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第36話 救命士の二人

漸く更新っ!!

 「・・・済まんが、お前たちにはソルジャーアントの巣まで行ってもらい、クイーンアント討伐を頼みたい」

 「問題ありませんが、ここの冒険者たちに任せないのですか?」

 「冒険者ギルドからもお願いしたい、今現在クイーンアントを討伐できるランクはいないのだ。それに今までの迎撃戦でほとんどの冒険者が疲れ果てている」


 今まで沈黙をしていたギルマスが答える。

現状の戦力でクイーン討伐が可能なのは目の前にいる俺たちしかいないことを分かっているからだそう。


 「分かりました。チェニスのギルドマスターからもお願いされていますので構いません」

 「そうか、有難い。報酬の方はどうしたらいいか?」

 「チェニスのギルドマスターとご相談してください」

 「分かった。では、登録をするので一度ギルドに来てくれ」

 「分かりました。・・・ソルジャーアントの巣の位置は解っているのですか?」

 「・・・ここより、東に行くと丘陵地帯がある。そこにあるらしい」

 「らしい?」

 「そのあたりで、依頼をしていた冒険者が知らせてくれたんだが正確な場所は解っていない。確かめる前に襲撃が起こった」

 「なるほど、分かりました。では準備が出来次第出発します」

 「うむ、では頼む」


 アルフォンス卿達に頭を下げると俺たちは領主の館を後にする。

このままギルドに寄るので、ギルマスが先頭を歩いていた。

 戦いが漸くひと段落した為か、市場では多くの人で溢れかえっているがそれを縫うような形で進むと目的の場所、冒険者ギルドに到着する。


 「王都のギルドと同じくらいか?」

 「ああ、ここにもそれなりに依頼が来るからな。これくらいの大きさでないと処理できない時がある」

 「へぇ~~~」

 「まあ、立ち話もなんだ。中に入ってくれ」


 中に入ると、ギルド内にいた冒険者たちがこちらに視線を向ける。

ある者は子供が入って来たとあきれ、ある者は俺たちの力量に驚き視線を逸らし、又ある者は。

 

 「こんな所までお貴族様が呑気に護衛を連れて旅行とはいいご身分だな。それに王都からの冒険者も今頃来るなんて遅せぇんだよ」


 この街を護ったのは俺たちだと、余所者は帰れと言わんばかりの勢いで冒険者の男は近づきながら吐き捨てる。

装備を見る限り、護ったのは本当であろう。元々使い込まれていた革だったが今では見る影もなくボロボロであったし、ポーションに供給が間に合っていないのか怪我をしたところは布で簡単に手当てをしてあるだけであった。


 「おい、ヤック。いい加減にしろ。まだ十分な手当てもしないで何をやっているッ!」

 「ギルマスッ!こいつらは今回の襲撃の終わり方に来たんだぞッ!それで美味しい所を全部奪っていくに違いないだろッ!」

 「そんな分けないだろッ!同じ冒険者がそんなことをして何になるというんだッ!高ランクを上がるにしたって国とギルドからのきちんとした調査が入る。不正等をすれば直ぐにばれるッ!」

 「だがッ!今までこの街を護って来たのは俺たちだッ!何の為にあいつらが頑張ったんだッ!」

 

