第一章 石と出会いと 【第6話:帰宅難民】
「それって、まさかだけど、異世界転移じゃないか?」
バルトの説明を一通り聞いた後、閃いたように春人が話す
「古代のオーパーツ、みたことのない建物、、、ってビルだろ?道を走る奇怪な生き物って、車のことだよな?」
「あの生き物たちはクルマと言うのか。あれはなんなんだ?」
「あれは生き物じゃなくて乗り物の機械だよ、、、とりあえず細かい話は置いといてだ」
ぐいっとビールを飲み干し、説明を聞きながら書いたメモに目を通す
いくらなんでも車を知らないなんてのは、この世界に住むならよっぽどの未開の人間でなければあり得ない
「合点がいった。この世界にエヴォルなんて国がないわけだ」
「エヴォル国がない?!どういうことだ!」
ガタンと大きく音をたてて立ち上がるバルト
「落ち着けって。今説明する、、、確証はないけどな」
バルトが座るのを待ち、春人は一つ一つ話し出す
「多分、そっちの世界の古代魔法とやらの一つなんだろう。」
手元の紙に二つの円を書く
「世界ってが、複数存在するって概念がある。パラレルワールドって概念だ。似たような世界が遠く遠く、決してたどり着けない別の場所にあるって考えても良い。それぞれの世界は干渉せずに独自に発展する」
片方の円にエヴォル、もう一方にニホンと書き
「多分エヴォルの世界はマナ、、、魔力のある世界で、魔法が発展した世界。で、こっちの世界は魔力がないから科学が発展した世界」
「カガク?」
「魔法とは異なる技術と思ってくれ。で、バルトはこっちの円、、、世界にいた。それが、その石の力で」
エヴォルと書いた円からニホンと書いた円に太い矢印を引く
「石の魔法でこっちの方に飛ばされた、って感じなんだろうな。信じられない話だけど」
「よく分からないが、こっちの円に戻れば良いんだな?」
指で片方の円を指すバルト。春人はそれをみながら一言呟く
「どうやって?こちらにはそんな技術はないぞ」
「技術がない、、、じゃあもしかして俺は帰れないってことなのか?」
「その通りでございます」