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第17話 連絡・相談

 

 俺たちの馬車に伝令が来ると、護衛の騎士たちと共にエステリア王女殿下は先に王城に向かった。

それを追いかけるように進んで俺たちも王城へと入っていく。

 馬車から降りると城のメイドたちに案内をされて応接室の一つに案内をされる。

出されたお茶を飲みつつ、父カインと待っていると部屋に誰かが入って来た。

 先頭に国王陛下が入ってくるとエステリアと同じ髪色をしている女性と文官の格好をした男にそしてエステリア王女殿下が入ってくる。


 「良い、ここは謁見の間ではないのだ。皆、座られよ」

 「はっ」


 一度に10人くらいが座れそうなソファーに先に陛下が真ん中に座るとそれぞれが座り始める。

俺は国王陛下の対面に座るように勧められた。

 メイドたちが全員の紅茶を用意し、一礼をして退室していくと陛下が口を開く。


 「揃ったな。まずは、ケネスよ、エステリアを助けてくれて本当にありがとう」

 「本当にありがとうね。私は王妃のアンゼリカ=ローレンシアよ」

 「私は宰相を務めております、ライナード=フォン=アズライトと申します。此度は王女殿下をお救い頂きありがとうございます。ケネス殿」


 カランド陛下がお礼と共に頭を下げると、それに倣うように宰相と王妃様も頭を垂れる。


 「陛下、王妃様、宰相様、どうか顔をお上げてください。自分は人として当然のことをしたまでです」


 陛下たちが揃って顔を上げる。


 「これは、王としてではない。一人の親として礼をしたかったのでな。それでは今後の話をしよう」

 「今後ですか?ですが、その前に今回のエステリア王女殿下暗殺未遂の証拠の品として魔物寄せのサンプルを提出したいのですが」

 「それでしたら、こちらの容器に入れてください。この容器には「密閉」のエンチャントが施してありますで」


 ライナード宰相が使用人から30センチ四方の箱を受け取ると俺の前に置く。


 「では、こちらがそのサンプルです」

 「・・・確かに」


 これで証拠品の提出は完了したので陛下が口を開く。


 「ご苦労だった、後はこちらで調べよう。それと今回の活躍を評価してお主にに爵位を渡そうと思う。報酬として白金貨20枚と王都の屋敷を与える、それと娘のエステリアとの婚約者とするが受けてくれるな」

 「お待ちください、陛下。ケネスはまだ齢七歳です。成人していない者を貴族にすることは前例がありませんがよろしいのですか?」


 カインは陛下に問いかける。


 「構わん。Sランクの魔物を単独で撃破し、回復魔法も使えて尚且つアイテムボックスも修得している。おそらく加護も持っているだろう、聞くところによると冒険者ギルドではすでにBランクの冒険者でもあるという。そのような優秀な人材を放っておくほど我が国はお人よしではない」

 「それは・・・確かに。しかし、エステリア王女殿下の婚約はなぜでしょう。王族と男爵では」

 「それも問題はない。ギルドに確認したところ、ケネスがこの王都にあるギルドに行けばAランクに昇格できるという。Aランクは男爵と同じ扱いを受けることができるのだ、このままランクを上げて行き伯爵と同じ扱いをするSSランクになれば王族との婚姻も可能だ」

 「ケネス殿が男爵になっても仕事に就くことはありません。まだ学園にも通っていませんからそちらの方を優先された方がいいかと思いますが、陛下」

 「そうだな、ライナードよ。で、どうだケネスよ。受けてくれるな」


 国王陛下はこちらに視線を移すと無言の圧力をかけてくる。

 以前戦ったオーガよりもその圧力は強いがファレストドラゴンほどではない。


 「エステリア王女殿下との婚約と過分な報酬、誠に嬉しく思います。ですが、私は辺境伯領の一角をお借りして新しい農法を試験運用中ですので王都に屋敷を構えて長期滞在することはできません」


 陛下の提案という威圧に屈することなく言葉を口にするとカランド陛下は驚きの表情を見せ、隣に座るカインは冷や汗をかきながら胃がキリキリ痛むのを我慢している。

 

