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ハッキング!!  作者: 大錦蔵
1/1

アマチュア漫画家 霧苔参上!!

 前の作品達は、自分の黒歴史になるほどギャグが大量にありますが、この作品は少しお笑い要素を控えております。

 「カリカリカリカリ・・・・・・」


 とある木造の下宿所で、一人の女子大生が、アナログ式な漫画制作をしていた・・・・・・。


 彼女の名前は 霧苔きりごけ 奈々(なな) ・・・・・・鮮やかな赤茶色の髪の毛をなびかせ、でかい丸型メガネをかけており、節約のためかこの寒い冬の時期に、青と黒を組み合わせたジャンバーを室内で羽織っているのも特徴的、ちなみに電子機器には滅法弱く・・・・・・ペンタブレットも<ディジタル系>のハッカーやクラッカーと呼ばれる存在と彼女は無縁である。


 「スクリントーン(原稿用紙に貼るシール)が一枚税込み500円ってフザくんなああっ!!」


 霧苔は自分の書いた原稿用紙を睨みながら、可憐な顔から麗しい声で、怒声を机に浴びせた。


 「やっぱり今の時代ペンタブレットなのかな・・・・・・趣味でやってるし、これ以上親の仕送り負担かけたくないなあ・・・・・・」


 「・・・・・・アルバイトするか」


 彼女がその独り言を終えた時、 待ってました! のタイミングで、自分の部屋のインターホンが鳴り響く。


 「こんな時間に・・・・・・?」と、座っていた木製の椅子から立ち上がる霧苔。


 霧苔は居間の壁に飾っている大きめの時計を眺めた・・・・・・11時である・・・・・・午後の。


 霧苔は不審そうに左手で箒を持ち、右手で、おそるおそるチェーンをつけたまま玄関のドアを開く。


 「やあ久し振りだね、霧苔くん。いろいろつもる話もあるが、今は部屋の中に入らせてくれないかな? 日本の冬もなかなかクールでね・・・・・・っておいおいなんで閉めようとする!? 今日は君を始末しに来たわけじゃないから・・・・・・」


 長い言葉を語りながら、フフフっと朗らかな笑顔のまま霧苔がドアを閉めようとするのを、アハハっと愛想笑いで必死に抑える西洋外国人がいた。


 彼の名前は ジョナルノ レノフィン ・・・・・・オールバックな銀髪で、茶色の高級そうなスーツを羽織っており、魔方陣の模様でデザインされた赤ネクタイを着用している、口調は少し片言で、右手には奇妙な黒いタトゥーを入れており、見た目40代の紳士そうな男である。ちなみにポルトガル出身。


 彼の頭には間抜けそうに雪が積もっており、クールに装っているが、今にも凍え死にそうに体をふるわせていた。


 霧ゴケは冷たい目でジョナルノを見ているが、彼を、このまま雪が積もっている外に締め出しても可哀想なので、持っている箒を構えながら、彼を自分の部屋に招いた。


 「・・・・・・暖房機器まだ家にないけど、今から注ぐ熱い紅茶で我慢してね・・・・・・で、何やってんの?」


 ジョナルノはごく自然に、居間の奥にある机を眺めていた。正しくは机の上においてあるスクリーントーン少なめの原稿用紙を・・・・・・。


 「ぎゃああっ何見ちゃってんのよ!?」と、霧苔は顔を真っ赤にして、ジョナルノの後頭部にぶつけようと、箒を振り上げてる。


 「・・・・・・いや・・・・・・君・・・・・・この漫画・・・・・・ウチの会社の使う魔術そのまま出しているんですけど・・・・・・どういうことかな?・・・・・・ハハッ」と、霧ゴケとは対照的に顔を真っ青にするジョナルノ。


 「ああ・・・・・・」と、彼の質問に正気を取り戻した霧苔。


 「魔術なら著作権とか、いろいろな法律に引っかからないと思ったからパクっちゃった。それに魔術なんて、現実に存在してること知ってるの日本で、ウチたちくらいでしょ?」


 「いやたしかにそうだけど!? でも魔術結社の存在一般の人にバレたら社会が混乱するから、僕達シークレット主義だってこと君も知ってますよねっ!?」と、焦りまくるジョナルノ。


