第40話 討伐開始
朝早くケネス達は集合場所である東門へと行くと、そこには複数台の馬車と準備をする冒険者ギルドの職員と討伐に参加する冒険者たちがいた。
集合時間はまだ先であるが、彼らの戦意に満ちた表情を見ると頼もしさを感じさせる。
「・・・来たか、お前たち」
馬車の間からギルマスが姿を現す。
「ええ、今日はよろしくお願いします」
「それを言うのはこちらだ。この作戦は君たちが攻略の中心なんだ。頼むぞ」
「はいっ!」
「いい返事だ」
幾つかの確認を終えると、ギルマスは職員に呼ばれて何処かに行ってしまう。
それと入れ替わる形で士道達が姿を現した。
「ここにいたか」
「士道さん、おはようございます」
「ああ、おはよう。今日はよろしく頼む」
「こちらこそお願いします。桜さんとレンヤもよろしくお願いします」
「ええ、お互い気をつけましょうね」
「ふんっ、精々頑張れよ。怪我でもしたら俺たちの仕事が増えるんだからな」
「気をつけます。お互いさっさと依頼を終わらして打ち上げと行きましょう」
「・・・全員、集まれっ!」
冒険者たちが集まっている広場に歩いていくと、一段高い所にギルマスが立っており、集まって来た彼らをぐるりと見渡す。
「良く集まってくれた。今回の依頼はレギオンアントの巣の殲滅だ。俺から言うことはただ一つ「生きて帰ってこい」。依頼が終われば、祝杯の宴会を予定しているから不参加は許さんぞっ!」
「「「「「「「オオオォォォ・・・!!」」」」」」
冒険者たちの声が辺りに大きく響き渡る。
全員が武器を上に掲げて、士気は最高潮に高まった。
「出発っ!!」
ギルマスの号令で冒険者たちは一斉に割り当てられた馬車に分乗すると、移動を開始する。
砂埃を上げながら、移動する冒険者たちをギルマスと職員たちは声援と共に送り出した 暫くして、レギオンアントの巣がある場所まで近づく。
草も疎らな緩やかな丘陵帯が目の前に広がっており、所々にソルジャーアントの反応が見える。
馬車から降りると、俺と士道達に馬車を護るためのパーティー以外は周辺に散っているソルジャーアントの討伐に向かって行った。
馬車を護るパーティーに先日士道さんに渡した物と同じ殺虫剤入りのツボを囲むように設置して、士道達の先導の元、巣への入口へと歩きだす。
「・・・ここだ、ここから中に入ることが出来る」
「蟻の巣にしては随分大きいな」
そこに広がっているのは、地下鉄のトンネルを彷彿とさせるほどの大きさの横穴が侵入者たちを飲み込もうと巨大なアギトを開いていた。
当然明かりはなく奥に進めば、漆黒の闇が支配するであろう道が続き、侵入してきた得物を忍び寄ったレギオンアント達が暗がりから襲いかかるであろうことが容易に想像できる。
だが、ケネス達のやり方は今までとは違う。
「・・・良し、作戦を開始しようか」
アイテムボックスからこの間使った殺虫剤入りの発煙材に火をつける。
煙が出てきたら、土魔法で竈のように入り口を覆って巣の中に煙を送り込んでいく。
時折、危険を察知したのか近づいてくるソルジャーアントを片付けていくこと一時間。
「そろそろ、良いかな?」
「・・・うん。いいんじゃない?」
ケネスの側でお茶を飲んでいたリアが頷く。
あの訓練で「気配察知」のスキルを得たみたいで近くなら観ることが出来るようになった、
「う~~~ん。そうだな、そろそろいいか」
「・・・うん、準備する」
イゼルナと一緒に出していたセットを片付ける二人と接近してきたソルジャーアントを討伐してきた士道さんたちが合流する。
「いよいよ、突入か?」
「ええ、そろそろ煙も充満しているでしょう。数の多いソルジャーアントが無力化してしまえば、攻略は難しくないかと」
「ああ、レギオンアントの巣の討伐で一番の難題は数の多いソルジャーアントをいかにどうにかすることだったからな。ソルジャーアントの堅い外殻が武器の摩耗を加速させ、武器が損傷した状態でガードアントと遭遇した時には何人犠牲になるかわからんからな」
