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2.アピールを踏まえてるかもしれない紹介【壱】

「さて! 今回からはエントリーされた面々を紹介していくですだよ! その前に重要なお知らせですだ!」

 黒岩(くろいわ)(あかつき)はニヤニヤと心底楽しそうな笑みを浮かべてハリのある声で言った。

「前回まで儂と進行役を勤めていた戸垂田(へたれた)小坂(こさか)は進行役をクビになったですだ。一位争いの奴が進行するのもなんだかなーって話ですだよ。くくく、一回でお役御免なんて笑えねぇ話ですだなぁ」

 そう言いながら暁はくつくつと笑った。楽しんでやがる。

「つーわけで小坂の代わりが来たですだ!」

 暁はそう言って『俺』を勢いよく指差した。何故か大きく仰け反り、両腕を頭の方から俺に向けて指すような形で。

 そう。戸垂田小坂の代わりに選ばれたのは俺だ。

「相変わらずなんて呼べばいいのかわっかんねーのが困りどころですだな。仮の名前をつけてもいいですだか?」

「一応俺にも名前はあるんだけど……まあ、いいよ」

「うむ。じゃあ……お前はジョンソンですだ!」

「俺何人だ……」

 日本人のはずなんだけどな……。鶴ヶ谷のとなりにいるのがごりっごりの外国人とか色々と絵面が可笑しいだろって話だし。

「まあいいですだ。それじゃあジョンソン、話を進めていくからヨロシクですだよ」

「本当にジョンソンでいくんだ……」

 ここまで来たらもうなんだっていいけどさ。


「今回からはランキング関係なしに、一ミリも知らない奴でもザックリ理解できるような紹介とインタビューをしていくですだ!」

「ザックリ理解が決して正しい情報であると言わないところがミソだな」

「そういうことですだ! じゃあ今回はダーツで誰にするか決めるですだよー!」

「ダーツ?」

 そんなもの用意してたっけか? しかし一向にそんなものは出てこない。そうだよな、用意してないものが出てくるわけないよな。

 でも何故か暁はやる気満々だ。

「いくですだよー」

「いや何を」

「そいやっさァァァァッですだァァァァッ!!」

 俺の突っ込みに一々止まるわけもなく、暁は炎を纏う大きな石をぶん投げた。そして叫んだ。その姿はさながら砲丸投げのようだった。ついでに言えば、陸上部から勧誘されそうなフォームと飛距離だった。

 いや、そうじゃないな。そもそもが違うな。

「それはダーツとは言わない!」

「多分突っ込みどころはそこでもないですだよ、ジョンソン」

「…………」

 ボケた本人に突っ込まれてしまうというのは中々恥ずかしいものだと知った。

「さて、儂がぶん投げた石はどこにいったですだかなー。つーか誰がそれ探してくれるんですだかなー」

「まさかのノープラン」

「む、誰かが見つけたみたいですだ! そいつが今回のリポーターになるですだよ!」

「やっつけすぎるだろ」

 ボケのテンポが速すぎる。そろそろ疲れてきたぞ、俺……。鶴ヶ谷に癒してもらいたいところだ。

 疲れてる間もなく、俺は暁に引き摺られてぶん投げた石のところまで連れていかれてるんだけどな。なんだこれ。

「のう、火の玉が飛んできたのじゃがこれはどうしろということなのか教えてくれるかの?」

 石の近くに立って……否、浮いていたのは爺言葉で話す黒髪の幼女だった。またとんでもねぇのが来やがった。

「ふむ。まずは自己紹介をするですだよ」

「ん? 私のかの? 私はフィカイア・ソンニャーレなのじゃ! 今は幽体じゃが、ちゃんと本体もあるのじゃよ?」

「なんで本体で来なかったんだ?」

「こっちの方が移動が楽だからなのじゃ!」

 俺は楽だからという理由で幽霊になる奴を初めて見たよ。

「ふむ……とりあえず私が近くにいるのを紹介していけばいいんじゃな?」

 飲み込みが速すぎるフィカイアはそんなことを言ってどこかへ向かっていく。そして直ぐに誰かをつれてきた。

「お、おい、何処に連れてくつもりだよ嬢ちゃん。俺はまだ死ぬつもりはねーぞ」

「黄泉へなんて連れてくつもりはないのじゃ! お主はおとなしく紹介されてればいいのじゃ!」

 フィカイアに捕まった第一被害者……もとい、最初の人物はハゲでヒゲのおっさんだった。……お、おう。

「このハゲのおっさんはロドルフォ・レトゥールなのじゃ。トリパエーゼの元騎士団で、副団長をやるぐらい強かったのじゃ。二つ名は確か『スケールモデルの鬼士(きし)』……じゃな?」

「恥ずかしいからその二つ名いい加減やめてくんねぇかな」

 真顔でロドルフォは言った。まあ、確かに恥ずかしい名前だ。この二つ名をつけた人のネーミングセンスを疑う。

「鬼士! 強そうですだな! ちょっと儂と戦ってみろですだ!!」

「バトル脳は黙っていてくれ」

 ここで戦われたら、人気投票終わったあとどうしてくれるんだよ。

「因みに、鬼士たる所以はその戦術にあったらしいのじゃ。例えば、敵のパンツを盗んで町を走り回ったりーー」

「お前とは絶対に戦わねぇですだ」

 さっきまで戦いたくてうずうずしていた暁が、一瞬にして物凄い嫌そうな顔で拒否り始めた。凄いな、鬼士。

 まあ、誰だって戦ってるときにパンツ盗られたら嫌だよな……。

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