 「別にバレないように描きますよ・・・・・・にしても魔方陣の絵ってスクリーントーン使ったほうが、カッコいいと思いますか?」と、沸騰するやかんの下に設置してあるガスコンロのスイッチを、切りながら語る霧苔。


 ジョナルノ「まっまあ・・・・・・ばれないで描いてるならノープロブレムだよ・・・・・・あとペンのみでもカッコいいと思うよ、その魔方陣」


 「・・・・・・で? 魔術結社から幼少の頃のうちを追い出すことだけに飽きたらず、自然死に見せかけようと殺人未遂を犯したあなた様は、何しにこんなおんぼろ下宿に?」と、紅茶のティーバックに入れた2つのコップに、お湯を注ぎながら、皮肉交じりに本題を聞き出そうとする霧苔。


 「ぐぬっ・・・・・・痛いとこをつくな・・・・・・まあ本題は、その魔術結社本部で話すよ・・・・・・車を出してある・・・・・・君にしかできないことなんだ、来てくれ・・・・・・もちろん謝礼も払うよ」と、紅茶を一口も入れずに、外に出ようとするジョナルノ。


 「何だ・・・・・・車で来てるんなら締め出すんだった・・・・・・まあ彼程度なら返り討ちできるんだけどね・・・・・・うち」と、意地悪そうに軽く微笑み、そこそこお金が入っている財布をポッケに突っ込んで、熱々の紅茶を無理やり口に運んだ霧苔も、後を追うように外に出る。


 「・・・・・・スクリーントーンがいくらでも使えるペンタブレット買えるかな?」


 舞台は、法定速度60キロで駆ける高級そうな長い黒い車の中に変わる。ビルの群衆の間を駆けて行く。


 「頼んだのは私だが、よく自分を殺そうとした相手と一緒に車に乗ることを快諾できるのだね?」と、左後部座席に座っているジョナルノは、首を傾げながら、今更霧苔に疑問をぶつける。


 「さあ?」と、ジョナルノの言葉を一蹴する霧苔。あと快諾はしていない。


 ちなみに運転している人はジョナルノの従者。話は変わりますが、ジョナルノの横に並んで座っている霧苔は、彼の右手を眺めていた。


 「ああっそういえばあちらへんの地区は、霧苔くんが侵入できないように『結界』が張ってあるんだった・・・・・・ちょっとスピード遅くしてくれないかな? いまそれはずすから」と、とあるタワーを、車内の窓から眺めながら、自分の内ポケットから何かを取り出そうとするジョナルノ。


 「もうはずしてありますよ?」


 「はっ?」と、霧苔が放った言葉に、豆鉄砲食らった鳩のごとく唖然と答えたジョナルノ。


 「前、ココらへんの近くで迷子になった老人に合いまして、ええ、近場の交番で道を聞こうとしましたけど、そこに行くには結界が邪魔ですから、ハッキングしました」と、無表情で語る霧苔。


 「あっいや・・・・・え?」と、戸惑いを隠せないジョナルノ。


 「・・・・・・いや・・・・・・そんなはずは・・・・・・ちゃんとその結界と私の感覚がリンクしてあるのだ・・・・・・ハッキングされたらすぐに気づくはずなのに・・・・・・?」


 霧苔「いえ・・・・・結界を改造したままだと、ジョナルノさんにバレて、めんどくせえですから、うちには反応しないよう、それでいてあなたに気づかれないように術式を組み変えました・・・・・・安心してくださいな・・・・・・魔術結社の本部には近づいていませんからよ・・・・・・」


 ジョナルノの顔に、血の気が引いた。そうなのだ・・・・・・彼が彼女を魔術結社から追い出し、自然死に見せかけようと殺そうとしたこと・・・・・・それが失敗して、やむを得ず自分の従者の一人を、霧苔の育ての親として面倒見るようにと指示したことも・・・・・・全部彼女の異能を、彼が恐れたからだ。(ちなみに彼女の両親は別の国で仕事に手が離せなくて、本部に預けた。死んだわけではない)


