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第26話 引っ越し完了と呼び出し二度目と自爆

 父さまの高笑いが屋敷に響いた翌日。

 

 「旦那様、お屋敷の準備が整いました」

 「分かった。今準備するよ」


 ラベージが昨日完成した馬車で迎えに来てくれた。

 それを聞いた俺は、父さまと母様たちに声をかけていく、残念ながら兄さま達は既に学園に行っており屋敷にはいない。


 「父さま、屋敷の準備が整ったので一度見てもらえないでしょうか?」

 「・・・そうか、遂に引越しか。グレースやニーナも連れて行こう」

 

 その後、玄関に集まった父さま達はラベージが乗って来た馬車に乗り込むと、中の設備に驚いていた。

 王都に来る際に乗ったことのある父さまとニーナ母様はそれほどでもなかったが、初めて乗ったグレース母様は目を輝かせている。

 

 「素晴らしいわ、ケネス。これ程の馬車を一体どこで購入したの?」

 「いえ、グレース母様。この馬車は自分で造りました」

 「・・・・・・造った、この馬車を?」

 「そうだ、グレース。今ある家の馬車もケネスに改造されている。しかし、この馬車の方が価値としては上になりそうだな」

 「分かりますか?」

 「ああ、外装はミスリルで内部はトレント材だ。これだけでも白金貨がいくら必要か大体わかる」

 「本当ね。でも確かケネスが参加したスタンピードの時にはトレント系の魔物はいなかったはず、良く手に入ったわね。ケネス」

 「いえ、それは・・・何というか」

 「皆様、そろそろお屋敷に到着します」

 「・・・後でお話があります」

 「・・・は、い」


 丁度いいタイミングで馬車が屋敷に到着して、この場での追及は回避したが、この後どう切り抜けるか考えないと。

 父さま達の案内をラベージに任せて、俺は二階の自室に向かう。

 部屋の中は豪華さよりも質の高さを重視した物で、嫌みがない。

 

 「確か、隣の部屋が妻用の部屋だったはず」

 

 室内にある隣の部屋への扉を開けると、そこには既に家具が配置されていた。

 俺は慌てて戻り、自室から廊下に出ると近くにいたメイドに声をかけた。

 

 「済まない。この部屋には誰かが寝泊まりしているのか?」

 「いいえ、こちらは旦那様の奥様のお部屋になりますのでわたくしどもは使用はしておりません」

 「家具なんかも置かれているから気になってな」

 「昨夜、遅くに執事長と運び込んだのを覚えておりますが」

 「・・・分かった。ラベージに確かめてみる」


 彼女と別れるとラベージを探しに屋内を歩いていく。

 一階に降りて食堂に向かうと話し声が聞こえてきたので中を見ると目的の人物がいた。


 「ラベージ、ここにいたのか」

 「これは旦那様、良い所に。先ほど陛下からのお手紙が来られました」

 「・・・陛下から」

 「こちらに、なります」


 受け取った手紙には、確かに王家の蝋封が押されている。

 あまり見たくはないが、仕方なく中身を取り出して目を通すと書かれていた内容に呆れた。


 「・・・こうも呼び出しが多いと、さっさと「ゲート」を付加した鏡を設置した方がいいな。・・・変わらないか」

 「なるほど、では馬車の用意をしておきます」

 

 ラベージは一礼をすると馬車を用意するために食堂を後にする。

 結局、聞きたかったことを聞けなかったがあとで聞けばいいか。


 「では、父様、母様。陛下に呼ばれましたので王城に行ってきます」

 「ああ、失礼のないようにな。何かあったら遠慮なく聞いてくるがいい」

 「私たちは、もう少ししたら帰りますからね」

 「いってらっしゃい、ケネス。何時でも家に来ていいからね」


 父さま達に挨拶をして、玄関に向かうと既に馬車の準備は出来ていたのでイゼルナと馬車に乗り込むと王城に向かって走り出す。

 貴族街を抜けて、王城が見えてくるが門番達からの誰何は無かった。

 恐らく、ラベージの顔パスがあったのだろう。流石、元王族のお世話係。

 何度か案内された応接室でラベージ達と待っていると、陛下たちが入って来たので立ち上がり頭を垂れる。


 「構わんよ、今日は私的な用事だ。まあ、座ってくれ」

 「陛下、今日はどのようなご用件でしょうか?」

 「・・・うん、実を言うとな。お主の家にあるトイレ、あれと同じ物をいくつか作って欲しいのだ」

 「・・・・・・はい?」

 「王城内もそうだが王都でも、このことをどうしようかと長年頭を悩ませておったのでな。改善できるのなら是非ともしたかったのだ」

 (なんで、陛下がトイレのことを知っているんだ?情報が早すぎ・・・る?)


