8.アピールを踏まえているかもしれない紹介【伍】
「サクサクいくのじゃ! 次に紹介するのはこの二人なのじゃよ!」
食べ物でホイホイした人たちを解散させると、フィカイアはそう言ってまた二人つれてきた。今度は花なんかが舞うこともなく、二人は普通に歩いてくる。
「……ってあれ、さっきまでいた人じゃん」
今回つれてこられたのは緑色の髪をした男なのか女なのかよくわからない人と、レインボーな髪色の少年。少年はさっきイチゴに釣られてた気がする。
「スメールチ・ザガートカ・アジヴィーニエとリヴェラトーレじゃな。ある意味似た者同士らしいのじゃ」
「名前なっが……」
「ちょっと! なんで俺がこの性悪と同類扱いされなきゃならないわけ?」
「ヒヒヒ、僕と同類じゃご不満かい? 悲しいねぇ、寂しいねぇ」
「そうやって無表情の癖ににやにや笑ってタチの悪いことを言う辺りが大嫌いだよ」
「傷つくなぁ」
二人はそんなやり取りをするが、絶対にスメールチは傷ついてなんかいないと思う。それだけは分かった。でもなんで似た者同士扱いなんだろう。
「二人をセットにするとリヴェラが言い負かされて終わるだけだからダメらしいんじゃがの、『ああ言えばこう言う』みたいな屁理屈なところがそっくりらしいのじゃ」
「嫌な似た者同士だな」
「ちなみにスメールチは男なのじゃが、よく男にナンパされるらしいのじゃ。でもちゃんと、女の子も好きらしいのじゃ。実際はどうなのかの?」
「ん? どっちも好きだよ。性別がどっちであろうと、好きな人は好きなのさ」
「格言じゃの」
「いやいやいやいや」
つまりどっちもイけますバイですって事じゃん。っていうか男にナンパされるってなんだよ。確かにきれいだけれども。
「ブランテ君も最初は僕をナンパしてきたんだよ」
「ナンパマスター(笑)たる由縁が滲み出るエピソードじゃな」
「それって本人にとっての黒歴史なんじゃ……」
やめてやれよ、他人の傷口を抉りまくって塩をも見込むのは。
「ヒヒヒ、確かにナンパだけど、でもあれぐらいのイケメンに『こんにちは、きれいなお姉さん』なんて言われたら嬉しいよねぇ。ついついときめいちゃうし、そのまま引っかけたくなるのも仕方無いと思うんだよね」
「だから性悪なんだよ。普通思わないし」
「リヴェラ君は辛口だなぁ。甘党の癖に」
そう言ってまた、スメールチはヒヒヒと笑った。相変わらず一貫して無表情なのがとても怖い。なんだよ、無表情で笑うって。表情筋が死滅したのかよ。
「んー……」
「な、なんだよ……僕の顔になにか?」
「いや、君って特別かっこいい訳じゃないよねって」
グサッと来た。美人(男)に真顔で言われてかなりダメージを受けた。
「そうじゃなぁ。主人公の癖にイケメンでも何でもないから人気がでないのかの?」
「やめろ、さらに心を抉るな」
「まあ、安心しなよ。僕みたいなのにはモテるから」
「どう安心しろって言うんだよ!」
それって年上のオジサマに可愛いってもみくちゃにされる感じの奴だろ。嫌だぞ。僕はそんなの絶対に嫌だぞ。
「関係ないのじゃが、二人は魔法を使えるとかなんか能力があるとかそういうわけではないんじゃな?」
「あれ? それってむしろ本題だと思うんだけど」
「人気がなければ関係ない話なのじゃ」
「酷い言われようなんだけど」
僕が傷ついている間にリヴェラとフィカイアが話を進める。一々僕の方を見るのやめてくんないかなぁ!
「魔法ねぇ……僕は使えないよ。ヒヒヒ、その代わりにこいつがあるんだけどね」
「ゴツいガトリングじゃな……」
どこからか、ジャコッとゴツいガトリングを出して装備するスメールチ。本当にゴツい。こんなの存在したんだな。
「ちなみにこっちもあるよ」
そう言って取り出したのは真っ黒なハンドガン。
「う……」
ぞわり。と悪寒が走った。気付けばあっという間に背中が汗でびっしょりになっている。吐きそうだし叫びだしそうだ。
これと戦わないで済むのなら、投票で上位になんて上がらなくてもいいかな、と僕は心の底から思っていた。
ニヤニヤと笑う、虹色頭の少年に気付かずに。