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第16話 報告

 護衛の騎士たちから先行した伝令が急いで王城内にある騎士団詰め所に駆け込むと、異変を感じた同僚の一人が声をかけてくる。


 「おいっ!どうした?何があった?」

 「緊急で団長に報告したいことがあります。至急取次ぎをっ!」

 「わかった、ついてこいっ!」


 待機していた騎士と共に、彼は奥へと進んでいく。

詰め所の奥にある団長室に二人が入ると、机の前に座って書類の決裁の仕事をしている男がいた。

 彼こそこの王国騎士団の団長を務めている、ブローム=フォン=フォーランディアだ。

戦時ではないので騎士服を着こみ、慣れる事のない書類整理と格闘をしている。


 「団長っ!エステリア王女殿下の護衛中に、Sランクのジャイアント・センチピードを含む魔物の群れと遭遇しました」

 「何だとっ!それで王女殿下はご無事なのか?」


 突然の報告に手にしていたペンをへし折り、机を叩き立ち上がった


 「はい、ご無事です。護衛の騎士たちも何名かは重傷を負いましたが、全員無事です」

 「?ジャイアント・センチピードはSランクの魔物だ。それに襲われて死者がいないなんてあり得ん。何があった」

 「はい、我々は王女殿下の魔法支援の元で迎撃をしていましたが次第に押され始め、いつ崩壊してもおかしくない状況でしたが、そこへホラント辺境伯家のケネス殿が騎士団を率いて加勢をしてくれました。瞬く間に地蟲を土魔法で串刺しにすると、ケネス様はお一人でジャイアント・センチピードの方へ向かわれました」

 「・・・それで、どうなった」

 「奴の攻撃をかわすと、次の瞬間には巨大な雷がジャイアント・センチピードを襲い一撃で倒しました」

 「なんとっ!Sランクの魔物を一撃かっ!」

 「はい、その後、彼はアイテムボックスにジャイアント・センチピードの死骸をしまうと怪我一つなく戻ってきました。そして我々の怪我を魔法で癒して、後から来たホラント卿と合流して王都までご一緒しました」

 「・・・今、なんと申した。魔法で治した言ったか?それにアイテムボックスだと?」

 「はいっ!立つことさえ難しかった者が一瞬で動けるようになりましたので、間違いないかと」

 「わかった。私はこのことを知らせに行く、ゆっくりと休め!これから私は王城へと向かうのであとは頼む」


 ブローム騎士団長は急いで詰め所を後にすると王城に向かった。







 


 王城の一室である応接室には、複数の人間が集まっている。

 一人は王国の長であるカランド=フォン=ローレンシアと宰相のライナード=フォン=アズライト、そして報告に来た騎士団長のブロームの三人である。


 「報告いたします。エステリア王女殿下を乗せた馬車がジャイアント・センチピードの襲撃を受けた模様です」

 「なにっ!それで娘は無事か?」

 「王女殿下はご無事ですか?」


 思いがけない報告に二人は驚き、机を叩くように立ち上がるとブロームに詰め寄よった。


 「ご無事です。報告ではジャイアント・センチピードと地蟲が凡そ100体はいたようで護衛の騎士たちも善戦したのですが次第に押されていったようです。しかし、王都へと向かっていたホラント辺境伯家のケネス殿が自ら騎士団を率いて加勢を行ない、瞬く間に地蟲とジャイアント・センチピードを討伐し尚且つその死体をアイテムボックスにしまい怪我した騎士たちを回復魔法で治したそうです。その後ホラント卿と合流したあと王都までご一緒したとのことです」

 「なんとっ!そのようなことが本当にあるのか?」

 「・・・ホラント辺境伯家のケネス殿は確かカイン卿の三男で今回お披露目会に出る予定で王都まで来られたはず。なのでまだ七歳のはずですが?」

 「ライナード、忘れたか?二年前のファレストドラゴンのことを」

 「あの信じがたい報告ですか?五歳の少年がファレストドラゴンを討伐したという」

 「そうだ。あの報告書でもホラント辺境伯家のケネスが討伐したとあった。今回もそうであろう」

 「もう一つご報告がございます。これはホラント辺境伯様からですが、今回の件はエステリア王女殿下を暗殺目的の犯行の疑いがあると、それと魔物寄せのサンプルをケネス殿が証拠として採取している模様です」

