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第30話 実践訓練とご褒美のお菓子

 漸く更新できました!!


 第二王子主催のお茶会が終わって、少し経ったある日。

平和な時間が戻って来た、と思ったら。


 「・・・なんで、こうなるんだろうな」


 執務室の机に上には、大量の手紙があった。

それらの中身を確認していくと、ため息しか出ない。

 

 「お茶会、お茶会、お茶会、、お見合い、お茶会、お見合い・・・」


 殆どが、お茶会の誘いかお見合いの手紙しかない。

どうやら、前の第二王子のお茶会のことを子供から聞いた親が動いたようだ。

 早い所では、翌日の早朝に持って来ている。


 「しかし、断るにしてもな」


 第二王女であるリアと婚約しているが、公式発表していないが耳の早い貴族は知っているので第二夫人などを狙っているのだろうか?

 情報の遅い貴族家からの手紙も来ているが、どちらにしても断りの手紙を書かなければならないのが面倒である。

だが中には高位の貴族家からの招待状などもあり、敵を作らない為にも行った方が良いのだが・・・。 

 どうした物かと考えていると、魔法の撃ちっぱなしをしていたはずのリアが執務室に入ってくる。


 「何か問題でもありましたか?」

 「ケネス、私に武器の扱いを教えて欲しいの」

 「?接近戦をなんでまた」

 「魔法使いは、魔力が無くなればお荷物でしかない。自衛の意味もあるけど、接近されても大丈夫なようにしたいから」

 「・・・まあ、確かに。因みに王国の魔導士はどうしているんだ?」

 「あそこは、それ以前の問題」

 「どういうことだ?」

 「それにつきましては私からよろしいでしょうか?」

 「ああ、頼む」

 

 ラページの話では、王国には新しい魔法や用途を研究するウィルソン派と、魔法での戦闘を専門とするゴードン派の二つがあるそうだ。

元々は一つの部門であったが方向性の違いから袂を分かち、それぞれの部署を作り運営されている。

 だが、部門としては元のままなので限られた予算を少しでも得ようと、お互いに譲らずに対立しているのだという。

それに、リアがここで勉強をするようになってから近接戦闘の大事さを知り、大人数での訓練がどの様なものかと魔法師団の訓練風景を見てみると、ただ魔法を的に撃ちこむだけでの繰り返しているだけで工夫も何もあったものでない。

 なのでこちらに相談しに来たのだという。


 「確かに、魔法使いなんて魔力が無くなればただの人でしかない。正直、お荷物にしかならないし防御力が低いから敵にとっては美味しい餌」


 この世界でも、ゲームと同じ様に魔力が無くなった魔法使いなど足手まといにしかならない。

先に述べたゴードン派の魔法使いも、格闘戦を挑むような者は皆無である。

 戦場では、魔力が無くなるまで延々と遠距離用の魔法を撃つだけの固定砲台でしかない。

それでも偉そうな態度をしてくるので、前線を支える騎士団と軋轢が生まれてしまい、騎士団と魔法士団は険悪な雰囲気となっていた。

 王城内で顔を会わせれば、お互いに罵り合っている所が時折見ることがある。

このことに、王家も頭を痛めているがどちらかに肩入れをすることなく中立を保っているのでどうにかなっているに過ぎない。

 さらに魔法士団の中でも対立が起こっているので市民の間では内部分裂が起きてしまうのではないかと噂しているほどである。

 因みにホラント辺境伯家と我が男爵家は、どちらにも加担していない。

そんなことで争うよりも、連携した方が助かる確率が上がるので言い争うこと自体無駄であることを知っているからだ。


 「分かった。訓練は草原のフィールドでやろうか」

 「うん。お願い」

 「得物はどんなのが良いですか?」

 「・・・メイスか、杖?」

 「分かった。一応、全ての種類を試してみようか」

 「うん、お願い」


 俺たちは、練習場所にしている草原フィールドに行くとアイテムボックスから各種武器を取り出していくのだったが。

小回りの利く短剣、汎用性高い剣に、中距離からの攻撃に適した槍、高い攻撃力が売りの斧等を出す。

しかし、出したはいいが重量の重い斧や扱いが難しい短剣などをリアが使えるわけがないので、候補として残るのはメイスか杖、それから短めの槍ぐらいだろう。


 「取り敢えず、メイスを振ってみてくれないか?」

 「うん、分かった」


 第一候補のメイスと小盾を渡してみたが、何処となく危なっかしい。

試しにマッドゴーレムを召喚して戦ってみてもらったがメイスに振り回されている?感じがした。

 

 (あのメイス、そんなに重かったけ?)


