第4話 教会へ
幼少の頃の生活は大体似通ってしまう気がします。
「洗礼の日か。いよいよだな」
この世界において、いや中世ヨーロッパでも無事に五歳を迎えられるということは喜ばしいものである。
医療技術が未発達なために、新生児から五歳ごろまでの死亡率は特に高かった。
そのために、五歳を迎えたらお祝い事をするのが恒例でもある。
また、今世では五歳・七歳・十歳を迎えるごとに行う決まりが存在していた。
まず五歳は洗礼を行いステータスの取得と魔法の有無を確認し、七歳では王都でのお披露目会に出席し顔を売る、十歳で王都の学園に進学して貴族としての見識と人脈を得るらしい。
ちなみに二人の兄貴は今は王都の屋敷にいるらしく、領地にはいない。
「ケネス様、そろそろお時間です。仕度の方はよろしいでしょうか?」
ノックの後に部屋に入ってきたアニスが確認をしてくる。
「大丈夫だよ、行こうか」
「では、こちらへ」
アニスに連れられてケネスは馬車が止めてある玄関ホールへと歩いていくと、そこにはすでに両親が来ていた。
「すみません、父さま。遅れました」
「いや、まだ余裕はあるから大丈夫だ。それにしてもお前も正装すると見違えるな、やはりニーナに似ているからか美少年という感じか」
「ケネス、本当に似合っているわ。さすが、私の息子ね」
「ありがとうごさいます、母様もいつもより輝いて見えます」
「まあ、おだてても何も出ないわよ」
そんなやり取りをしていると、執事のルドムがやってくる。
「旦那様、出発の準備ができましたのでお乗りください」
「うむ、では行こうか」
ルドムの案内で用意された馬車に乗り込んでいく。
一番奥にはカインがその隣にニーナが座り、対面にケネスが座る。
「では、出発します」
全員が乗ったのを確認したルドムは合図を出す。
合図の後、ゆっくりと馬車が動き出した。
街中をはしる大通りを順調に教会に向かって進んで行く中。
「そういえば父様、今日は洗礼を受けるのですが何か気を付けることはありますか?」
「いや、基本的には司教様の言う通りに動いていけばいいよ」
「わかりました」
「それとステータスには神様から加護を貰えることがある」
「加護ですか?」
「うむ、これを持っていると技や魔法の取得が容易になったり加護の強さによってはステータスに大いにい影響がある。武神なら戦闘に魔法神なら魔法に関する能力が強化される、今確認されているの神々の加護は最大でLV5が最高と考えらえている、その人は歴史に名を遺すほどの偉大な人物だ」
「なるほど、ありがとうございます。父様」
「また何か聞きたいことがあったら聞きなさい」
「それと洗礼が終わったあとは、身内だけのパーティーを用意しているからその時にケネスがどんなステータスを貰ったか教えてくれ」
聞きたいことが終わったケネスは馬車の窓から外を見る。
辺境でありながらも商店が多く、数多くの屋台が立ち並び多くの人々に商品を売買していくのが見えて活気に満ちているのがわかった。
馬車の中にいるために外の匂いがわからないのが残念でならない。
「皆様、教会に到着致しました」
カイトの合図で馬車を降りていくとそこにはきちんと手入れがされた石造りの教会が聳え立っていた。
教会への門をくぐり中に入っていくと、カインは受付に待機していたシスターに要件を伝える。
「辺境伯カイン=フォン=ホラントである。今日は三男の洗礼を受けに参ったが、司祭様はおられるか?」
「辺境伯様、お待ちしておりました。ただいま、司祭様は祭事の準備をされておりますのでお部屋でお待ちください。こちらです」
シスターはカインに一礼すると教会の奥へと案内していく。
カインたちもそれに続くと応接室のような部屋へと案内された。
部屋は最低限の家具などで整えられており、ここの司祭は質素倹約を志とするミーミル教を真面目に取り組んでいること物語っている。
カインたちが席について用意されたお茶で喉を潤していると扉からノックが聞こえた。
「失礼します。洗礼のご準備が整いましたのでご案内致します」
案内役のシスターの先導を受けながら、カインたちは洗礼を受ける祭壇のある部屋へと到着する。
祭壇には見覚えのある主神を中心に全部で七体のご神体が祭られており、後ろにあるステンドグラスから陽の光が差し込み輝いて見える。
祭壇の前には司祭と祭事の補助をする修道士が4人いた。
「領主さま、お待たせ致しました。これよりケネス=フォン=ホラント様の五歳の洗礼を始めたいと思います。どうぞケネス様、前にお進みください」
ケネスは、父・カインに促されながらご神体の前で片膝をついて両手を組む。
「ケネス=フォン=ホラントよ。ミーミル教が讃える七神がそなたの五歳の洗礼を祝おう、汝の未来に祝福を」
司祭がそのままご神体に向き、片膝をついて両手を組んで祈る。
「この世界を見守る神々よ。ケネス=フォン=ホラントに道を示したまえ」
祝詞が終わると同時にケネスの視界は光に包まれた。
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