 「ほっほほう。新しい農法か、それはお主にしか出来ないのか?代官を立てて報告を受けるようにすればいいのではないのか?」

 「今行っているやり方は、既存の農法とは異なるために私が現場で指揮を執りたく思います」

 「して、どれくらいの期間がかかるのだ?」

 「現在は二年目ですので、あともう二年はかかります。四年で一周の農法なのです」

 「・・・成果のほどはどうなのだ、カイン卿」

 「生産力が低下した村で行っておりますが、昨年は例年より少し収穫が増えており、今年はそれ以上のものが望めるかと思います」

 「・・・そうか」


 陛下は目を瞑り両手を組ように考えを纏める。

しばらくして考えがまとまったのか口を開く。


 「その新しい農法も気になるが、エステリアの婚約も儂にとっては大事だが」

 「付きましては陛下に提案があります」

 「何かあるのか、ケネスよ」

 「ご説明前に、陛下。ここで魔法を行使してもよろしいでしょうか?」

 「どのような魔法だ?」

 「移動系魔法です」

 「・・・よかろう」

 「では・・・「ゲート」ッ」


 時空間魔法の中位にあたる移動魔法を部屋の中に、展開する。

下位魔法として「転移」があるが、移動に関してはこちらの方が都合がいい。


 「こっこれは、まさか「ゲート」かっ!城の文献で読んだことはあるが、実際見るのは初めてだ」

 「・・・これが、「ゲート」ッ!」

 

 親子そろって初めて見た魔法に興味津々の様子で、二人の横顔が瓜二つで思わず苦笑してしまう。

宰相のライナード卿もそう感じたのか、あちらも小さく笑っていた。


 「陛下、この魔法を使うことにより王都と村を行き来きが容易にできるかと思います」

 「うむ、・・・だが、しかし」

 「王女殿下も自由に移動できるように、大きな姿見にこの魔法を付加しておくというのはどうでしょうか?設置場所ついては王宮内の客室又は報酬としていただく王都の屋敷と村のある屋敷で」

 「それはいいなっ!是非そうしてくれ」


 陛下が納得したので、魔法を解除して席に座る。


 「では陛下、今回のケネス殿の報酬についてはこれでよろしいでしょうか?」

 「そうだな、ライナード。報酬に関してはケネスに男爵位を与えて、エステリアとの婚約と白金貨20枚にAランク昇格許可証、そして王都に屋敷を与えるという当初の内容で問題はないだろう。それとケネスよ、お主に依頼がある」

 「どのような依頼でありましょうか?陛下」

 「その新しい農法を纏めた物を王城に提出するというものだ。どうだ?」

 「分かりました。では、出来次第お渡しいたします。」

 「うむ、では頼むぞ。・・・それにしてもケネスよ、お主は本当に七歳か?」

 「それはどういう意味でしょうか?」

 「いやなに、お主の背丈が学園に通っている者たちと遜色なくてな」


 陛下が気になるのも無理はない。

確かに俺の身長は七歳の平均を過ぎていて、十歳から十二歳ぐらいの背丈になっている。

 こうなった訳は、以前イゼルナから聞いた話を試したからに他ならない。


 「私の専属メイドをしている者から少し前に聞いたのです。高ランクの魔物を食材とした料理を食べ続けると成長が早くなるという考えがあったそうです。しかし、高ランクの魔物を狩り続けることが困難な為に実証はされていません」

 「なるほどな、しかし実証はすでにお主がしているようなものだな」

 「そう・・・ですね」


 この為にむやみに高ランクの魔物を狩る依頼をしないように陛下たちには他言無用をお願いする。

爵位を与える式典を明日行うようなので、父さまと俺は王城に泊まることになってしまった。

 その後、父さまと客室に案内されてくつろいでいるとカインが口を開く。


 「やれやれ、とんでもないことになったな。まさかお前が兄弟の中で一番に出世するとはな、何があるかわからんものだ」

 「すみません、父さま」

 「いや、怒っているのではない。自慢の息子だと、私は誇らしく思うよ。それと王女殿下との婚約おめでとう」

 「ありがとうございます」

 「ただ、お前が陛下からの報酬に関して意見した時には、冷や汗を掻いたよ」


 ははっはと笑っているが空しく聞こえてしまうのは気のせいだろうか?









 次の日の朝、父さまと朝食を摂り終えると執事と数人のメイドたちが中へと入ってくる。

 彼女たちの手には数着の衣服などが見えた。


 「失礼します。ケネス様、謁見用のお召し物をお持ちいたしましたのでこちらにお着替えを」

 「確かに、このままでは公式な場には出れんな。ケネス、ここはいいから着替えてきなさい。私は一足先に向かっているから」

 「分かりました。ではお願いします」

 「畏まりました」


 彼らは素早くサイズを確かめると、テンポよく着替えさせていく。

 あっという間に着替えが終わると執事を除いたメイドたちは退室していった。


 「あと少しで謁見の準備が整います。なにかございましたら、なんでもお聞きください」

 「あの・・・謁見のやり方がわからないのですが」

 「確かに七歳ではお披露目はありますが謁見のは珍しいですから、謁見の間に入りましたらそのまま真っすぐに進んでいただき絨毯の切れ目の所で片膝をつき、手を胸に当てて頭をお下げください。その後は、その場ごとにお声が掛かりますので大丈夫かと思います」

