第24話 金策と執事と装備更新
明くる日。
「トーラス商会の会頭をしています。トーラスと言います。本日はよろしくお願いします」
そう挨拶してきたのは30~40代くらいの立派なお腹をしている貫禄あるおじさんであった。
イゼルナが後ろにいるがしっかりとこちらを見ているから信用は出来そうである。
「ケネス=フォン=ホラント男爵です。こちらこそどうぞよろしく」
「・・・ケネス男爵と言いますと、先日爵位を賜ったあの」
「ええ、その時に貰った屋敷の内装などをどうしようかと思っていたところでアーヴィング卿からあなたを紹介して貰ったという事です」
「それはそれは、光栄なことです。全力を挙げて頑張らせてもらいます」
「それでは、私の屋敷に行きましょう」
トーラスさんの乗って来た馬車の前を俺が乗った馬車が先導するように走っていく。
やがて、到着するとトーラスさんは目を大きく見開いた。
「ここがそうなのですか?以前見た時よりも綺麗になっておりますな」
「そこは、私が魔法で少し」
「・・・なるほど、そのお年で爵位を賜るという意味が分かりました」
俺たちが屋敷内に入り、中をそれぞれ見ていく。
しばらくするとトーラスさんが困った顔をしてこちらに来た。
「ケネス様、申し訳ありませんがトイレをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ。そこの角を曲がったところにありますので」
「では、失礼します」
彼がいそいそとその場を去るって、暫くするとものすごい形相をして飛んできた。
「ケっケネス様、あ、あのトイレは!ど、どこでお買い求めになられたのですか?」
余程慌てたのかズボンがちゃんとしまってない、あと顔が近いから離れろ。
「あれは自作した物ですよ。魔法で便器を作り、生活魔法の術式と魔石を付けた魔道具ですね」
「・・・なんと、ケネス様は戦闘の他にもこのような才能をお持ちとは」
「そんなにすごいものですか?」
「それはもう。あれは革命ですよっ!やはり私の目に狂いはなかった。是非ともあれを商品化して売りましょう」
「構造自体は簡単ですが、術式を刻むことはできますか?」
「ベースとなる物をお預かりできればできますが、不躾なお願いをしてもよろしいでしょうか?」
「何でしょうか?」
「私どもの生産ラインが出来るまででよろしいので、いくつか製作をお願いしてもよろしいでしょうか」
「構いませんよ。どれくらい作りましょうか?」
「そうですな。100は欲しいかと、それとは別に一定時間が来ると「クリーン」が発動する魔道具は作れないでしょうか?」
「この便器には魔石と粘土そして火山地帯で採取できる石があれば量産は可能です。魔道具に関しては試してみないことには何とも」
「なるほど、では直ぐに手配を」
「待って下さい。私が作る100個に関しては材料は足りていますから大丈夫です」
今すぐにでも店に戻りそうな彼を止める。
取り合えず二階のサロンに残っていたテーブルとソファーに座り、契約書を書いていく。家具をお願いしようしていたのに何故こうなったのだろう?
「ではこちらが、契約証になります。私どもが販売した魔道具・ソロバンの売り上げの一割がケネス様に入るという事で宜しいでしょうか?100個の分は別途支払いますので」
「・・・大丈夫です。これでお願いします」
「それと家具につきましては、後日改めてお伺いに参ります」
まあ確かに相談すべき執事がいなければ話が進まないのも確かだし、仕方ないか。
契約証にサインをするとトーラスさんは急ぎ足で帰っていった。
おそらくこれからギルドに材料を発注しに行くのだろう。商魂が彼の中で燃えていたのだろうか?
勿論、口止めはきちんとしておいた。
「はぁ、ため息しか出ないがさっさと依頼を終わらせるか」
このままこうしても仕方ないのでとっとと作ってしまおう。
実際問題一度は作った物なので、量産自体は簡単である。
ただ、一定時間が経過で「クリーン」が発動する魔道具はどうしようか?
