4 嵐の夜に……
なんか何時の間にか五月になってた(;´д`)
『ザ、ザ・・・・現在、瀬津半島には大雨警報が発令されております・・・また強風につき大波高潮の恐れもございますので付近の住民の皆様は外出を控え(ブツッ!)』
運転手の白スーツを着込んだ金髪パンチパーマの男は車載のラジオを切った
(はぁ・・・全く俺もツいてないぁ・・・・。)
男は、後ろにいるサングラスを掛け頭をスキンヘッドにし白いスーツを着込んだ若い男をサイドミラーで見つつ思った
ワイパーは忙しなく動くが目の前は薄暗い。
ワイパーがどれだけ早く動いてもフロントガラスに大粒の雨粒は次々と打ち付けられ視界は五十メートルあるのか怪しいところであった
だがライトには前方を走る全体黄色で塗装された金属の塊が照らされた
金属の塊………………
………それは、ロシア製の外車であった
しかもただの外車ではない、大型のコンバットタイヤを装着し、
鉄パイプに偽装しぱっと見ただけでは分からないが、
車体上部に14.5mm口径KPV 重機関銃と7.62mm口径PKT機関銃をその車両は、BRDM2装甲車であった
そしてその工事用車両に偽装させるため黄色く塗られ全体のシュルエットを隠すためにベニヤ板等でカバーをかけられた装甲車の側面には白いペンキで石犬組と書かれているのであった
……石犬組
表向きは、普通の土建屋なのだが
裏の顔は、海外より違法な銃器や軍用爆薬を密輸し非合法組織に売買する死の商人なのである
今日は、いきなりとある組織との取引で渡す銃器と弾薬、爆薬そして海外から仕入れた特殊な機械や工作機械を取引先に渡す事になった
しかしこの雨というか嵐もなかなか止みそうに無い………
高額の金を積まれなければもうちょいマシな天気でやってほしいところだ…………
「しかし、アニキ・・・じゃなかった組長、風が強くなってきやしたが荷物は大丈夫ですかね?」
運転手の金髪パンチパーマの男は前を見つつ後ろに居るスキンヘッドの男に話しかけた。
スキンヘッドの男……
石犬組組長 石犬 厳は、耳に装着していたイヤホンをゆっくり外し口を開いた
「荷物は無事だろう、うちの兵隊が守ってるのだからな………」
野太く低い声が嵐の音と共に響いた
「………。」
組長の言う『荷物』とは、明日の取引にて使われる商品なのだが
何が入っているのかは、組長以外は詳しくは知らない
しかし、この車の後ろを走行する2トントラックに自動小銃や散弾銃、拳銃で武装した組員が乗っている
もし何かあっても大丈夫だろう
………何もなけりゃ良いが
何か胸騒ぎがする。
*** 同時刻 私立大山農業高校 グランド ***
「笠谷陸士長ぉー!シートを絶対飛ばすんじゃない急いで括れ括るんだぁ!!」
グランドの端にて夜営していた自衛隊の車輌とテントは今にも飛ばされそうなほど激しく振れていた
「おいっ!誰か予備の釘持ってないかァ!?」
「暗くて何も見えません」
とテント内に居た誰かが叫んだ時、今までに無いくらいが強風が吹きテント端の小さなほつれからビリビリと裂けだした
ウワワァァ!!!破れたぞー!!!!!!
チクショー!!!
「ロープで車輌を固縛する!なんでも良いからロープをもってこいッ!」
「航空科はさっさとヘリを倉庫でも何でも良いから何処か安全な所に運べェ!」
隊長と思われる人物がそう声を上げると装甲車や戦車と見られる大きな機械を積んだトレーラーが一斉に動き出したが、操作を誤りグラウンドと畑の間に出来ていたぬかるみに嵌まってしまっていた。
………………阿鼻叫喚の状態の自衛官達をグランド横の生徒寄宿舎の廊下から覗く二人の男が居た
「自衛隊の方々もよくやりますね……」
無糖の缶コーヒー片手に窓の前に立つのはバスで大暴れしていた県警の警官 杉野 太郎巡査であった。
「しかしあんなにびしょびしょに濡れて大丈夫か?
