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第37話 馬鹿貴族と市場散策

 漸く更新っ!

 「いったい、何があったんだ?」


 熱狂する彼らの言っていたことを考えると、リアが関係していると分かるが。

周囲を見回していると、怪我人の治療が終わったのか治療室からリア達が出てきた。


 「・・・お帰りなさい、ケネス。向こうはどうだった?」

 「ああ、問題なく。終わったんだけど・・・リア、この騒ぎはどうしたの?」

 「・・・普通に治療をしていたはずなんだけど、どうしてかしら?」


 不思議そうにして首を傾げる彼女からも明確な答えを聞けないと思い、護衛をしていたイゼルナに視線を送る。


 「旦那様も魔法に関しては規格外ですが、エステリア様も自重をなさらなかったようで。水の回復魔法では最上位の魔法をお使いになり、周囲の目も気にすることなく病気の少女を助けたからだと」

 「成程、それならこの騒ぎも納得だな」


 リアが使った魔法は、水魔法の最上位の一つでその効果は光魔法の物と遜色ない。

だが、その魔法が使えるという事は他の上位魔法も行使できるという事であり、後方で回復に勤しんでいることは少ないだろう。

 多くの魔力を使って、人ひとりを助けるよりも広範囲の範囲魔法で魔物を倒した方が実入りは良いのもあるが、この国の魔法使いたちは正面戦力重視の考えが殆どなのでリアが騒がれるのも無理はない。


