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第28話 屋敷の小改造と従魔

 リアが初めて屋敷にやって来たり、トーラス商会に新しい商品を提案した日から幾ばくか時が過ぎた頃。


 「はぁ~~~。お茶が美味しい。こうしてゆっくり出来るのも久方ぶりだな」

 「そうですね。ここの所色々ありましたから」


 屋敷にあるテラスでのんびりとお茶を飲んでいるとここ最近のことを思い出す。

あの日から、リアは毎日のように屋敷に来るようになった。

 午前中は書庫に閉じこもり、昼食を挟んだ後に練習場で魔法の訓練をしている。

何故そこまで頑張るのか訳を聞くと「貴方の後ろを護れるようになりたいから」と言われてしまい返答に詰まってしまった。

 練習場に関しては、屋敷の一部を拡張して「ゲート」を付加した扉を複数用意することで解決。

一の扉は遮蔽物の無い荒野で、二の扉は半分水没した古代都市、三の扉は魔の森を酷似した森林地帯に時空間魔法で作ってある。

 リアも一の扉の先で、訓練を先ほどまで行っていたが今はお風呂で汗を流している。

本来であればこのようなことを結婚前にすることは、不貞の疑いを生むだけであるがラベージから王妃様の許可が出ていると聞いた時には頭が痛くなったのは言うまでもない。

 それとあの日に渡し損ねた「氷姫のローブ」をこの間漸く渡すことが出来たのである。

その効果に、大いに喜んでくれたので渡したこちらとしても嬉しいが、お付きの侍女に話を聞くと訓練以外でも普通に着ているので価値のわかる人間が既に現れている可能性があるという。

 製作者である俺のことがばれてしまうと平穏な生活が出来なくなってしまうことになりかねないが、その時は実力を持ってO・HA・NA・SHIをしてこようかと思っている。


 「暇なのは良いことなんだが、少し退屈だな。久しぶりに魔の森に行ってみるか?」

 「では、準備をしてきますね。主」

 「ああ、ラベージに夕方には戻ると伝えておいて欲しい」

 「はい」


 イゼルナが一礼をしてテラスを後にすると、アイテムボックスから装備一式を取り出す。

新調してからまだ一度も実戦で使ったことは無いが、三の扉の森林地帯で試し切りをした時に大の大人が数人がかりで漸く手が届きそうな大木を豆腐のように切ることが出来た時には言葉を無くしてしまった。

 他にも「迅雷のブーツ」を全力で使ってジャンプして見たら飛び上がり過ぎたことがあったので加減を調整するのに時間が掛かったのはいい思い出であろう。


 「主、お待たせしました」

 「じゃあ、行こうか?」


 「ゲート」を開いて緊張感の欠片もない調子で潜っていく二人に偶々近くにいたメイドが目眩を感じた。

高ランクの冒険者しか生きて帰ってくることはできないとされている場所に、まるで散歩に行くかの如く出発していくことに相変わらず自分たちの主人は非常識だと考える。






 「この森も久しぶりだな。二年ぶりかな?」 

 「あれから既に二年ですか。主にお仕えしてからそれだけの時間がしか過ぎていないのですね」


 それぞれの時間の感覚=尺度の違いを感じつつ、俺は今回探索するポイントを決める。

二年前には領都から見える森の外周部と一部奥地に行ったことがあるがそれ以上は時間の関係上無理があったのであきらめていたが、今回からはそんな制約が存在しなくなったのでより広範囲を探索できるのであった。

 魔の森と称されてはいるが奥地に行くとそうでもない。

奥に行くと巨大な池や湿地帯があったり、外周部よりも巨大な木々が乱立している巨大樹の森もあったりと変化に富んでいる。

 勿論そこに住んでいる魔物も違うのでどんな種類の魔物がいるのか期待が膨らむが、今回は目的があるので行く場所は決まっていた。


 「良しっ!今日は巨大樹の森に行こうっ!目標がいるかもしれないし」

 「畏まりました。しかし、姿を現すでしょうか?」

 「別に今回限りではないから、会えなければまた今度見来ればいい」

 「はい、主」


 二人は頷きあうと森の奥へ向かって走り抜けていく。

途中、襲ってくる魔物もいるのだが通り抜けざまに瞬殺していき、即座にアイテムボックスに回収していくので障害にはなりえない。

 暫く、走っていくと森の様子が変わって来た。

鬱蒼とした森から巨大樹が乱立した森に変わったので、一度足を止める。


 「ここにいるはずなんだが?問題はどこにいるかだな」

 「相手は待ち伏せのプロですから、簡単に姿は見せないかと」

 「なら、もう少し進んでみよう」


 マップで確認すると一瞬だが何かがいることは分かったので。俺たちは木々の枝などを使って森を縫うように駆け抜けていく。

 やがて、巨大樹の中心部にある大木に飛び移ると来た方向の反対側に向かって「武御雷」を振り抜いた。


 「ソニックブームっ!」

 「・・・・・・!!」


 目標に向かって攻撃をしたが、直接は狙っていない。

相手が体を支えてる為に使っていた太い枝を根元からぶった切っただけである。

 体勢を崩された目標は空中に投げ出されながらも慌てることなく体勢を整えると静かに地面へと降り立ち、その姿を眼下に曝した。

 