あっ!テント飛んだぞ…おい……」
と杉野の傍らにて呟いたのは、同じく県警の警官 黒田 将海警部補であった
彼ら県警の警察官達は本来、高校の隣にある駐在所で一夜を過ごし明日に備えるのだが、ちょうど視察がてらに学校内の見回りをしていたらこの突然の嵐で身動きが取れなくなりここに居るのであった。
「警部補……これじゃ駐在所に戻るのは難しいですね」
グラウンドの奥、畑との境に植えてある高さ4メートルはある大きな杉の木が先程から右へ左へ大きく揺れているのが窓から確認出来る
「あぁ……流石にちょっと無理だな」
と黒田が言い後頭部をポリポリと掻き始めたその時、胸元の無線機から呼び出しがかかった
『ザッこちら、大山PB……
高校巡回中の黒田警部補、杉野巡査応答して下さい………』
『はい、こちら黒田』
『先程より本署から連絡があったのですが台風の接近の為、強風および高波警報が発令されましたので校内保安の為、教員・警備員の方と共に警備にあたれとの事です。
また、頑丈な建物からは極力に出ないよう同時に出させないようにしろとの通達です………』
『了解、これより警備にあたります………』
無線機を切り、
顔を上してため息を吐く
「どうやら長い夜になりそうだ………」
風で掻き消されそうな声で呟くのであった…………
公務員達が身の回りの事態に慌てている時
学校の生徒達は………………
「急いでロープを回せ!もたもたするな急げ!急げェ!!」
誰かが大声でそう叫ぶ
今彼らがおこなっている作業はビニールハウスの補強作業である
ビニールハウス・・・
木材または鉄パイプを柱とし、合成樹脂のフィルムで外壁を被覆した農業用の小屋である
中で暖房を焚き温室として使うのだが構造上台風や突風などが吹いた際、ビニールの隙間から風が入ると凧が空を舞うように引っぺがされ飛んでいってしまう
引っぺがされ露出してしまったらハウス内で栽培中の作物は駄目になってしまう
その為にもこうしなければならないが雨の中、雨合羽を着ているからどうも体が重たげである
それ以前に雨が降り手元が暗い状態なのだ
昼間の晴れてる時と比べるとどうしても辛い
バリバリッ!!!
突風が吹きビニールハウスが端から音を立てて破れてきた
「ぬわぁぁ!飛ばされるぅぅぅぅ!!!!!」
すると破れたビニールハウスのビニールが凧のように付近でロープを張っていた雨合羽を着た生徒の体を持ち上げた
そしてそうして吹き飛ばされそうになってる生徒………
………それは神納であった
「マジ勘弁して!マジ勘弁して!!
誰か!助けてくれぇ!!!」
神納は、右へ左へ激しく揺さぶられ今にも吹き飛ばされそうになりながらも必死でしがみついていた
「かぁぁぁぁーーのぉぉぉーーー!!しっかり掴んでろぉ!!!!絶対に離すんじゃないぞぉぉ!!!!!」
白い作業服を着た教員 若松 槍夫は自らの腰 付けてる革ベルトを外しロープにくくりつけ神納に投げつけた
「おぉらぁぁッ!!!!受け取れぇぇぇ!!!」
スカッ
だが、ベルトは風に流され神納の手にはあと一歩の所で届かず下にいた藤野の後頭部にヒットした
「う、うぅーん」
ドチャリと藤野は地面に倒れた
どうやら気絶したようだ
「って!藤野ッ!!お前も気絶すんででねぇよぉぉぉぉ!!!!!」
若松の声が響いた
「ああああ、ヤバイ!!手が滑ってきた」
ツルン
「あ、」
神納の手はロープから離れた
「ぬああああああ・・・・・・・ってアレ?」
空中に投げ出された・・・・
はずなのだが、
「止まってる・・・?」
神納はそれを最後に意識を失った
H28 5/13 投稿