 それからもギルマスに彼は言い立てる。

内容を聞いていると知り合いが二度と剣を持てないような負傷をしたのが原因らしい。


 「なら、治せば問題は一つ無くなるな。・・・あの~~~すいません」

 「なんだッ!ガキはすっこんでろッ!」

 「・・・(怒)」


 すこ~しイラっと来たので彼の腕に巻かれている布の上から傷口に向かて指を押し込む。


 「~~~ギャアァァァ!!!」


 床に体を転がしてもだえるが、腕を抑えているのでうまく転がることが出来ずに不格好な体勢でもがいている。

 周りの冒険者も心配そうに見ていたり、助けようと動こうとしている者いるので嫌われ者では無いようだ。


 「騒がないッ!【ハイヒール】」


 淡い光が彼を包む込むと、散々騒いでいたヤックの動きが徐々に収まる。


 「・・・?あれ、痛くない」

 「もう大丈夫だろう。どこか違和感はないか?」

 「・・・いや、ない。あんたが治してくれてのか?」

 「ああ、他に誰がいる?」

 「・・・なあ、他の仲間も治せないか!たのむッ!」


 治った途端に彼は土下座する。


 「ギルマス、ここにはどれくらいの負傷者が?」

 「・・・重傷者が・・・約30人、軽傷者は大勢だ。みんな大なり小なり怪我を負っている」

 「分かった。リア、ここに来る前に渡した装備を着てから軽傷者見てくれないか?イゼルナはリアの護衛を」

 「・・・うん、頑張る」

 「お任せください。主」

 「うん。ギルマス、ギルド職員を何人か貸してもらえませんか?」

 「構わないが、どうするんだ?」

 「行列の整理と怪我の度合いを選別してほしい。軽傷者なら彼女たちが重傷・重体なら俺が治しますので」

 「・・・分かった。頼むッ!」


 ギルマスはゆっくりと頭を下げた。

何かを堪えているようで中々頭を上げようとしない。


 「ケネス、その間に俺たちはレギオンアントの巣を探してこよう」

 「お願いします。・・・これを渡しておきます」

 「これは?」

 「殺虫剤の小さいやつです。効果は狭いので馬車の虫よけとして使ってください」 

 「有難い。では行ってくる」

 「・・・ケーナ、ここを暫く頼む」


 虫よけを受け取るとギルドを出ていく。

それを見送るとギルマスと一緒に重傷者を集めた場所に向かう。

 そんな俺たちをヤックは後ろからついてくる、どうやら彼の仲間は今から行く重傷者のスペースにいるみたいだ。

ギルドの隣に併設されている大会議室の様なところに入った瞬間、部屋に漂う異臭に顔を顰める。

 床に敷いたシーツの上に、怪我を負った冒険者たちが男女問わず寝かされていた。

 寝かされている多くの者たちに撒かれた布は血を吸い過ぎて、出血を抑えきれていない。

額に大量の汗をかきながら荒い呼吸を繰り返している者もいれば、青白い顔をして震えている者いる。


 「ここにいるのが、特に怪我がひどい者たちだ。ポーションを使っても治せないだろう」

 「・・・確かに、上級ポーションくらいしか治せないかもしれませんね」

 「例え、上級ポーションがあったとしても使えたかわからん」

 「まあ、やれるだけやってみますが」


 俺はその場にしゃがむとすぐそばに寝かされている冒険者の男に【スキャン】の魔法をかける。


 「切り傷・・・打撲・・・肋骨を三本骨折に右足と左腕も骨折・・・内臓に損傷あり・・・か」


 恐らく下から掬い上げられるような形で吹き飛ばされたのだろう。

折れた肋骨が内臓に刺さっているので、このままでは高い確率で亡くなっているだろうな。


 「・・・【ハイヒール】ッ!」


 魔力を多めに使った【ハイヒール】をかける。

淡い光が怪我の部分を包む込むとゆっくりと治っていく様子が見えた。

 やがて光が消えるとそこには血色が良くなり、呼吸も落ち着てくる。

もう大丈夫だろう。


 「良しッ!次」


 同じ様な感じで、他の重傷者たちに回復魔法をかけていく。

後ろを振り向くと、助かった仲間たちの腕をつかみながら涙を流している冒険者たちの姿が見えた。

 その中にヤックの姿もあり、魔法使いの女性とお互いに抱きしめ合っている。

こうして全ての重傷者たちを治し終わった。


 「流石に、疲れたな。魔力も大分使ったし」


 魔力の総量には自信があったが、ほとんどなくなってしまった。

まあ暫く休んでいれば、回復するので問題は無いが。

 そんなことを考えていると、ヤックが話しかけてきた。


 「さっきはあんなことを言って、すまねえ。仲間を救ってくれて、ありがとう」


 疲れて休んでいる俺に向かって、彼は深々と頭を下げた。

それに続くように他の冒険者たちも頭を下げていく。


 「俺は、出来ることをしたまでだ」

 「もう助からないと思っていたんだ。それをあんたは救ってくれたんだ、出せるものは少ないがなんでも言ってくれ」