 なんとなく情報の出所が、分かった俺は流したであろう人物に視線を向けた。

 ラベージの視線が若干動いたのを見た俺は大きくため息を吐きたくなるが、堪える。


 「陛下、トイレにつきましては今度トーラス商会で売りに出すことが決まっていますが・・・サンプルとしていくつか設置していきます」

 「うむ、では頼む」


 断ろうしたら王妃様から底冷えするような魔力を感じたので、商会に卸すのとは別に作った物を設置することにした。

 陛下も冷や汗を掻いているから、もしも断ったらどうなるか分かったものではない。


 「それと、こちらが「ゲート」を付加した大鏡です。どちらに運びましょうか?」

 「それなら、エステリア用の客間に設置しよう。ラベージ、後で案内を頼む」

 「畏まりました」


 その後、いくつかのお菓子を置き土産として辞するとラベージの案内でエステリア王女の用の客間に歩いていく。

 応接室にはリアの姿は無かったので、ラベージに聞いてみるとこの時間なら図書室にいる可能性が高いという。

 後で顔を出そうと考えている内に、目的の客間に着いたので大鏡を設置していく。

ついでに、魔力承認で起動するように術式を組み込み、特定の人物以外は通れないようにする。

 今の所通れる人間は、俺とリアをはじめ屋敷の使用人達に限定したので登録していない人は通ることが出来ない。

 既に屋敷の客間には対となる大鏡を置いてあるので、「ゲート」を発動して大鏡を潜ると客間に出たので問題なく使えることが確認できた。


 「これで、一つ目が終わった。後はトイレの設置か」

 「では、案内いたします」


 それからラベージの案内で、主に王族などが使うエリアのトイレを新しいトイレに変えていく。

 時折メイドさん達から感謝のお礼を言われたりすると、王城の人たちがどれほど我慢していたのかがわかる。


 「・・・・・・終わったぁ!!」

 「お疲れ様です。旦那様」

 「お疲れ様です。主」

 「さてと、陛下に報告をして帰ろう。余計な用事を頼まれる前に」

 「畏まりました」


 苦笑するラベージの案内で陛下のいる執務室に歩いていく。

 途中窓の外を見ると、訓練場と思われる場所で兵士たちが掛け声と共に槍を突いたり、振り下ろしたりしているのが見える。同じ動作をこなしている様子は、さながら機械か民芸品のようだ。

 彼らの前に相手となる標的や人間がいればまだいいが、これではただの素振りでしかない。

槍術のスキルを習得するのにいったいどれだけの時間が掛かるのだろうか?

 そんなことを考えていると、陛下の執務室に到着したようだ。


 「こちらで御座います。・・・ケネス=フォン=ホラント男爵です、ご依頼の完了報告をしに参りました。陛下に取次ぎをお願いします」


 扉に待機していた近衛騎士に要件を伝えると、一人が中に入り確認に行く。

 しばらくすると。


 「確認が取れました。中にどうぞ」

 

 近衛騎士に案内されて中に入ると、忙しそうに仕事をしている陛下がいた。

 流石に見られたらまずい書類は伏せてあるが。

 

 「早かったな。もう終わったのか?」

 「はい、主に陛下たちがお使いになる場所を中心に設置してきました」

 「ご苦労だった。・・・この後はどうするのだ?」

 「屋敷に戻ろうかと思います」

 「そうか・・・ならば、リアに会ってから帰ってくれないだろうか?恐らく、図書室に籠っているだろうから。もしも、お主のことを知らせていなかったら・・・儂はっ!ワシはっ!」

 「で、はっ!失礼しますっ!」 

 「いったい何だったんだ?先程の陛下の豹変は?」

 「リア様に冷たくされると、ああなりやすいのです。以前三日間ほど口を聞いてもらえなかった時など仕事になりませんでした」

 「・・・気を付けたほうがいいか?」

 「この場合の殆どは、陛下に原因がありますのでお気になさらないでよろしいかと」

 「では旦那様、図書室はこちらで御座います」

 「ああ、頼む」


 未だに執務室から声が聞こえるが気にせず、ラベージが先行する形で王城内を歩いでいく。

 訓練場が見えた場所を通るので、再び外に目を向けると、槍の訓練をしていた兵士たちが今度は走り込みをしていた。

 

 「こちらで御座います。旦那様」

 「ありがとう」


 中に入ると古い図書室特有のにおいが鼻を擽る。

 室内は薄暗く、背の高い本棚には隙間なく本が置かれているのを見ると、その所有する本の量に驚きが隠せない。

 奥の方に歩いていくと、もう一つ扉があった。

 恐らく、ここの本を読むための場所が設けられているのだろうか?