 呆然とするジョナルノを横目に、運転していた人が、駐車場に車を止めた。


 運転手(従者)「着きました!」


 霧苔の視界に、彼女にとって懐かしの建物が入った。それの頂点には古びた大きな鐘が一つあり、十数人が生活できるような5階建てで、蔦が巻き付いているビルである。


 建物のふもとには、立ち往生した老若男女の人々が時間を潰していた。

 真夜中に十数人ほどが、この寒い中、頬と耳を赤く染めて、待ちわびてうんざりしたのと、「待ってました」の安堵を含めた表情で、霧苔たちの方を見つめていた。


 霧苔「な・・・・・・なんですか? ジョナルノさん・・・・・・この人だかり・・・・・・」

 ちなみにこの中で、霧苔の見知った人たちも数名いた。


 「奈々ちゃん! 久しぶり! 私のこと覚えていますか? 咲です!」と、姫カットの黒髪で、純白のコートを着ている、凛とした女性の人が、霧苔が乗っている車の方に向かって、嬉しそうに駆けて行く。


 彼女の名前は、島崎 咲  年齢は霧苔と同じくらいで、彼女にとって、十数年前の無二の親友である。


 「霧苔君・・・・・・島崎くん・・・・・・再会の喜びはまた今度にして、今は・・・・・・・」と、呆然から立ち直ったジョナルノは、シリアスな面持ちで、二人の女性に語りかける。


 車に乗っていた三人は、そこから降りて、ジョナルノとその従者は、ビルの玄関に向かって、足を運ぶ。

 霧苔はモチベーションが上がらないままその二人の背中に追うように、島崎は彼女の横に並んで嬉しそうに歩いた。


 「これだ・・・・・・!」


 ジョナルノは扉の前で立ち止まり、霧苔たちの方に向けて回れ右したかと思えば、左手で、「バンっ!!」と、自分の真後ろにある電子錠付きの自動ドアを叩いた。


 ジョナルノ「君を呼んだのは、これ! この扉に描かれている狂った防犯魔方陣を解いて欲しいのだ! これのせいで、私達全員外に閉めだされた。その上、今皆が持ってるお金合わせても、カプセルホテル一人泊まれるほど持っているわけではない! 大体の現金は、個人ロッカーにそれぞれ管理するよう呼びかけているから」


 霧苔は絶句した・・・・・・魔術士の人が十数人が、何をやってるのだと、あきれ返った。


 霧苔は扉に触れた瞬間・・・・・・なんの模様もない自動ドアから、黒色に光る魔方陣を出現させた。

 彼女はその魔方陣を見るやいなや、片眉のみ釣り上げ、不審そうな顔をした。

 この場にいる彼女以外の人達が固唾を呑んで見守る。


 霧苔が、その魔方陣に向かって、両指をちょちょいと動かすと、魔方陣に描かれている文字の並びが入れ替わり、そのまま自動扉が元の仕事に戻るかのように開く。


 開いたあとの扉の向こうは、電気がついてなく、濃い闇のみしか視界に入れない。


 「やあ! ご苦労! 謝礼はビルの中に入ってから払うよ。」と、にっこり笑いながら、タトゥーをした右手で、霧苔の肩に触れようするジョナルノ。


 しかし霧苔は、ジョナルノの右手首を自分の左手で掴み、抑えながら、彼の体ごと真横に押し出した。


 その瞬間・・・・・・闇の系譜を持つ魔力が、その自動ドアから溢れんばかりに放出される。

 彼女がかばわなければ、ジョナルノもただでは済まなかったかもしれない。


 島崎とジョナルノの従者も、彼女の様子を見て、闇の攻撃を回避した。


 「ヒィいいいいいぃいいいいぃぃィィィィィィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」


 少し野太い声が、建物の中から聞こえたかと思えば、このビル内側からその扉を通して出て行く、一人の男性らしき人が、全力疾走で、逃げ出そうとする。


 「そいつだ!! 私達のビルを占拠し、闇の魔術で、私達を殺そうとする極悪人は!」と、焦りまくるジョナルノは、逃げている男に向かって、指をさす。


 逃げている男「ひいいいっ! 殺される!!」


 霧苔は、状況がよく飲み込めないが、とりあえずその男を追いかける。


 逃げている男は、振り向いた状態で、人差指と親指でつまんでいる杖を構え、追いかけている彼女に、闇の波動を撃つ。


 形は全然定まらないが、超広範囲に蝕むその闇と、霧苔はぶつかった。


 モヤモヤと形をかたどってない黒いものが、霧ゴケの体全身を縛ろうとしている。


 「奈々ちゃん!?」と、島崎は、闇魔法で全身に飲まれている霧苔を見て、冷や汗がどっと出る。


 「大丈夫!!」と、闇の塊から、女の声が高らかに発せられた。

 

