プロローグ
2015年7月10日22時、バイト終わりのことだった。
明示大学の試験も間近に控えた時期にもかかわらず、一夜漬けに近い試験勉強をしている。
どうしても落とせない授業だったので、満を持して助っ人を呼んでいた。
幼馴染の有栖川 結衣である。
彼女と俺は2回生ではあるが、俺が一方的に師事を仰いでいる。
なぜなら、時枝 漸次は1回生の単位をほとんど落としまったからだ。
去年の桜吹雪きの舞い散る入学式の日に、
「交通事故」
「入院」
「記憶喪失」
の三重苦がのしかかってきた。
故に有栖川と幼馴染と言われても未だに、しっくりこない。
それでも試験勉強に付き合ってくれていることを鑑みると、記憶喪失前は仲が良かったのだと思う。
彼女以外に頼るべき人が大学にはいない。
4月の新入生勧誘シーズンを逃した俺は、サークルに入ることもままならず、親しい友達もできていなかった。
そういう理由で夜中の22時にファミレスで二人で試験勉強をしていた。
テイラー展開がどうとか、衛星軌道の計算や、ドイツ語やら、一生懸命頭に叩き込んでいる。
勉強方法は過去問をひたすら解くことだった。大学の先生も忙しいのか、同じ問題を使うことが多いようだった。
過去問は全て、有栖川に譲ってもらったものであるが...
「2番の行列の問題がわからないから、解き方教えて」
と聞くと、
「えーとこれはね。ガウスの消去法を使って...」
とすぐさま答えが返ってくる。1年前の試験内容を覚えているのは驚愕に値する。
なにせ俺は2年前のことすらあいまいなのだから...
そして試験勉強の帰り道。iPhoneの表示時刻が0時を回った頃。
二人で暗い夜道を歩いていた。
偶然にも同じマンションの一室を隣同士で借りているので、帰り道は一緒である。
その辺の経緯も実はよくわかっていない。
去年の8月末に退院した日に、ここに住む予定だったと両親とおぼしき人に一人暮らしする家を紹介された。
おぼしきというのは、記憶喪失前の記憶が幼稚園入学前まで遡るためであう。つまり、両親も約15年前の印象と近いというだけだった。
隣を歩く有栖川との関係性は本当によく分からない。恋人ではないにしても、ただの友人というには近すぎる仲。
20歳になった記念とばかりに、有栖川の部屋で大量の日本酒を空けたが、その後の記憶は失われている。
有栖川が酔っているところを見たことがない。一方で、宅飲みをするたびに俺は無残にも記憶を失っている。
今日もまた、二人で酒を飲むことになるのだろう。記憶喪失を忘れたいがために、飲んでいるのかもしれない。
そして翌朝。
目が醒めると見知らぬ場所で、椅子に座らされていた。
窓のない取調室のような狭い空間で、対面にはスーツ姿の見知らぬ女性。
トップアイドルと見紛うような風貌で、こちらを見ていた。
「ようやく起きた...か。では、説明を始めます」
何もわからぬままに、唐突に告げられた。
「ちょっ、ちょっと待ってください。ここはどこで、一体なんの説明ですか?」
困惑を抑えきれないままに吐露した。
だが、返ってきたのは冷たい返答だった。
「ここは拘留所で、別の世界に行くための説明です。あなたは日本という場所にいながら拉致されました。
今後、質問には一切お答えできません」
そして彼女は語る。非日常となる果てのない世界を
話の内容を要約すると、以下の通りである。
・剣と魔法とスキルの異世界行き
・その人にあったスキルが1つ与えられる
・今代の魔王を倒すことが目的
・魔王を倒さないと、元の世界に戻れない
・徒党を組んだ人数分戻れる
・異世界に飛ばされた人数は7万人。全人口の0.001%
・元の世界では、集団失踪の未解決事件
胡散臭いこと、この上ないが、説明が終わると同時にまわりの風景が一変していた。
あとがきです。
次回予告とは名ばかりのキャラ崩壊不可避の悪ふざけです。
次回予告(大嘘)
有栖川 訪れた異世界で巻き起こる恋と記憶の争奪戦
有栖川 宇宙人も加わる大大大乱戦!
有栖川 時枝漸次は果たして、運命の恋人を見つけられるのか!
有栖川 次回 神はサイコロを振り続ける第1話
「運命はかくも無常なるもの」
有栖川 無常にも押し寄せる恋の運命 ハートビートがバッキュンキュン
時枝 物語の捏造はやめてくれ(怒)