少し考えると意外とあっさりと構想が出来たので早速作ることにした。
要は時空間魔法を応用すれば良かったので難しくはない。
それからあっという間にトイレ100個とクリーンの魔道具5個を完成させる。
「取り合えず、注文の品は出来てしまった。しかし、直ぐに持って行くと怪しまれるから明日持って行くか?」
「主、明日でも早いですから。せめて3日は開けませんと」
3日でも早すぎるのだが、ケネスと行動を共にした時間が長いからか何処かずれた答えを出すイゼルナ。
しかし、この場にそれを止める者はいない。
目的を果たせなかったが金策が出来たと思い、実家への帰路についた。
家へと帰ってくると玄関ホールで父さまが誰かと話していた。
「・・・只今戻りました」
「ケネス、どうしたんだ?疲れた顔をして」
「聞かないでください」
「まあ、いいだろう。丁度お前の執事候補が来た」
「お初にお目にかかります。わたくしはラベージと申します」
そういって頭を下げたのは、50もしくは60代くらいの黒の礼服を身を固めた白の髪と髭の老人だったが、齢を感じさせない動きをしている。
「彼は元々陛下たちの世話係をしていた人だ。執事としては申し分ないぞ」
「ええっ!」
王族の世話係をしていた人がなんでっ!
「いえ、寄る年波には敵いませんのでこの度お役目を息子に譲ったので、残りの人生をどうしようか考えている所にエステリア王女殿下からお誘いを受けまして。実の孫のように思っていた王女殿下をお救い頂いた恩人に仕えるのも悪くないと思いまして」
なるほど、リアからの推薦があったのか。
だけど、外堀を埋められていると感じるのは気のせい・・・じゃないよな。
「いかがでしょう。雇ってもらえるでしょうか?
「こちらとしては不満はありません。・・・しかし、いいのですか?ここよりも条件に良い家はあるはずですが?」
「いいえ、こちらでお世話になりたいのです。よろしくお願いします」
再び頭を下げるラベージさん。こちらとしても断る理由がないのでお願いすることした。屋敷の管理や人選などをしてもらうことになった。
部屋に戻り、ラベージさんと今までの情報を共有していく。
管理している村は実際に「ゲート」を付加した大鏡を通り抜けて見せると大変驚いていた。
翌日、ラベージさんに家具や屋敷に必要な数の使用人の手配をお願いすると、早速トーラスさんの商会に向かって行った。
納品は明後日なので、これまでやれなかった装備の更新をしようと考え、自宅(予定)の屋敷の横にある建物の中に入っていく。
元々倉庫か何かだったようで中はかなり広く、少々の音が響いても問題は無いのでここを鍜治場兼工房にしようと考えたのだ。
アイテムボックスから必要な道具・材料を取り出していく。
「イゼルナはどんな武器が一番使いやすい?」
「剣でしたらレイピアのような細剣、槍でしたら二メートルくらいの、弓なら長弓でお願いします。あとはナイフなんかを一本か二本ほど」
「わかった」
鍛冶の加護の知識で必要な素材をアイテムボックスと創造魔法で用意していく。
今回武器の素材として選んだのは、魔力の親和性が高めの魔法鋼と少量のミスリル、それに風属性の魔石の粉である。
以前からミスリルで作った剣を使っていたが、耐久性に問題があったために合金を試してみることにしたのだ。加護の中に製造知識にもあったので間違いはない。
創造魔法で錬金術のスキルを創って合成を行ない、出来上がった物を神眼で見てみると、
魔法鋼合金(風属性):魔法鋼とミスリルと風の魔石を錬金術で合成した物
風魔法耐性(小)風魔法強化(小)俊敏性強化(小)
・・・もしかしたら、凄いものが出来たのかもしれない。
配合の割合のせいか、能力強化値は低いがそれでも素材の段階で3つの強化が付いたのはすごいことだろう。
錬成した合金は薄い緑色の色がついている金属で、まずお店で見たことがない。
ミスリルを多くしたり、魔石の質などを変えれば強化値がさらに上がる可能性もある。
そう考えた俺は、先ほどとは逆に割合を反対した物を錬成していく、すると。
ミスリル合金(風属性):ミスリルと魔法鋼と風の魔石を錬金術で合成した物。
風魔法耐性(大) 風魔法強化(大)俊敏性強化(小)
なるほど魔力の親和性が最も高いミスリルならこうなるのか、では配合をミスリルからアダマンタイトに変更した場合はどうなるのだろうか?