 「分かった。彼からサンプルを受け取り、調べさせよう」


 二年前の報告受けていた二人は、当時信じられないとことだと考えていたが今回のことであの報告は本当のことであったと確信した。


 「しかし、Sランクの魔物を余裕で屠り、回復魔法を使えて更にはアイテムボックスを持っているか。ライナードよ、このような人材は御伽噺でしかいないと思っていたが」

 「そうですな。得難い人材かと思います」

 「それと、エステリア王女殿下はケネス殿のことに興味を持ったという話もあります」

 「それはいいことを聞いた、あれが異性に興味を持つとは」

 「それでしたら、今回の功績もありますから爵位を授けて独り立ちをさせてはいかがでしょう?それから、屋敷を与えて王都に住まわせいれば人となりが分かりましょう。三男ですから継承権はないと思いますので」

 「・・・うむ。それがよいかもしれんな。だが、一度本人に聞いてみようではないか?」

 「分かりました」

 「陛下、エステリア王女殿下がご到着致しました」


 ケネスへの対応を話していると外に控えている騎士からエステリアが来たことを告げる。

騎士に案内をされて、旅装から着替えた彼女が入って来た。


 「・・・ただいま戻りました、お父様」

 「おおっ!エステリアよ。無事であったか、報告を聞いたときには心臓が止まるかと思ったぞ」

 「本当によくご無事で」


 無事な姿を確認した三人はそれぞれソファーに腰かけると、エステリアからも話を聞いた。話によると、戦闘に関しては報告との違いはなかったが、魔法に関しては報告よりもさらに異常なようであった。


 「その話は真か?最上位魔法の魔法に時空間魔法を使えるのか」

 「多分まだ何かあると思います。けどそれ以上は身内でないから話せないと」

 「ふむ。儂が問うてもおそらくは無駄であろうな。容易に手札をさらす者は信用が出来んしな。しかし、身内でない者には、か」


 顎に手をやり考えを纏めているカランドにエステリアは口を開く。


 「なのでお父様、私は彼と結婚したいのですがよろしいですか?」

 「!!そこまでか」

 

 驚く父に、娘の意思は固いようである。

 それにある意味では好都合であった。


 「わかった。彼を取り込もう考えていたからのう、どこかの適当な令嬢をあてがおうと思っていたから丁度いいか」

 「しかし、今回の功績では精々男爵が限界かと」

 「そうだな。儂としては男爵でも問題は無いが後々のことを考えると伯爵ぐらいは必要か」

 「陛下、それにつきましてはいささか報告があります」

 「なんだ?ブローム」

 「はい、ケネス殿はどうやら冒険者ギルドに登録をしておりまして現在はBランクであります」

 「ほほう!すでにBランクか、それはすごいな」

 「それと、ギルドの話では直ぐにでもAランクに上げることができるといいます。なので陛下の承認があればAランクにすることも可能かと」

 「なるほどな。これで問題は無いな、ライナード」

 「そうですな。Aランクとなればわが国では男爵と同じ扱いをせねばなりません。身分としてはもう少し必要かと思いますので、何かしらの功績を挙げたのちに陛下が承認をしていただけば、他の貴族たちも文句は言えないかと」

 「では、エステリアよ。お主とケネスの婚約を認めよう」

 「ありがとうございます。お父様」


 婚約の了承に娘の顔に笑みがこぼれる。

 それを見たカランドは娘がここまで嬉しくしているのに驚いていた。

 普段あまり感情を見せない娘がこんな顔をするとは思わなかったのだ、それ故かまだあっていないケネスに対してうらやましく思ったのだった。


 「・・・では、ライナード。直ぐにケネスを呼び出して聞いてみようではないか。証拠の品など色々聞きたいことがあるからのう」


 






 ケネスの婚約が決まった?

いつも読んでくれている皆様には本当に感謝です。

 これからもよろしくお願いします。

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