「そうですね。ただ、この方法なら必要以上に外殻を傷つけないで手に入りますし、武器の摩耗も抑えられます」
「確かに、ソルジャーアントやガードアントの外殻は処理を施すと質のいい防具の素材になるというからな。職人たちもなるべく傷が少ない方が喜ぶだろう」
「ええ・・・そうだっ、これをどうぞ」
「これは?」
「シロバナムシヨケギクの煮汁に漬けて乾かしたマントです。これを羽織れば、危険を大幅に抑えることが出来ると思います」
「成程な。それは有難いな」
「皆さんの分もあるのでどうぞ」
ケネスはアイテムボックスから、取り出すと全員にマントを配ばると各々は装備の上から羽織る。
全員が羽織ったのを確認すると、レギオンアントの巣の中へと進んで行く。
巣の入り口周りの土魔法を取り除いてから中を覗くと、ならだかな傾斜で地下へと続いている。
ライトの魔法で明かりを確保すると、ケネスを先頭にイゼルナ・リア・士道・桜・レンヤの順番で降りていく。
「リア、イゼルナ、足元に気をつけろ。所々滑りやすい所がある」
「・・・うん。大丈・・・っ!」
「リアっ!」
滑り落ちそうになったリアの腕を掴みながら、得物の武御雷を地面に刺して踏みとどまる。
「とっ、大丈夫か?」
「・・・ありがとう。もう、平気」
ゆっくりと手を離すと少し残念そうにしないで欲しいのだが。
そんなことを考えながら進んで行くと、トンネルが分かれていた。
来た道には目印をつけて置き、下に降りて行く以外のトンネルには小型の殺虫剤入りの発煙筒に火をつけて投げ入れておく。
ケネス達はかなり深くまでトンネルを降りていくが、未だにソルジャーアントの姿を見てはいない。
更に進むと、ライトの明かりに照らされたソルジャーアントの影がトンネルの壁に映し出される。
ソルジャーアントの姿を確認したケネスが一瞬で距離を詰めると、ソルジャーアントの首に向けて武御雷を振るう。
素早い剣戟で瞬く間に落とされたソルジャーアントの首は転がりながらトンネルを下っていった。
そんなことを何度か繰り返していくと開けた広場のような場所に出る。体育館の三倍ほどの大きさがありそうなその場所の中心部に目を向けると大型の芋虫達が蠢いている。
「どうやらここはレギオンアントの食糧庫のようだ。あそこにいるのはグリーンキャタピラーだな」
「自分たちの食糧を量産している、と・・・?リア、どうした?」
「・・・あ、れ」
リアがケネスの腕を掴んでいた。
どうしたのかと振り向いたら彼女の顔は真っ青だったのである。
震える手で指さす方向に視線を向けると芋虫の体から薄汚れた革鎧を着た胴体を、少しづつ貪りながら音を立てながら食っていた。
「幼虫は生かして巣に運ぶ。その食料はソルジャーアントが調達する。俺たちも彼らにしてみれば立派な食糧だ」
広場を無言で通り過ぎるとケネス達は更にトンネルを下っていく。
次に開けた場所に出るとそこには数十匹のソルジャーアントが蠢く場所だった。
ライトの魔法を見上げているが、俺たちの方には気づいていないのを考えるとマントの効果が確かな証拠である。
「帰りの障害になるので始末しましょう」
「ああ、そうしよう」
二人の声に応えるようにそれぞれが得物を取り出す。
リアは得物の杖に魔力を込め始め、イゼルナもケネスの後ろで静かに待機する。
「行くぞっ!」
掛け声と共にケネスは右側に士道は左側のソルジャーアントに向かって走り出す。
最初の一体の首に向かって振り下ろすと鈍い音と共に頭部が地面へと落ちる。返す刃で近くにいた別のソルジャーアントに詰め寄り、得物を振り下ろした。
「・・・ほう、やはりいい腕だな。ケネス殿」
「士道さんも」
ソルジャーアントの群れに回り込むと、中心部に氷の槍が次々と襲いかかる。
精度も高いのか殆どがソルジャーアントの頭部を貫いていた。