 「それで、治療は終わったの?」

 「うん、とりあえず午前の部は終わり」

 「そうか、なら食事に行こうか。そろそろお腹もすいたしね」

 「・・・・・・うん、そうする」


 少し赤い顔をしている所見ると、割と限界だったのだろう。

受付の人に、お昼を食べに行くと伝えてギルドを後にしようとした時。


 「ここに、最上位の回復魔法を使える女がいるそうだなっ!僕の前に出すがいいっ!僕の物になる栄誉を与えようっ!」


 突然ギルドの中に入って来て、そんなことを喚く馬鹿に視線を送る。

ギルドの入り口には堂々と仁王立ちをしている男がいた、年齢を考えると恐らく18ぐらいだろうか?後ろには護衛の騎士だと思われるのが二人と執事が一人いた。

 金の装飾をこれでもかと付けたゴテゴテした上着に同じ様に装飾をしたカボチャパンツに白のタイツが目に痛い。

さらには顔はニキビ等の吹き出物が不衛生さを物語っていた。

 反射的にリアを背に隠すと彼女も面倒ごとは御免なことに同意なのか体を小さくして隠れる。

だが、狙った獲物は逃がさないのかこちらへと歩いてきた。


 「おい、貴様っ!今、後ろに隠したのが回復魔法を使える女だな。この僕に献上するんだっ!さあっ!」

 「お断りします。彼女は私の婚約者でもあり、大切なパートナーでもあります」

 「なっ!」


 断れるとは思っていないかったのか、顔をプルプルさせながら段々と真っ赤になっていく。


 「きっ貴様っ!この僕のいう事が聞けないのかっ!?」


 唾を飛ばしながらこちらに詰め寄ってくるが、正気来ないで欲しい。

風呂にも入らないのか酷く体臭が臭うし、消すためにつけた香水と混ざって形容しがたい臭さを放っている。


 「というより、貴方は誰ですか?」

 「ふんっ!この僕を知らないとは、流石は平民だなっ!・・・いいだろう、特別に答えてやろう。イバル男爵家が嫡男のアレクサンターだ」

 「成程、威張る男爵家ね」

 「違うっ!イバル男爵だっ!」


 心底どうでもいいが、イバル男爵家はここから東の街道にある宿場町(いわゆるハブ町)で男爵家にしては羽振りがいいらしいが、あの家の嫡男は確か・・・。


 「さあっ!僕にその女を差し出すんだっ!・・・おお、そこのエルフのメイドもお前のか?」

 「彼女も私の大切な人ですが。何か?」

 「そのエルフも、僕に寄こすんだ。早くしないかっ!」

 「坊ちゃま、もうお止めになった方が」

 「煩いぞ、爺っ!あの二人は僕の物だっ!」


 いい加減、我慢するのも馬鹿らしくなってきたな。

後ろの騎士たちも早くしろとばかりに、剣に手をかけようとしているし。


 「ええぃ!お前たち、その二人を連れてくるんだっ!僕が楽しんだ後はお前たちの好きにしていいぞ」

 「「はっ!!」」

 「・・・へぇ~~~。言い残すことは、それだけか?」

 「「「「・・・ッ!!!」」」」


 突然三人から溢れ出した殺気に様子を見ていた冒険者たちは、青褪めた。

いきなり、ドラゴンの前に放り出されたような感覚に震えが止まらない。

 先ほどまで優しい顔で治療を行っていた人たちとは思えないほどの圧力が彼らを中心に渦巻いている。

 勿論、それをもろに受けた騎士二人は意識を早々に手放そうとしていたがそれを簡単に許すなどあり得なかった。


 「さて、二人を捕まえた後に何をするつもりだったのかな?」

 「「ひっ!!!」」


 ゆっくりと右足を前に出しただけで、彼らは怯え、恐怖する。

後ずさる二人の後ろから何も感じていないのか無責任で無慈悲な言葉が聞こえてきた。


 「おっお前たち、いつまでぼさっとしているっ!早く連れてこないかっ!」

 「・・・アレキサンター様」


 絶対に敵わない相手に突撃して来いと言う命令に、彼らの心は・・・折れた。

手にかけた剣を床に置き、二人が同時に膝をつく。

 未だに狂ったように奇声を上げるこいつに苛立ちも限界を迎えようとしていた時、ギルドに響くように声をかけられる。


 「「一体、何をやっているっ!」」


 誰何と共に入って来たのは、この街の騎士団を率いている騎士団長と部下の騎士たちに執務室で仕事をしていったギルマスであった。

彼らは周りを見渡して、ケネスに気付くとこちらに近付いてくる。


 「ケネス様、お話をお聞きしますので一旦その殺気を収めて欲しいのですが」

 「・・・分かった」


 小さく息を吐くと、それまでケネス達を中心に溢れ出していた殺気を無くなりとばっちりを受けていた冒険者たちは安堵の表情を見せる。

 膝をついていた騎士たちも解放されたが動けないでいた。


 「一体、何があったのですか?」

 「そこのイバル男爵家の嫡男が、リアとイゼルナを寄こせ・・・いや献上しろっ!と、ふざけたことを言い、それを拒否すると今度は騎士たちを使って力尽くで持ってくるように指示したので、彼女たちを護る為に威圧をしたが、周りの冒険者たちには済まないと思っている」

 「「・・・・・・」」


 話を聞いた二人は、同時に言葉を無くす。

 幾ら、表舞台に姿を見せる回数が少なくてもエステリアは現国王陛下の身内であり彼女自身も王族である。

そして、アレキサンターが男爵家の嫡男と言えども、現貴族家当主に向かってよこせと言う発言も許されるものではない。

 だが、そんなことは彼には関係ないのだろうか?


 「何をこそこそと話をしているんだっ!さっさとそれを渡せばそれで済むだろうっ!」

 「残念ですが、それは出来ません。アレキサンター殿」

 「なぜだッ!」

 「貴方は確かにイバル男爵家の嫡男ですが、こちらにいらっしゃるお方はホラント男爵家の現当主のケネス様です。そしてあなたが寄こせと言った内のお一人は第二王女のエステリア様です。今までのあなたがした発言がどういうことか・・・御分かりですよね」