 霧苔が触れている闇の魔力のみを、彼女が彼女自身の足元に集めさせ、凝縮し、纏う。


 霧苔「『ダークシューズ』っ!!」


 彼女のかかとから、敵の術であるはずの闇の魔力が勢い良く発射され、それにより彼女の体が猛スピードで地面から真夜中の天空まで跳ね上がり、逃げている男に向かって、ロケットのごとく激突した・・・・・・


 


 






・・・・・・かと思えば、軌道が激しく変わり、何故かジョナルノの方に向かって、体当たりした。


 ジョナルノ「グゲラッ!!」


 吹き飛ばされて、倒れ伏したジョナルノは、いきなり何が起こったのか状況がつかめていない。

 しかし彼のまわりにいる島崎を含めた人たちは「だろうね・・・・・・」と、頭のなかでのみ語る。


 霧苔も体当たりにより、ダメージはおったが、何事もなかったかのように即立ち上がる。


 逃げていた男は、足を止め、呆然と、霧苔とジョナルノの方を眺めた。


 「どういうことですか? ジョナルノさん・・・・・・・逃げていた彼の魔術ハッキングしたら、殺傷能力が全然ない攻撃だと判明しました!! 何か隠していますね!! 言わないとあなたの故郷にいる両親に、彼・・・・・・こんなことしてますよ・・・・・・とバラしますよ?」と、眉毛を釣り上げて、怒気を露わにしながらジョナルノを見下ろす霧苔。


 「フッ・・・・・」


 霧苔「・・・・・・え?」


 いきなりジョナルノは、倒れ伏した状態のままで、霧苔の足首を掴んだ。


 「ふふふっフハハハはははハハハッはあっはははああははっっははははははっはははははははははははははははハハッはひひはっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ジョナルノは嬉しそうに嗤う。


 「発動!! 『サイレントカット』!! 本来は暗殺専門の魔術だが、もう関係ねえ! どうせ私・・・・・・いや俺の信用なんてとっくに地に落ちてんだろっ? お前の命はあと数時間・・・・・・大量の静脈のみ血管を切り落とした・・・・・・てめえなんてもう用済みだあ!」と、引きつった笑いを見せながら、さも楽しそうに自分の右手の平に描かれてある魔方陣を型どったタトゥーを、霧苔に見せつけるジョナルノ。


 ※サイレントカット・・・・・・ 動脈ではなく静脈のみを切断し、内部出血で命を奪う暗殺魔術。外見からでは・・・・・・そして攻撃されたものの感覚ですら気づかせないようにできる上、死ぬタイミンが、数時間後ということもあり、術者の足が非常につきにくいのが特徴的。あと切断面には、自然治癒を阻害する術式も組み込まれている。


 「あひはははっひははっはひははひはひあははははっひははっはあはははっははははははっは!!!」


 島崎「・・・・・・ジョナルノ副長・・・・・・あなたの右手に描かれている魔方陣は、チューブカットを発動させるものではありませんよ?」


 「はひはひはははははは・・・・・・はっ!?」


 ジョナルノの脳内は一瞬真っ白になったが、ハッタリだと思うようにし、「そんなはずはない!ちゃんとした術式彫り師(術式を体にほってくれるタトゥー屋さん)に頼んだんだぞ! 今までこの手で葬ってきた奴らは十数人ほどにのぼる!!」と、口元を歪ませ、島崎を睨めつけた状態で、怒鳴りつけた。


 「 彫り師の ロリナル さんが言ってましたよ? 「あの陰険オールバックに彫ったサイレントカットの術式・・・・・・実は偽物で、別の効果発動させてんだよね・・・・・・あのバカ、アレの本当の効果知ったら青い顔して、自分で牢屋に入るだろうね・・・・・・キャハハッハ」って、酒の席で言ってましたよ」と、ジョナルノの絶望していく顔を眺めながら、朗らかに語る島崎 咲。


