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7.まとめてみたらこうなった

「さて。ここでちょっと面白い実験をしてみようと思うのじゃ」

「実験?」

「そうじゃ。一見私たちはバラバラのように見えるが、実は確かな共通点が有ることもあるのじゃよ」

「既にどいつもこいつもキャラが濃いって共通点があるんだけど」

「盛大なブーメランじゃなぁ。そんなざっくりとしたものじゃないのじゃ。もっと分かりやすく、そして面白い共通点じゃよ。ほれーー」

 そう言ってフィカイアは何処からかテーブルを持ってきた。否、テーブルが勝手に動いてきた。まるで、意思があるかのように。

「ふふふ、これはここが()()()()()()ってことにしてあるからじゃよ」

「そういう場所……?」

「うむ。私のよく知る場所と似た環境にしてもらったのじゃよ。私のためにの。ーーと、そんなことはどうでもいいのじゃ。実験はこれなのじゃ」

 フィカイアは悪戯っぽく笑って誤魔化す。なんか意味ありげな雰囲気で言われたけど、こんなおふざけでやってるものにそんな雰囲気を持ってこられてもな。結局僕にはなんにもわかんないし。

「……パン?」

 これ、と言ってフィカイアが出してきたのは、貝のような何層も重ねられた感じのパンらしきものだった。

「うむ。スフォリアテッレというパンじゃ。美味しいらしいのじゃよ」

「へぇ? で、それがなにか?」

「ふふふーー周りをよく見てみぃ」

「周り……? ……うわぁッ!?」

 なんのこっちゃと言われるがままに周囲をぐるッと見てみると、一瞬の間に緑とオレンジと銀と黒の四つの頭がひょっこりと現れて僕たちの後ろにいた。確か、この人たちは……

「『僕ラノ戦争』雨宮(あまみや)気流子(けるこ)、『infiorarsi』ナディア・フォルトゥナーテ、同じく『infiorarsi』クリム・ブルジェオン、それから『人間掃除人』蜘蛛じゃな」

「けろっ! パンと聞いて来ました隊長!」

「これってロレーナのパンだよね! 焼きたてはあたしがもらったー!!」

「スフォリアテッレはとても美味しいものなの……!」

「……くもはお腹すいたです」

「……えっと、そのパンでこの四人は釣られたってこと?」

「うむ。その通りじゃ。次に、このイチゴのロールケーキを隣に置くのじゃ」

 フィカイアはそう言ってまたどこからかロールケーキを取りだし、スフォリアテッレの横に置いた。

 人が増えた。

「……ッ!?」

 音も無く何処からか突然現れるのって恐怖だと思う。いや、恐怖だよ絶対。ちなみに今回増えたのはレインボー(小)とレインボー(大)、あとキャップの上にフードを被った女の子だった。

「『infiorarsi』リヴェラトーレ、『ラブラドライト』チェルカ、『僕ラノ戦争』(むらさき)時雨(しぐれ)じゃな」

「ねぇ、なんでそのスフォリアテッレにはイチゴがついてないの?」

「イチゴの甘味に釣られないわけがないよね。俺ってばまだまだお子さまだからさ」

「黙るのじゃジジイ 」

「……ろーるけーき……」

 途中何故かフィカイアの辛辣な言葉がレインボー(大)に向かった気がするけれど聞こえなかったことにしておこう。というか、そのレインボー二人は確実に血縁者かなんかだろ。好みおんなじだし。顔似てるし。レインボーだし。というか何だよ、レインボーな頭って。レインボーなんだけどさ。

「最後に、ここにチーズケーキを置くのじゃ」

「チーズケーキ」

「するとまた三人寄ってくるのじゃ」

「三人」

 フィカイアの言うとおり、ロールケーキの横にチーズケーキが置かれると、また人が増えた。今度は金髪頭の眼帯……蜂に、銀と黒の二色の頭に、薄茶の頭。うん、蜂が来るのは何となくわかってたよ。

「『人間掃除人』蜂、『ラブラドライト』セレス、『僕ラノ戦争』琴博(ことはく)桜月(さくらつき)、じゃ」

「おっしゃチーズだチーズ!」

「あ、チェルカもいる」

「やっとみつけたよ、時雨さん」

「ろーるけーき」

 個性豊かだなぁ……。段々なにがなんだかわからなくなりそうなくらい圧倒的な個性が目の前にうじゃうじゃいるんだけど。濃すぎてどうしたら良いのかわかんないや。

「えっと、これはつまり」

「うむ。つまり共通点は食べ物じゃな。食べることそのものが好きだったり、特定の好物が熱狂的に好きだったりじゃが、まぁ反応は大体一緒なのじゃ。喜び勇んで光の速度でやって来る」

「怖すぎるよ」

 なんだよ光の速度って。

「ねーねー、気流りんおなかすいたー!」

「くももです。早く食べたいです」

「そうだよ早く食べようよ! パンが焼きたてじゃなくなっちゃうでしょ!」

「スフォリアテッレは他にないの……?」

「ついでにイチゴもっと追加しようよ」

「ろーるけーき……たべる……」

「時雨さんもうちょっと待ってようね」

「チーズもっと追加しようぜ。ほら、そのパンチーズフォンデュするとか」

「チェルカ、私見たことないのいっぱいあるどうしよう」

「とりあえず全部食べてみなよ」

 ああ、もうなんだこれ。各々が各々に話始めててもうグッチャグチャだ。僕は聖徳太子じゃないっつーの。とりあえず食べたいのはよく伝わったよ。

「じゃあ、暴動が起きる前に食べることにするかの。大丈夫、人数分以上の用意があるのじゃ」

「暴動!? 何があるっていうんだよ!」

「ん? 食べ物の恨みは怖いって話なのじゃ。ちなみにこれらのパンとケーキは、『infiorarsi』ロレーナ・フォルトゥナーテ、『infiorarsi』ネロ・アフィニティ、『人間掃除人』渡り鳥の提供なのじゃ。すごいのぅ」

「あ、このために作ったんだ……」

 食べる人がいれば作る人がいるのもわかってたけど。でもなんか、凄いとしか言いようがないし、当たり前の事を、僕は当たり前と受け取れなかった。

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