 数分もすると息が上がっていたので、休憩を挟む。


 「どうだった?」

 「無理、もっと軽いメイス無いの?」

 「打撃武器を軽くしたら威力が無くなるぞ、それにこのメイスが一番軽い物だ。・・・あ~もしかして、まとも動いたのが今日が初めてとか」

 「・・・・・・(コクッ)」

 「毎日、書庫に籠って本を読んを読んでいたらそうなるか」


 ただここで甘やかしても、良いことは無いよな。

でも、基礎体力がないと話にならないのなら・・・仕方ない。


 「リア、ひだり・・・いや、右腕を出してくれ」

 「・・・こう?」


 出された右腕に魔法具の腕輪をはめる。


 「?これは」

 「それは、体力強化の魔道具だ。本来は体力の無い病人用に作ったものだけどね」

 「むう、私は病人じゃない」

 「いや体力の無さは、病人クラスだ。これが必要がないくらいには体力をつけてくれ」

 「・・・分かった」

 「それと、目標を作ろう。今日の近接戦闘でマッドゴーレムを20体、倒せたら。新しいお菓子を作ってあげます」

 「本当ッ!」

 「ああ、本当だ。近接・魔法どれを使ってもいいから倒し切ること、魔力の残量には常に気を配ること」

 「うん、分かった。・・・始めよッ」

 「・・・あ、ああ、そうだな」


 何時もより興奮気味なリアに押されながらもマッドゴーレムを召喚していく。


「行きますッ!・・・ヤァッ!」


 召喚が終わったと同時に、リアが勢いよくマッドゴーレムへと飛び込む。

先頭にいたマッドゴーレムにメイスを叩き込むと、直ぐに反転して二体目に攻撃を仕掛ける。

 飛んでくる攻撃を小盾で防ぐが、完全には防ぐことが出来ずにたたらを踏んでしまう。


 「・・・くッ!「パワーブースト」ッ!」


 筋力強化の魔法で、押し返すが反対方向から別のゴーレムが攻撃を仕掛けてくる。

後ろに下がって回避するも、読まれていたのかさらに別のゴーレムが行く手を阻む。


 「「ウオーターランス」ッ」


 貫通力の高いランス系の魔法を打ち込み、包囲を崩して脱出を図る。

しかし、攻撃を逃れたゴーレムが姿を変えて足に絡みつく。


 「しまったッ!」

 「完全に倒さないと、今のように抑え込まれるよ」

 「・・・くッ!離しなさいッ!」


 強引に絡みついていたゴーレムを倒すと、ゴーレム達から距離を取る。

魔力をかき集めて、自身が使うことが出来る最高の魔法を口にした。


 「「スプレット・バスター」ッ!」


 大量の水がマッドゴーレムたちを押し流す。

元が泥の為に激流に呑まれて形を無くしていく。

 あと残るのは大量の水を含んだ土砂のみであったが、最初からペース配分が滅茶苦茶なので最後の魔法を終えると彼女はふらふらになっていた。


 「お疲れ様、どうだった?初めての実践訓練は」

 「・・・・・・疲れた。もう、動けない」

 「では、お菓子はまた今度がいいかな」

 「・・・待って、お菓子は食べたい」

 「無理して食べると、体に悪いよ」

 「・・・・・・でも、食べたい」

 「なら、客室で休んできてください。これから作って来るので」

 「・・・分かった」


 訓練場から出ると、リアはフラフラと近くの客間に入る。

メイドの一人に後のことをお願いするとキッチン向かう。

 ちゃんと用意して置かないと、後が怖い。


 「これは、旦那様。どうかされましたか?」

 「リアのご褒美用のお菓子を作りに」

 「・・・・・・新作ですか?」

 「? ああ」

 「是非、見学をしても宜しいですかっ!!」

 「構わないよ。手伝ってもらうこともあるかもしれないし」

 「ありがとうございます!!」


 新しい料理を見ることが出来ることが余程嬉しいのか、調理場に響き渡るくらいの返事が返って来た。

興奮している料理長を放っておいて、材料である小麦粉と卵に、牛乳、砂糖をアイテムボックスから取り出していく。

 卵も牛乳も王都で普通に売っていた。一応家畜はいるようだが如何せん値が張っていた。


 「まずは、小麦粉に卵、牛乳、砂糖を入れて混ぜ合わせる」

 「はい」


 二人でボールの中にそれぞれ材料を入れて混ぜ合わせていく。

成形しやすい硬さまで混ぜ終わったら一定の厚さに伸ばす。


 「・・・しまった。型がない」

 「どうかされましたか?」

 「いや、このお菓子には型がいるんだが。う~~~ん、仕方ない。作るか」


 アイテムボックスから細めの丸太を取り出して、風魔法で切り出し木製のドーナッツ型を作る。

二人分作ったら、片方を料理長に渡す。


 「これを使って、生地を抜いていこう」

 「分かりました」


 二人ですべての生地を抜いていくと、かなりの数が出来上がった。


 「さて、これを揚げます」

 「・・・あげる?ですか?それは一体どのような」


 あれ?そういえば、この世界に揚げ物は無かったけ?