 「・・・やっと、見つけた」

 「ええ、漸く見つけました。・・・・目的のアラクネ種」


 眼光鋭くこちらを見上げている彼女をよく見ると、下半身は2m強の胴体で薄紫色をしている。

上半身は、ダークグレーの髪に朱色の瞳、そして雪のように白い肌。

 髪に隠れて見えにくいが、見事な山脈が二つ。

それと、分かりづらいが上半身というよりも膝の辺りから蜘蛛の下半身へと膝つながっているようだ。


 「お前を俺の従魔にしたい」

 「面白いことを言うのネ」

 「俺は至って本気だ。力を示せと言うのなら、幾らでも」

 

 ・・・どうやらやる気のようだ。


 「何時でもいいぞ」


 アラクネがゆっくりと腕を胸の前から動かし、何かを投げる動きと同時に後ろに糸を飛ばして後退する。

俺は少し首を動かして躱すと、後ろの木に何かが刺さる音が聞こえた。

 時空間魔法で刺さった物を目の前に持ってくると、細い針?・・・いや、毛だな。

蜘蛛の中には毛を飛ばせる種類もいるらしいから、恐らく彼女もそれが出来る種類なのだろう。

 よく見ると、薄っすらと湿っているのは毒液だろうか?もしも、刺さっていたら終わっていた可能性もあった。

 改めて彼女の力を確認できた俺は回収した針を上に投げる。

何かに当たったのか少しすると黒い影が下へと落下していく、水風船が落ちたような音がした後に見てみると約20mほどの「ダークネス・バイパー」の死骸があった。

 毒耐性を持つ「ダークネス・バイパー」ですら即死か・・・マジでヤバいのが飛んできたようだ。

 だが、そんなことを呑気に考えさせる間も作らせずに木々の間から複数の「アースランス」がこちらに向かって飛んでくる。毛を使った暗殺が効かないと分かると即座に切り替える姿勢に感心しながらも同じく「アースランス」で迎撃をしていく。

 お互いの間で、土の槍がぶつかり合い砕け散ると両者の間を、細かな粉塵が視界を暈かす。


 「・・・ふっ!」

 「・・・ッ!」


 魔法では互角と踏んだのか、彼女は接近戦を選択して一気に勝負を決めようとこちらに近づく。

巧みに糸を操り、こちらの進路を妨害しつつも幾重にも張られた糸で攻撃してくる。

 だが、彼女の糸には魔力を帯びているので神眼でそれを確認できたので回避は容易であった。


 「・・・くっ!これも避けますカッ!」

 「そろそろ、終わりにしようか?」


 何重にも張られた糸の隙間を一気に走り抜けて、斬撃を叩き込み前足を切り落とす。


 「まだデスッ!」

 

 「痛覚耐性」スキルを持っているのか足を一本切り落としても移動速度に変化はない。

ならば・・・。


 「なら、これでどうだッ!」


 流れるような斬撃が五回ほど繰り出し、相手の足を切り飛ばしていく。

幾ら「身体制御」のスキルを持っていても、支える足が無くなっては意味をなさない。

 加えて「痛覚耐性」のスキルでも痛みを軽減するだけで相当痛いはずである。気絶しても可笑しくないが、そこは彼女の意地があったのだろう。

 足が飛び、支える物が無くなった為に2m強の蜘蛛の体を地面に付けて、頭を垂れる。


 「ここまで、ですかネ。人間に敗れるとは思いませんでしたガ」


 何か、諦めの表情だが初めに言ったことを忘れてるのか?