 「嘘だ・・・・・・」黙ってみている霧苔の足首を掴んだまま、ぶつぶつと呟くジョナルノ。


 「本当だよ?」と、もろに幼気が残るが美しく、そして冷酷な声が、何分か前この場所までジョナルノと霧苔を車で運んだ、彼の従者から発せられた。


 いや奴はもう彼の・・・・・・ジョナルノの従者ではない。


 彼の従者だった者は、さっきのゴタゴタの時に、ビルの中に入り、たった今その自動ドアから出てきた。


 従者だった者の姿は、霧苔と初めて対峙した時から、常軌を逸っしていた・・・・・・フードを被り、頭から足の先まで、青く厚いコートに身を固め、顔などは確認できない。


 「フーアツい!」といった従者は、その全身を纏うコートを脱いだ。


 コートから現れた姿は、ツインテールで金髪の、背は小学6年生平均でも少し小さいくらい、フリルがたくさん付いているワンピースを着用、瞳は美しい青、雪のように白い肌を持つ女の子である。両手には幾つかの赤いローブを、胸いっぱいに抱えていた。

 あと、ブーツも履いていたのだが、そこに無理やり自分の背丈より高い厚底を持つ下駄を器用に履いていた・・・・・・こう・・・・・・下駄の鼻緒を改造して、ブーツに巻きつけるみたいにして着用している。


 霧苔はその信じられない光景を眺め、自分の背筋がぞっとするのを感じている。

 バカ長い下駄を履いた幼女が、自分たちの乗っていた車のアクセルペダルとブレーキペダルを踏んで運転していたことに。

 あとその従者が歩いている時、何故か「カランッコロンッ」と音がしていたことにもガッテンがいった。


 ジョナルノ「ロリナル!! さっき本当と言ったが、どういうことなのだ!? 俺・・・・・・私が葬った奴らは、実は生きていたのか!? 私は、君だけは心の奥底から信頼できると思っていたのに!!」


 ロリナル「・・・・・・うるさいなあ」


 「んっ生きてたよ? それどころか僕の庇護下にいるからね、今は。ジョー(ジョナルノ)が殺したと勘違いした皆は、ぜっんっいっん君と君の部下たちを恨みつらみまくってるよ?」と冷酷に、そして愉しそうに語るロリナル。


 ジョナルノ「そんなバカな!? テレビのニュースでは、私が手にかけた全員が、死んだと報道されていたんだぞ!?」


 「違うよ・・・・・・君の右手の魔方陣はね・・・・・・」と答えをじらそうとするロリナル。


 「・・・・・・思考漏えい・・・・・・」


 ジョナルノ「・・・・・・はっ?」


 「ジョー君が魔力を含めた右手で、触れられた人物は、ジョー君が企んでいることと、それに対しての僕の安全策を垂れ流す術なの! テレビでの偽報道は、君を欺き、社会的に自分を抹殺されることにより、安全にジョーくんを消す作戦を立てれるってこと」と、幼児姿の女の子は、淡々と術の内容を答える。


 「まあ偽物の死体、警察や検屍官にばれないかヒヤヒヤしたしたけどね」


 「そんな・・・・・・快楽殺人者予備軍の魔術師もいっぱいいるんだぞ!? ただでさえ権威を失っていく魔術界の信用をますます貶すことになるんだぞ!?」と、冷や汗をたくさんかき、怒鳴りつけるジョナルノ。


 「それが・・・・・・」


 ロリナルは自分の指を鳴らす。


 複数の人達が、彼女の周りにいきなり現れた! ・・・・・・瞬間移動の能力で移動したらしい。


 「目的だ・・・・・・!」


 「あいつら・・・・・・ロリナルの言っていたことは本当だったのか!」と、自分が殺したと思っている見知った顔ぶれたちを眺めながら、歯を食いしばるジョナルノ。


 「ああそう・・・・・・」


 「僕がジョー君にプレゼントしたネクタイ・・・・・・魔力を与えたら、自分の心臓を永遠に止める術が発動するけど・・・・・・どうする? 唯一自分の心の拠り所を失うんだから、そのプレゼントがお似合いだと思うんだけど? 喜んでくれた?」と、冷ややかな口調で、彼を見つめながら言うロリナル。


 霧苔「あいつ・・・・・・!!」と、彼女はロリナルに対して、激しい怒りが生まれた。


 ジョナルノは、虚ろな顔の状態になり、震えた右手で、自分のつけているネクタイを握ろうとする。


 その瞬時、彼に向かって、闇の波動が突進してくる。

 今まで逃げていた男が、怒りを露わにして魔術を発動さたのだ。


 しかしその男の手が震えたからなのか、軌道が大きくずれた・・・・・・が、霧苔はその闇の塊に、自分の右手を差し出し、纏わせ、その魔術の形を変えたのだ!