・・・確かに、王都に来て暫くたつが他の店で揚げ物を見たことがない。

 この世界にはそもそも揚げるという、調理法そのものが存在しないのかもしれない。

主に使われている油は、オークなどのラードのような動物系が殆どで、今使っている植物製の油は馴染みがないために揚げるという料理方法がなかったのかもしれないな。


 「油で煮る?と言えばいいかな。まあ実際に見たほうが早いな」


 深めの鍋に油を注ぎ入れて、火をつけた。

箸の先を油に入れると細かな泡が出てきたら、ドーナッツの生地を静かに入れる。


 「熱くなった油にゆっくりと先ほどの生地を入れるんだ。そうしないと油が跳ねて火傷の元になるし、高温になり過ぎると火事になる危険があるから作業中は絶対に離れないことだ」

 「分かりました」


 パチパチと音を立て甘い香りが厨房内に充満する。

匂いが廊下の方にまで流れて行ったのか、メイドたちが顔を覗かせていた。

 数分後、ドーナッツがこんがりと綺麗なきつね色になったら引き上げる。


 「仕上げに、砂糖の細かいのを振りかければ完成だ」

 「おおっ!これはなんと言うお菓子ですか?」

 「ドーナッツだ。味見してみようか」

 「はいっ!」


 料理長と二人で、揚げたてのドーナッツを一口頬張る。

サックりとした香ばしい外側とふっくらとした甘い香りのする中身が口の中で混ざり合う。

 料理長に入れてもらった濃いめのお茶を一口飲むと、何とも言えない幸福感が心を満たす。


 「先に、食べるなんてズルい」


 二人が余韻に浸っていると、メイドたちの間からリアが姿を現す。

余程楽しみにしていたのか、風船のように頬を膨らましている。


 「・・・これは、試食です」

 「お茶まで用意して?」

 「そうです」

 「私も食べたい」

 「分かった。残りを揚げるからリア達は食堂の方で待っていてくれ」


 渋々と言った感じで、彼女たちを食堂の方に移動させると俺たちは残りの生地を揚げていく。

揚げ終わったドーナッツを紙を敷いたパン籠に盛り付けると料理長と二人で食堂に向かう。


 「お待ち同様」

 「これは、なんていうお菓子?」

 「ドーナッツと言うお菓子です。冷めても美味しいけど、揚げたての方が美味しいと思う」

 「いただきます」


 言い終わるとほぼ同時にドーナッツに手を伸ばす彼女。

メイドたちもお茶の用意を最速で終えると、次々に手を伸ばした。


 「はむッ・・・!!」

 「これはッ!」

 「・・・美味しいッ!香ばしくってお茶にも合います」


 どうやらメイドたちには好評のようだ。

隣でリスのように食べているリアを見る限り、大丈夫そうだ。


 「材料は、普段見慣れている物ばかりですが、こうした物があるとは思いませんでした」


 一緒に試食をした料理長もそんな感想を口にする。

先のお茶会でも焼き菓子が中心だったことを思い出す。

 

 「・・・ケネス。城に持って帰りたいけど、いい?」

 「たくさん作ったから、いいよ」

 「ありがとう」

 「明日も訓練するなら、また作りますから」

 「・・・頑張る」


 やる気を見せるリアを可愛く思うが、明日からはマッドゴーレムの数を増やしていこうと決めていた。

何処まで行けるか少し楽しみである。

 後日、王宮から手紙と共に少量の金貨が入った袋が送られてきた。

手紙には、ドーナッツをまた送るようにと書かれていたが、使っている材料費を考えると正直ぼろい商売だと思う。

 因みに今回の材料費は、銀貨一枚くらいしか使っていないが半分近くは卵などに掛かっている。






 揚げたてのドーナッツは美味しいですよね。

 何時も読んでくれている皆様には本当に感謝です。(^^)/

これからもよろしくお願いします。

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