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1.そもそもの説明と現段階

「えーっと……? 『第一回、人気投票&最強決定戦』?」

「むぅん! 実況と解説は儂と小坂(ヘタレ)でお送りするらしいですだな!」

「ヘタレって言うな!」

 慣れない様子で戸垂田(へたれた)小坂(こさか)は原稿を読み、原稿を読んだのかそうでないのかよく分からない黒岩(くろいわ)(あかつき)がそれに対し元気に答えた。

「そもそも、これに対して何を実況解説したらいいのかわかんねーけどな……台本が雑すぎるんだよ」

「台本とかプロ魂に欠けることをいっちゃいけねーですだよ! 儂を見習えですだ!」

「お前はフリーダムすぎんだよ!!」

「よし、手本を見せてやるですだ」

「話を聞け!!」

「まずはこの企画の説明からですだな!」

 小坂の叫びもむなしく、暁はツインテールを上下に揺らしながらとびっきりの笑顔で強引に進めた。その積極性は、ある意味進行役として妥当だったとも言える気がする。

「まあ、タイトルの通りこれは人気投票ですだな。総勢何名かよく考えてねーですだが、その中で誰が人気で誰がそうじゃねーのか決まるっていう、大分シビアな奴ですだ。主人公やってるのに票が入らない何てことが起きたら悲惨ですだな……」

「なんでそんな辛辣なんだよ。やめてやれよ」

「まあ、そんな不毛な人気争いのことは置いておくですだ。一番のお楽しみはそこじゃねーですだよ」

 真面目な顔で不人気の悲惨さを語ったかと思えば、急にいい笑顔になって次の説明を始めようとする暁。そのコロコロと変わる表情を今のところ見ているのが小坂だけと言うのはややもったいないような気がしなくもない。本人たちにとっては、知ったことではないのだろうけど。

「最強決定戦ってやつか」

「そう! それですだ! ザッツライトですだ!

 この人気投票の醍醐味はなんといってもその最強決定戦ですだよ。上位六人を問答無用でトーナメント形式で戦わせて、一番強い奴を決めるんですだ」

「人気があっても戦闘力がなきゃ悲惨だな……」

「心配はいらねーですだ! 普段戦闘向きじゃない奴も、無理矢理ミラクルなパワーと大人の事情とその他諸々で戦えるようになるですだよ!」

「とんでもねぇ気遣いだな」

「まあ、そのルールのお陰で今とんでもねー順位になってるですだよ。これは後で発表するですだ! 楽しみにしていろですだよ、小坂!」

「……そういやなんで俺のとこには順位の資料が来てないんだ……?」

 テーブルにおかれた自分用の原稿と資料を見つつ小坂は頭を捻らせた。だが、その答えが出てくるのは少し先の話だろう。


「あー、ちなみにこの実況解説は投票数が十いく度にあるらしい。現時点で四十票あるから、このままあと三本続いていく予定だぜ。ついでに言えば、獲得数が十いった奴はそいつピックアップでやるらしい。インタビュー的な感じだな、多分」

「そんなこたぁどうでもいいですだよ! さっさと戦って戦わせろですだ!」

「バトル脳は黙ってろ!」

「黙ってられねーですだよ! ……ところで小坂、この企画、いつまで続くですだか?」

「……おいおい決まると思うぞ」

 投票締切日の欄が空白なの見て、小坂は遠い目をした。むしろ、そんなこと今まで誰も考えていなかったのかもしれない。

「まあいいですだ!」暁は割と大事かもしれないことを放り投げて、勢いよく立ち上がり声高らかに宣言した。「現段階の順位を発表するですだよ! ちなみに、これ投票完了画面から飛んで見ることもできるですだ! その辺の設定も忘れていたですだな……急になくなったら察してほしいですだ!」

「メタな発言はやめてやれよ」

 さっきから鋭く痛いところをついてくる暁は、小坂の制止も聞かず順位の発表に移った。

「まず六位内に入れなかった第七位! クソ一杯いるから割愛ですだな! 続いて第三位、四人いるですだよ! えーっと……」

 ぱちんと暁が指をならすと、突然地面から炎が吹き出し、その中に黒い人影が四つ現れた。

 真っ赤な炎が消えると、その正体が明らかになる。右から順に、目に優しい全身アースカラーの男か女かよく分からない奴、紺色のブレザーに身を包んだ髪の長い女子高生、ゴスロリドレスに身を包み無表情で車イスに乗る幼女、そして、ヘラヘラと笑う髪の毛がレインボーな男だ。

「スメールチ・ザガートカ・アジヴィーニエ、鶴ヶ谷咲、蜘蛛、チェルカだそうですだ!」

「派手な登場の仕方だし、面子の個性は強すぎるし、俺はどっから突っ込めばいいんだ……」

「個性に突っ込むなんて野暮なことはしちゃいけねーですだよ。炎は儂のスペシャル演出ですだ」

「お前のせいかよ!」

「さて、今回はさらっとした紹介だけですだからな。次いくですだよ。現時点の一位ですだ!」

 炎で登場した四人は、そのまま地味に右へはけていく。本人たちも名前だけの紹介だと聞いていたらしく、不満は一言も漏れない。聞いていなかったのは小坂だけのようだ。

「一位は二人……人? まあ、二人いるですだ。まず一人目……? ですだ!」

 ばっと暁が右腕をあげる。すると、上から何かがごとりと落ちてきた。

「はぁっ!? なんか落ち……」

 落ちてきた謎の物体にビビって立ち上がりながらも小坂はその正体を確認する。

「……リンゴ?」

 そう、それはただのひとつのリンゴだった。

「くっくっく確かにリンゴですだが、ただのリンゴじゃあないですだよ。手に持ってみれば分かるですだ」

「持って……? ……ッ!? うおおおおぉぉぉぉああああぁぁぁぁッ!?」

 暁に言われるがままにそのリンゴを手に持ってみると、ぎょろりと目玉が小坂の方を向いた。これに驚かないほど強靭な心臓を持っていない小坂は思わずそのリンゴをぶん投げた。

 その一連の様子を見て、暁はただただ、笑っている。

「はー……笑ったですだ……。まあ、見ての通り一位の一人? 目はゲスリンゴですだよ」

「これどうやって戦うんだ!?」

「いやぁ……本当ですだなぁ……。ま、次にいくですだよ。もう一人の一位ですだ!」

 言って暁は再び指を鳴らした。するとまた、派手に炎が上がるが人影は見えない。炎が消えても誰が出てくるわけでもなかった。

「……? もう一人の一位は?」

 まさか来なかったのだろうかと小坂は首をかしげる。しかし暁は違うんだよと笑っていた。

「もう一人はここにいるですだ」

「ここに……?」

「そうですだ。お主のことですだよ!」

 そう言って指を指す。その先にいたのは小坂だった。というか、この場には今小坂と暁とゲスリンゴしかいないのだが。

「……? え? 俺?」

「くっくっく……リンゴとの戦い、楽しみにしてるですだよ……」

「ちょっ……どうなるんだ俺ッ!?」

 それはまだ、誰にもわからない。

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