 まるで初対面であるはずの両者が、十何年も付き添った恋人のごとく、息がぴったりに連携していく。


 その闇の塊は・・・・・・巨大な漆黒の拳になった。


 その光景を見ていたロリナルは、目を見開き、小さな口を大きく開け、虚ろな顔をしたジョナルノの正気を取り戻した。


 霧苔「何情けない顔してんのよ!? ジョナルノさん!! 今まで殺してしまった人たちが、生きてたんだよ!? 何勝手にあんただけ死のうとしてんのよ!! 自分の手が血に染まってないことを喜びながら・・・・・・」


 霧苔は激しく、闇の拳を振り上げる。


 霧苔&男「被害者一同の怒りの拳を受け取れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!っ」


 その瞬間・・・・・・ジョナルノはあることを思い出す。

 敵意むき出しの一流の魔術師に、囲まれた幼女が、瀕死の状態で、改造した魔力を自分に纏わせることによって、死地から抜けだしたことを。

 そして殺そうと思えば容易にできた彼女は、決して自分に手をかけようとした大人たちですら気遣って、

殺さなかった霧苔のことを・・・・・・。


 走馬灯のように昔を振り返るジョナルノは、彼女の手が、自分に接近するのを見て、正気を戻す。


 大きな闇の拳は、ネクタイを握ろうとしたジョナルノの顔面に叩きつけた。


 土埃が大量に舞い上がり、ジョナルノは拳により、鼻が折れ・・・・・・失神した。 


 霧苔はその拳を解かぬまま、ロリナルの方を向く。


 しかし彼女たちの姿は、消えていた。逃げたのだ。会社のまわりにいる島崎たちも、霧苔たちを、固唾を呑んで見守っていたので、気付けなかった。


 「あのう・・・・・その人・・・・・・大丈夫でしょうか?」


 闇を操る男が、怯えながらも、霧苔たちの方に向かって、歩んできた。


 その男の容姿は、髪の毛はストレートの黒で、スーツとネクタイもしていたのだが、それも真っ黒に染まっていた。顔は優男のイケメンに属するのだが、目の激しいくまが、その魅力を抑えてしまっている。


 「僕の名前は 減百げんびゃく 陸奥むつ で、防衛魔方陣等を設置する、『蒲江総合魔術株式会社』の一社員なんですが・・・・・・今回、あなた達の魔術結社で、魔方陣を設置する仕事を承ったんですけど・・・・・・」と、減百と名乗った男は、今までの経緯を話したあと、言葉を濁らせた。


 「・・・・・・で、ジョナルノは、仕事を終えた業者さんのあなたが邪魔だから、殺そうとしたことくらい容易に想像できますよ・・・・・・設置した本人は、もちろんその術式を解くキーワードくらい知っていますから・・・・・・」と、ため息まじりに語る霧苔。



 「・・・・・・で?」と、島崎たちの方を向き、眉毛を吊り下げた状態で、見つめた。


 「この寒い中・・・・・・なんでこんなとこで立ち往生してたんですか? 普通にファーストフード店とかで、コーヒー頼んで、暖房器具付きぬくぬくの部屋で、時間を潰せたはずですよ? ジョナルノさんから業者の人が来るって伝わってないんですか?」


 島崎「ああっ・・・・・・」


 「それはもちろん! ジョナルノさんが、またバカやらかさないか、会社の前で、見張るために待ち伏せしてたんです。まあ私達が取り押さえる必要はありませんでしたけどね」と、とびっっっきりの笑顔で応える島崎。 

 それに対して、賛同してますよと、頷く魔術師の方々。


 霧苔「・・・・・・本当に信用は地の底まで落ちてたんだな」


 その時、なぜが失神していたはずのジョナルノの瞳から、涙があふれんばかりに流れていた。


 


 後日・・・・・・全身軽く骨折したジョナルノから、一万円ほどの報酬をもらった霧苔は、早速ペンタブレットなるものを購入した。


 彼女は、朗らかな笑顔のまま、ニコニコウフフフで、その機械を眺め続けている。


 


 


 


 

 


 


 


  

 パソコンもない自分の部屋に設置して・・・・・・。

 


 


 

 

 


 

 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 

読んでくれてありがとうございます。

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