教師の思い出
「それでは、帰りの学級会を始める。」
「センセー、しつもーん!」
いつも元気いっぱいなユウスケが、ぐいと背を伸ばす。
「何だ、ユウスケ。」
「この学校に、七不思議ってあるんですかー!」
「……。」
教師はうつむいて眼鏡を直し、再び顔を上げると微笑んで諭し始めた。
「一階だけの平屋建てで、今や生徒もユウスケとミチルだけの、田舎小学校ではなあ。」
「そっかー……。」
少年は残念そうに肩を落とした。
「ナァに、人生はウワサよりも不思議ばかりさ!」
「ミチルは、質問あるか?」
ミチルは笑って首をふる。
「よし、では終わり!さようなら!!」
「さようなら!!」
二人は大きく礼をするなり、夕陽に照らされた校庭へと駆け出した。
「明るいうちに帰るんだぞ!」
教師は、二人が遊ぶ姿を満足げに眺めつつ、赤い陽を背に校門を出た。
その様子を見ていた老人たちが、呟いた。
「かわいそうに、センセイもおかしくなっちまって……。」
「病欠の日にあんな事が起きて、みんな飲まれちまうなんて、無念だったろうさ。」
家路をたどる教師の影が、長く、長く、水田に伸びる。
風が、そよそよと青い稲を揺らす。
若葉の擦れ合う音に、子供たちの笑い声を聞いた気がした。
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解釈は皆さんにお任せします。
作品の文字数制限が300文字なのかと勘違いした結果。