 「はあ、軽々しく何でもとかいうな。・・・そうだな、今度来た時に街の案内をお願いするよ」

 「・・・・・・そんなことでいいのか?」

 「ああ、この街に来たばかりだからどこに何にがあるかわからないからな」

 「まあ、あんたがそれでいいなら構わないが」

 「後は、そうだな。相方を大事にしなよ、今回のように治せる人間が近くにいるとは限らないから」 

 「ああッ!もちろんだ!もう二度とこんなことにはさせねえ」


 力強く頷く彼を見ていると、ギルドのホール部分から大きな歓声が聞こえてきた。

その歓声の正体を確かめる為に、ホールに向かうと。


 「「「「「ウオォォォッッッ!!」」」」」


 先ほどの暗い雰囲気から一変して、溢れんばかりの熱気がホール内を満たしていた。

まるでアイドルのコンサート会場すべてに熱烈なファンが集まったかのような状態である。

 その中心に向かうと、そこにはリアが治療をしている部屋があった。

そして、治療を受けた彼らの口々にからこんな言葉が繰り返される。


 「「「「「おおおっ!!リア先生、最高ッ~~~!!」」」」」





**********


 


 時を少し遡る。


 ケネスからお願いされたリアは、マジックポーチに【氷姫のローブ】をしまうとこの街に来た時に渡された装備一式に着替えた。

 その装備とは


 ・女医さんの眼鏡


 卓越した魔導鍛冶師が趣味で製作した魔道具。無属性魔法【スキャン】の術式を付加された伊達メガネで患者の状態を見ることが出来るがメガネ本来の視力補正効果は無い。


 ・女医さんの白衣


 卓越した魔導鍛冶師が趣味で製作した魔道具。 眷属の牡丹の糸から作られた白衣。

 「魔力強化特大」「魔力回復特大」「自動修復」「装備者重量軽減」「温度自動調整」


・白銀の髪留め


 卓越した魔導鍛冶師が製作した魔道具。 水属性のミスリルから作られた雪の結晶体の模様を随所に施した髪留め。

 「氷・水属性強化」「氷・水属性耐性強化」「自動修復」「装備者重量軽減」



 リアは髪を後ろで一つにまとめて着替え終わると、イゼルナと一緒に奥にある治療室に向かう。

本来は物置であったが職員たちの力で瞬く間に片づけられた後、イスとテーブルとベッドを設置した簡易的な治療室となっている。


 「ではこちらをお使いください」

 「さてと、ケネスの期待に応えないとね。・・・イゼルナさん」

 「かしこまりました。最初の方、どうぞ」


 リアの護衛という事で、後ろに控えるイゼルナが治療室の前で並んでいる軽傷者の一人を中に招く。

ギルド職員に促されて、中に入って来たのは年若い冒険者の少女だった。

 ただ、右足を怪我しているらしく少し引きずりながら入ってくる。


 「・・・どこを怪我されましたか?」

 「昨日の戦闘で足を捻ったみたいなんですが、日を置いても痛みが増すばかりで」

 「成程、それはさぞ痛かったでしょう。では、ベッドに横になってください」

 「・・・はい、よろしくお願いします」

 「・・・【スキャン】」


 ぎこちない動きでベッドに横になった彼女にリアはメガネに魔力を流して、スキャンの魔法を発動する。

右足を中心に見ていくと、痛みの原因となる患部を見つけた。


 「・・・足の骨にヒビが入っているわ。これでは痛いはずですね、ポーションは使わなかったの?」

 「その・・・お金がなくって。ポーションは買えなかったので」

 「まあ、いいわ。・・・【ヒール・ウォーター】」


 光魔法とは違う青色の光が彼女の患部を優しく包む込む。

水の回復魔法は光魔法の効果とは異なり、人間の元々の治癒能力を高めて回復させるという物であるが高位の魔法なら光の魔法とほぼ同じような効果あるらしい。

 その為に、光魔法よりも軽視されがちだが数少ない回復魔法なので重宝されているのであった。


 「・・・終わったわ。足の具合はどう?」

 「・・・痛く、ない。本当に痛くないッ!」


 恐る恐る床に足をつけた彼女は、痛みが無くなっていることに気が付く。

来た時には、満足に歩くことが出来なかったが今では右足に力を入れても大丈夫だったことを喜んだ。


 「今日、一日はゆっくりと安静にしていなさい。それと・・・口を開けて」

 

 疑うことなく口を開けた少女にリアはある物を放り込む。


 「??・・・これは?」

 「下級ポーションを飴に練りこんだ物よ。今は怪我で体力が低下しているから気をつけなさい」

 「はい!・・・あの、お代はいくらですか?」

 「そういえば、決めていなかったわね。イゼルナさん、ケーナさんに聞いて来てもらえないかしら」

 「畏まりました」


 イゼルナが治療室から出ると、時間を掛けることなく直ぐに戻ってきた。

 