キチンと鑑定をしたわけではないが、魔物として彼女は高ランクに属していると思う。

 戦った感じだと以前討伐した「ファレストドラゴン」といい勝負であるし、条件によってはそれよりも上の感じがするし。


 「どうやら、ここが年貢の納め時ですかネ」

 「おいおい、初めに俺は言ったぞ。お前を従魔にしたいと、それにお前は十分に強いから」

 「本当ですカ?なら・・・・・・ッ!!」


 話を聞いた後、希望を見出したように見えたが何かに気が付いて表情を暗くする。

気配察知で気づいていたので後ろに振り向くと、一定の間隔で聞こえる地響きと共に巨大樹の間からこちらへと歩いて来る存在を見つけた。


 「ふんッ!オラの嫁に何をするんだっ!」

 「・・・貴方の嫁になったつもりは、無いッ!消えろッ!木偶の坊ッ」


 人間の倍ほどの背丈を持ち、耐久性と格闘能力に高く、巨人族の中でも個体数が少ないが統率者になりやすいことで有名な魔物「一眼鬼」。

 通常は緑の表皮が赤いことから亜種か特異種なのだろう。総じて知性が乏しいと聞いているが、この個体もそうみたいだ、見た感じ力も強そうだ。


 「もしかして、既婚者?」

 「そんな分けないだろうッ!あんな奴と誰が番になんかなるか!!」

 「・・・オラの嫁に、手を、出すなと、言ってんだろうがッ」


 怒りで口調が荒れるほど心外だったのだろう、気持ちはわからなくないが。

 そんなことを考えていると一眼鬼は手に持っていた棍棒を俺に向かって、勢いよく振り落とす。

ここまで来るのがやっとな人間なら避けることはできないだろう。

 巨大樹の森に棍棒を叩きつける音が辺りに響き渡る。

 

 「・・・どうだ。オラにかかれば・・・・・・ああっああああああああああッ!」


 俺を殺したと勘違いをしていて、喜んでいたのがムカついたので自慢の両腕を切り飛ばしてやったら大声で喚くので正直うるさい。


 「オラの、オラの腕をよくも!!!!」

 「・・・煩い、さっさと消えろッ!」


 これ以上聞いていると、頭が可笑しくなりそうなのでさっさと首を落とすと漸く静かになった。

武御雷を鞘に戻しながら、アラクネの方を向くと何故か土下座している。


 「おい、何をやってんだ」

 「あの巨人族には手を焼いておりまして、それをいとも簡単に屠った貴方様には私の命を預けるには十分かと思いました。どうか、私を主様の従魔に」

 「・・・分かった。こちらとしても願ったり叶ったりだ。まずは回復だな「エクストラヒール」」

 

 切り飛ばした足を魔法で回復していく。

ついでに体力も回復していくので便利な魔法である。


 「おお・・・・・・!」

 「次に契約をするか。貴方に名前を与える」

 「はいっ!」

 「そうだな・・・「牡丹」でどうだ?花言葉は王者の風格」

 「ありがとうございます。大切にさせていただきます」


 彼女に「牡丹」の名前を与えると、光の繭に包まれた。

恐らく最適化をしているのだろう、どれ位時間が掛かるか分からないが様子を見るしかないと思っていたが。

 

 「?もう終わったのか?」

 「そのようです」


 光の繭が徐々に解けていき、中から牡丹が出てくる。

全体的な大きさは変わらないが、内側に感じる力は最適化前よりも強くなっていた。


 「おはよう、牡丹」

 「はい、おはようございます。主様」

 

 最適化が終わった牡丹を神眼で見てみると。


 名前:牡丹

 種族:ギフト―トクイーンアラクネ

 性別:女性

 ランク:魔王種

 年齢:178歳


 スキル:暗殺術LV10

     弦術LV10

     体力強化LV10

     魔力強化LV10

     身体制御LV10

     痛覚耐性

     状態異常毒・麻痺

     裁縫LV7

     跳躍LV10


  魔法:水魔法LV5

     土魔法LV7

     闇魔法LV6

     生活魔法

       


 種族スキル:隠密LV10

       複合感知LV10

      

 固有スキル:死毒攻撃

       魔力糸


 元のスキルを見ていないからどこまで上がっているか分からないが、全体的に上がったと考えたほうがいいだろう。

 暗殺術は毛針などを、弦術は糸を使った攻撃をする時に補正が入るようだ。

普段は隠密と複合感知など使って狩りをしていたのだろう。


 「取り敢えずは牡丹、人化の魔法を教えるから使ってみてくれ」

 「はい、主様」

 「イゼルナ、牡丹、帰ろうか?」

 「「はいっ!」」


 二人の返事を聞いた後、俺はゲートを開いて屋敷に帰っていく。

牡丹を見た、メイドたちを落ち着かせるのに骨が折れたがある意味仕方ないだろう。



                       




 異世界で従魔にすることが多いアラクネ登場。

何時も読んでくれている皆様には本当に感謝です。

 これからも修正点・感想・ブックマークお願いします。


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