 「ありがとうございます」

 「そろそろよろしいでしょうか。ケネス様、ご案内いたしますのでこちらへ」

 「よろしくお願いします」


 執事は一礼をすると俺を案内していく。

長い廊下を歩いていくと大きな扉の前に立たされる。

 やがて扉が開かれると中に入っていくと左右には貴族と思われる人々が並んでいた。

 彼らの中には父カインの姿もある。

 奥へと進み絨毯の切れ目まで進むと片膝をついて頭を下げた。

 

 「面を上げよ」


 正面から陛下の声がかかる。

 言葉に従い顔を上げると、正面の玉座に座った陛下と王妃様の姿があり、その周りには二人の子供たちが立っていてエステリアもその中にいた。

 貴族の列から宰相のライナード卿が前に出ると今回のことについて述べ始める。


 「この度、エステリア王女殿下がジャイアント・センチピードを含む魔物の群れに襲われた」


 その内容に謁見の間にいた貴族たちは一斉にざわめく。


 「その時、そこにいるケネス=フォン=ホラントは自ら死地に飛び込むと地蟲100を瞬く間に討伐し、ジャイアント・センチピードも彼が単独で討伐した。さらには重症の負った騎士たちを魔法で癒して王都まで行動を共にしてくれたという」


 目の前にいる子供がSランクの魔物を単独で倒したことに貴族たちはまたもざわめく。


 「そこで報酬を与える。陛下、よろしくお願いします」


 宰相が説明を終えると国王陛下は頷く。


 「ケネス=フォン=ホラントよ。此度の活躍見事であった。そなたがいなければエステリアはここにはいなかったであろう。よってケネス=フォン=ホラントに男爵位を授ける。また白金貨20枚と王都に屋敷を与える」


 ジャイアント・センチピードの時よりも大きな声で貴族たちは騒ぎ始める。

 未だに騒ぎが収まらない貴族の列から一人の肥満体の男が前に出てきた。


 「おっお待ちください、陛下。いくら何でも七歳に爵位を与えるなどあり得ませんぞ、お考え直しを」


 この人は反対のようだ、よく見ると貴族の中に頷く人間が何人か見て取れる。

だが、陛下の意思は固いようだ。


 「黙れっ!イザール侯爵。ならばお前は自ら死地に飛び込み、ジャイアント・センチピードを討伐できるのか?」

 「いや・・・しかし」


 侯爵は未だに反対の姿勢であった。


 「ケネス=フォン=ホラントは辺境伯家の三男であり、嫡子ではない。このような優秀な者が在野に放たれるなどあってはならない。この決定は変えんっ!下がれっ!」


 イザール侯爵は貴族の列へと戻っていく。

 俺のことを忌々しく睨みつけながら。


 「ケネス=フォン=ホラントよ。受けてくれるな」

 「ありがたく、お受けいたします。陛下」

 「では、これにて謁見を終了とする。陛下、ご退出をお願い致します」


 宰相の閉幕の言葉ともに陛下が退室するとそれを追うように他の王族も退室していく。

 他の貴族たちも次々に謁見の間を後にしていくと宰相閣下から声を掛けられる。


 「報酬を渡したいので、別室に案内するから待ってくれ」


 俺は謁見の間を出るとメイドに案内されて、昨日陛下たちと話した応接室に案内される。

 乾いた喉を紅茶を潤していると、カイン父さまが先に入って来た。


 「ようやく終わったな。だが、おめでとう。ケネス」

 「ありがとうございます。父さま」

 「貴族のことでわからないことがあったら何でも聞いてくれ」

 「はいっ」

 「待たせたな」


 扉が開くと陛下たちが入ってくる。

 カイン父さまと立ち上がったが。

 

 「もう謁見は終わった。皆、座ってくれ」


 今回ここに来たのは陛下と宰相だけのようだ。

 二人が座るのを確認して俺たちも椅子に座る。


 「ではこちらが今回の報酬の白金貨20枚に、冒険者ギルドのランクアップの許可証です。あと屋敷に関しては決まり次第連絡をしますので来てください」

 「分かりました。ありがとうございます」

 「今回は本当に世話になった。お披露目会までゆっくりと休んでおくといい」


 陛下の言葉で締めくくるとようやく俺たちは、王都にある屋敷へと行くことができた。

 ただお披露目会に出るだけだったのだが、どうしてこうなったのだかと考えるが答えは出なかった。






 ケネスが貴族の当主に!

 いつも読んでくれている皆様には本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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