 「なっ!」


 漸く自分がどんな相手に向かって暴言を吐いたことに気が付き、顔を青くする。

あっという間に、掻いた冷や汗が床に落ちていくが事態はそれ以上に深刻だった。


 「ホラント男爵様は、リーズ侯爵家にとっても大恩あるお方。このことは我が主にきちんとご報告を致します」

 「まっ待ってくれっ!私は知らなかったのだっ!彼が・・・この方が、当主だったなんてっ!」

 「言い訳は、主の前でお願いいたします。お前たち、連れて行けっ!」

 「「はっ!!」」

 「待ってくれっ!話を・・・」


 部下の騎士たちに引きずられように連れて行かれるアレキサンターとその護衛達を見送ると、彼らの執事が深く頭を下げた。


 「この度はとんだご無礼を致し、誠に申し訳ありません」

 「何故、止めなかったのですか?貴方は、エステリア王女と私のことの気付いていましたよね?」

 「はい、お姿を拝見した時に」

 「では、何故?」

 「旦那様からのご指示で御座います。アレキサンターを廃嫡するために、このようなことを」

 「イバル男爵でも簡単に廃嫡が出来なかったと、いう事ですか?」

 「おっしゃる通りでございます。ですがこれ以上詳しくはお答えできません」


 これ以上関わると碌なことにならんから、丁度いいか。

執事は深くお辞儀をすると、騎士たちに連れられて行ったが心残りはある。

 殆どの貴族が知っているはずのリアや俺のことを知らないことのに、最上級の水魔法の使い手のことをあまり時間が経っていないのに知っていた。

 まさか、あの執事が誘導した?あいつを確実に廃嫡する為に?


 「・・・まさかな?」

 「ケネス?どうかしたの?」

 「何でもない。さてお腹すいたから、ご飯にしよっか?」

 「・・・うんっ。昼食にしましょう」


 リアの手を取り、ケネス達はギルドを後にする。

残されたギルマスと冒険者たちは、エステリア王女とケネスが男爵家当主のことを知って呆然と立ち尽くしていた。


 





 ギルドを後にしたケネス達は、市場へと向かう。

 様々な商店が軒を連ね、大通りには美味しそうな匂いで客を誘う出店が並んでいる。

大きな声で商品を売り込む声が市場の活気を作り出していた。


 「・・・凄い声」

 「市場から活気無くなったら、街としては終わりだしな」


 レギオンアントに襲われる事態にはなったが街の騎士団や冒険者たちの頑張りによって未だに侵入を許していないこともあり、街を離れる商人は少なかったようだ。

 ギルドにいた冒険者たちも浴びるように酒を飲む姿を、時折見かける。


 「・・・昼食はどうするの?」

 「色々とあるから、迷うなあ」


 南方から交易をしているからか、様々な食材があるようで屋台にはそれらを使った色々な食べ物が売られている。


 「・・・取りあえず、ここにしてみるか。おじさん、それを三人分もらえますか?」

 「あいよ」


 おじさんから受け取った物は、何かの肉を巨大な一本の串焼きにしてから火であぶり、焼けた部分をナイフで削りとり、レタスっぽい葉野菜とトマトみたいな野菜と一緒に薄く焼かれた皮で挟んだ物で見た目は「ケバブ」か「タコス」のような物だった。

 口にはこぶと、肉の濃厚な味がガツンと広がると同時にレタスの歯ごたえとトマトの酸味が良く合って。


 「・・・!!これは、うまいっ!!」

 「美味しいっ!!」

 「今まで食べたことがない味ですね。主」


 かかっているソースに香辛料が使われているようだが、高価なのかそこまで強くはないがケネス達には丁度いい辛さである。


 「おじさん、これ凄く美味しいですね」

 「へへっ、そう言ってもらえるとは嬉しいね。この辺りだと、割と食べられているんだが坊主たちはこの辺の人間じゃないみたいだな」

 「ええ、少し用事があって。この街に寄ったんだがこの騒ぎだったし」

 「そうかい。ならここにいる間、楽しんでくれよ」

 「ああ、そうするよ」


 昼食を終えておじさんと別れるとさらに市場の奥へと進んで行と次第に飲食の屋台から、食材を扱う露店へと変わっていった。

並んでいる商品を見ていくと、領内のとれる食材や交易で売買された食材など色々な物がある。

 

 「・・・ここには、知らない物が色々ある」

 「そうだね。確かに王都にはない物が沢山あるな。・・・これは?」

 

 幾つかの露店を見ていた時、それはあった。


 「・・・坊主、どうしたんだ?これが気になるのか?」


 



 前回から更新が遅れてしまい申し訳ありません。

皆様のおかげで50万PVを越えられたことに大変うれしく思います。

 これからもよろしくお願いします。

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