素材をミスリルからアダマンタイトに変えて合成した物を再び鑑定すると、こうなった。
アダマンタイト合金(風属性):アダマンタイトと魔法鋼と風の魔石を錬金術で合成した物。
風魔法耐性(中)風魔法強化(中)敏捷性強化(大)
魔法の親和性はミスリルより低いから魔法強化などは一段落ちるが俊敏性強化はミスリルよりも高い。
これならアダマンタイト合金は近接武器や足回りに、ミスリル合金は防具にと使い分ければ問題はないと思う。
あとは各属性でどんな効果があるかを確かめてみるか。
いくつか合成した物を神眼で確認していくと・・・
・風属性は俊敏性強化
・火属性は攻撃力強化
・水属性は魔力強化
・土属性は防御力強化
となった。
複数の属性を合成することもできるようだが、反発属性は合成が出来ない。
水属性+風属性=魔力強化+俊敏性強化
火属性+土属性=攻撃力強化+防御力強化
無難な所ならこの二つしかないが、雷属性は風の上位互換として、氷属性を水の上位互換と考えて合成していくと、
・ミスリル合金(水・氷属性)
ミスリルと魔法鋼の合金に水と氷の魔石を錬金術で合成して出来た物
(水氷属性魔法強化・水氷属性魔法耐性・魔力強化特大)
・ミスリル合金(風・雷属性)
ミスリルと魔法鋼の合金に風と雷の魔石を錬金術で合成して出来た物
(風雷属性魔法強化・風雷属性魔法耐性強化・俊敏性強化特大)
合成前から思っていたことが現実になってしまった。
どう考えてもヤバすぎるだろっ!これっ!
ただ、複数の属性を持つ素材が出来たのだから、身内の装備にはこれを使って整えていくか。
ここで妥協して、後悔はしたくないし。
そう考えて、俺は水と風、火と土の組み合わせの合金を大量に合成するとようやく本格的な作業に入る。
まずは、イゼルナの細剣から作っていく。
アダマンタイト合金(氷)を土魔法で細剣の形にして、火魔法と水魔法で焼き入れと冷却をする。
出来上がった刀身にナックルガードと拵え、そして「自動修復」「斬撃強化」「刺突強化」のエンチャントを施して完成。
神眼で鑑定してみると。
・氷細剣「ラヴィーネ」
卓越した魔導鍛冶師が製作したアダマンタイト合金(氷)製の細剣。 細い刀身は両刃で鋭く、刺突と斬撃など攻撃性が非常に高い。魔力を込めると氷属性魔法を纏う。 魔法触媒としての機能もある。
「氷属性強化」 「氷属性耐性強化」「自動修復」「斬撃強化」「刺突強化」
実際に魔力を込めてみると刀身が青白く輝いてきた。
試しに適当な木材をアイテムボックスから取り出して、切りつけてみる。
たいした力を籠めることなく両断することが出来き、表面を見ると薄く氷が張っていた。
「イゼルナの剣、出来たよ」
「ありがとうございます、主。・・・ですが、一つお聞きしてもよろしでしょうか?」
「何?」
「どうして、属性が氷なのでしょうか?」
それを聞かれた俺は、言葉を詰まらせる。
どうして氷属性にしたのかというと、以前イゼルナが絡んできた冒険者を氷漬けにしたとき、周りから「氷の女王」と言われたことを覚えていたからであった。
PV11万突破っ!
読んでくれている皆様には本当に感謝です。
これからも感想・ブックマーク・修正点などありましたらよろしくお願いします