 確認の為にノックをすると、


 「どちら様ですか?」

 「ケネスです。ケネス=フォン=ホラントですが」

 「・・・どうぞ」


 一拍の間を置いて、許可が下りたので中に入ると、そこには優雅にお茶を飲みながら読書をするリアの姿は無く、積み重ねられた大量の本・ホン・ほんの山が聳え立ち、その間にリアの姿が辛うじて見えた。

 この読者スペースはほぼリアの私室扱いになっているのだろう、所々に私物が見える。


 「陛下にリアがここにいると、お聞きしたので」

 「・・・来てくれて、嬉しい。でも、先に言ってほしかった。ここ、散らかっているから」

 「の、ようですね。ですが、今日ここに来たのも急遽陛下に依頼された、王城のトイレの交換とリアの客間に「ゲート」を付加した大鏡を設置する仕事を行うためでしたので、先触れを出せませんでした」

 「・・・それなら、仕方ないかな。・・・お父様、今日から五日間ほど口を聞いてあげませんから」

 「「・・・・・・」」

 「ほっほほ」


 俺とイゼルナは苦笑して、ラページは笑っていた。

 彼女が読もうとしていた本を読んでみる、どうやら魔法に関する物のようだが、ここにある本はどれも同じ事しか書かれていないようである。

 書いた人や時期などである程度違いはあるが、大まかな内容は同じであった。

 これなら、屋敷にある方がまだいいだろう。


 「リア、ここにある物よりも私の屋敷にある本の方が参考になると思いますが、どうでしょうか?参考までにこれを貸しますので」

 

 俺がアイテムボックスから一冊の本を取り出す。

 タイトルは「魔法の基本 初級編」であるが作者が魔法神のヘニル様となっている。

 実際、俺もこの魔法書にはお世話になっているのだ。加護はあくまでも魔法を習得しやすくしたり、魔力量を強化したりするだけなのでどんなことが出来るのか手探りだった時にヘニル様がくれたのだ。

 初級編の内容は、魔法制御や発動する上での気を付けることなど基礎的な物しかない。

 しかし、忘れがちなことなどもある為に教科書としては最高の物である。


 「・・・ありがとう。・・・・・・っ!!これ、本当に借りていいのっ!」

 「ええ、続編も屋敷にありますので」

 「・・・分かったっ!明日、必ず、貴方の屋敷に行きます」

 「構いませんよ。渡したい物もありますので、どうぞ」


 それだけ言うとリアは本の虫になってしまったので、俺たちは彼女の侍女に後を任せて帰ることにした。

 帰りの馬車の中でラベージが爆弾を落とす。


 「旦那様も中々隅に置けませんな」

 「何のことだ?」

 「あれほどに、外堀を埋められるのを嫌っておりましたのにご自身で門をお開きになるとは」

 「え?・・・っ!!」


 あれ?そういえば、リアが屋敷に本を読みに来る=王族が一貴族の屋敷に入り浸る=周囲に関係を仄めかす。

・・・・・・ヤバくない?

 でも本を読みに来るだけだよ。

王城に本を持って来て渡すなら、セーフだけど。自分の屋敷に連れてくるは、アウト。

 何もなかったと証明しづらいし、まだリアとの婚約は公にされていない。


 「・・・どうしよう」

 「愚考するに、リア様にはゲートを使って貰い、王城とお屋敷の行き来をしてもらった方が穏便にできるかと思います」

 「確かに、大鏡を設置した部屋は王家の人間と近衛騎士ぐらいしか普段いない場所。大丈夫?か」


 屋敷に到着するまでどうすればいいか話し合ったが、結局自分の言葉には気を付けようと考えた。







 これまで読んでくれている皆様には本当に感謝です。

感想や修正点、ブックマークをよろしくお願いいたします。

 


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