ここまで気を許すのは後にも先にもケネスだけよ」

 「そうなんだ。なら、リアに愛想憑かされないように頑張るよ」

 「・・・なら、私ももっと頑張るから離さないでね」


 満面の笑みを浮かべる彼女を見て、ケネスは胸の高鳴りを抑えるに必死になるのである。




 皆さんのお陰でもうすぐ100万PV。

これからもよろしくお願いします。

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