 「ケーナ様に確認したところ、銀貨三枚でいいそうです」

 「分かりました。ありがとうございました。先生ッ!」

 「・・・お大事に」


 通常大きな街にある治療院だと怪我の大小はもとより完治するしないに関わらず金貨一枚で治療が行われているので銀貨三枚は破格の値段と言える。

 下級ポーションですらこの状況では低ランクの冒険者には手が出せないくらいに値が上がっていたことも怪我人増加の一つであろう。


 「次の方、どうぞ」


 その様な感じで次々と治していくと。


 「お願いします。どうか、どうか娘を助けて下さい」


 幼い少女抱えた母親が治療室に入って来た。

まだ始めて間もないが、回復していった冒険者たちの口々から他へと広まっていたんだろうか?もしくは彼らが懇意にしている店の人たちなのだろう。

 よく見ると、母親の顔色も悪い。

 

 「どうされましたか?」

 「二日前に発熱をしてから、一向に下がらなくて。とっておいたポーションを使っても良くならなく」

 「・・・ふむ。【スキャン】」


 ベッドに移された子供をスキャンで見ていくと、頭と肺が赤く光る。

診断の結果は恐らく肺炎と発熱による脳炎だと考えられるが、これは下級ポーションやター【ヒール・ウォーター】では治すことが出来ず、高位魔法でしか治せないと母親に伝えるとその場に泣き崩れるように座り込み、それを聞いていた冒険者たちの顔にも暗い雰囲気が立ち込める。


 「絶望するのは、まだ早いわ。私が治すから」

 「・・・えっ!?」

 「・・・・・・【レーベンクーア・ヴァッサー】」


 リアの手のひらから【ヒール・ウォーター】とは違う淡く透き通るような青い光が少女の体を包こむ。

暫くして少女から青い光が消えると、真っ赤な顔で苦しんでいた少女がゆっくりと目を覚ます。


 「・・・お母さん、もう苦しくないよ?」

 「あああぁぁぁっ!クララっ!!」


 もう助からないと思っていた母は大粒の涙を流しながら大事な娘を強く抱きしめた。

治療室の前では、様子を見ていた冒険者たちが口々に「奇跡が起きたっ!」と大騒ぎしていたが、少女が治ったことを皆が喜んでいることがわかる。


 「クララちゃん、口を開けて」

 「?何、先生・・・!!あま~~い」

 「ありがとうございます。ありがとうございます」

 「これは下級ポーションを練りこんだ飴よ。一日一粒舐めさせてください。治ったばかりで体力が落ちていると思いますので念の為に五日分を渡しておきますね。それとなるべくこれは使い切ってください、あまり長く時間を置きますと効果が保証できないので。あと、お母さんの分も渡しておきますね」

 「私も・・・ですか?」

 「クララちゃんを昼夜問わず看病して、お母さんもかなり体力が低下していると思いますのでクララちゃんの為にもお願いします」

 「ああ・・・あ、ありがとうございます。先生」

 「なるべく安静にして、滋養のある物を食べさせてください」

 「・・・はい、ありがとうございます」


 何度も頭を下げて親子は治療室を出ようとする。

 

 「・・・待って」

 「あの、何かありましたか?」

 「いいえ、お二人ともよく頑張りました。【クリーン】ッ!」

 「すご~~~いっ!きれいになったっ!」

 「では、お大事に。それと治療費は銀貨一枚でいいですよ。子供が大人と同じ値段ではね。・・・イゼルナさん」

 「畏まりました」


 親子をカウンターに連れていくと受付嬢に事情を話し、親子は銀貨一枚を払うと笑顔でギルドを後にする。このことをその場にいた人たちは誰も文句はおらず、親子を笑顔で見送った。

 ただ、親子を見送るリアの顔を見ていた人たちは、それどころではなかったのである。

まるで、女神のような優しげで慈しみのある笑顔を見た彼らはまるで示し合わせたかのように一斉に声を上げた。


 「「「「「おおおっ!!リア先生、最高ッ~~~!!」」」」」


 彼らの合唱が冒険ギルドの建物を震わせる。

それはケネスが治療する隣の建物にまで伝わり、大きな騒ぎになったのであった。








 中々話が進んでいない気がします。

 いつも読んでくれている皆様、本当に感謝しています。

これからもよろしくお願いします。

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