それから10分程度の広場のソルジャーアントを片付けることが出来たのである。
辺りを見回すと下へと続くトンネルは一つだけの様だったので、早速下へと降りていく。
それから、暫くトンネルの分岐ごとにソルジャーアントが出てくる頻度が上がって来たがケネス達が近づくと離れていくので、マントの効果はまだ大丈夫のようだ。
ソルジャーアントが出てきたトンネルには上層と同じく殺虫剤入りの発煙筒を放り込んでいく。
更に進んで行くと、先ほどの広場よりも広い場所に多くのソルジャーアントと複数のガードアントが待ち構えていた。
「士道さん、リアと二人で魔法を使います。撃ち漏らしをお願いします」
「ああ、任せろ」
「リア、やるぞっ!」
「・・・うんっ!」
「【サイクロン・カッター】ッ!」
「【フリーズ・ランサー】ッ!」
二人から放たれた魔法は、風の刃が蟻たちを切り刻み、氷の槍がトンネルの壁に蟻たちを縫い付ける。
魔法が通過した後には、蟻たちの殆どは地面に屍を曝していた。
残った個体を待機していた士道さんたちが止めを刺していく。
暫くすると生き残っていた蟻たちは居なくなった。
広場を調べてみたがここも先ほどと同じ様に下へと続くトンネルは一つだけのようだったのでケネス達は再び下へと降りていく。
さっきのソルジャーアントの数を考えると、王女の部屋も近いのだろう。
そう考えると、 先ほどの蟻たちは護衛の兵なのだろうか?
注意しながら進んで行くと先頭を歩いていた士道さんが無言で止まれの合図を出す。
息を殺しながらトンネルの先を除くと野球場を二つ繋げたような広さに四階建てのビルが入りそうなほどの高さがあった。
そして、広場一面には長さ2メートル、太さ1メートル位の卵がびsびっしりと並べられており、上を見上げてみるとアーチ状の天井部のも数えきれないほどの卵が犇めいている。
そして、その中心部には今まで見たレギオンアントの中でも一際巨大な蟻が体の大部分を占める大きなお腹を脈打つ度に新しい卵が産みだされて、それを周りにいたソルジャーアントが卵を磨き、運んでいく。
「話には聞いていたが、デカいな」
「ええ、入口で撒いた殺虫剤入りの煙もここまで来なかったようですし」
「あの卵がすべて孵ったら街は崩壊するな」
「それをさせない為に俺たちが来ているんです」
「そうだな。では、仕事に掛かろう」
ケネスは頷くとアイテムボックスから大量の殺虫剤入りの発煙筒を取り出すと一斉に火をつけて広場に向かって勢いよく投げ込むと同時に広場が白煙に包まれいく。
驚くレギオンアント達だったが、煙の効果で徐々に動きが遅くなる。
中心のクイーンアントも動きが散漫となり、巨大な腹もその脈動を静かに停止していく。
「まさか、これほど簡単にレギオンアントを壊滅に追い込めるとはな。これからレギオンアントの被害に悩む国や街は挙って求めるだろう」
「さてと、生き残っている個体がいるかもしれません。油断せずに、討伐部位を集めましょう」
「ああ、ソルジャーアントはともかくケネス殿にはクイーンアントをお願いする。討伐したのは、間違いなく君なのだから」
「分かりました」
士道達は、広場に散らばるソルジャーアントの首を落としながら討伐部位の触角を切り取っていく。
ケネスはクイーンアントの前まで辿り着くと、念のためにクイーンアントに鑑定をかけるが。
「・・・?こいつは・・・まさか、そんなっ!!」
「・・・どうしたの?ケネス?」
鑑定結果に驚くケネスに、不審に思ったリアが声をかけた。
その声が聞こえたのか、士道達も一旦作業を止めて集まってくる。
「こいつは、・・・・のクイーンじゃない」
「・・・えっ?」
「レギオンアントとは、別の種類のクイーンだっ!!」
「「「「「なっ!!」」」」」
ケネスの言葉に驚愕する声が地下深くの広場に響き渡たったのである。
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