3.5話(閑話) 校門の集い
いつのまにか半年も更新してなかった
(汗)
もう読者もいないか?
「ふぅ、、、お前らもちょっとは落ち着けよ」
コーヒー牛乳のパックを左手に持ち部室の隅に置いてあったパイプ椅子に座る小太りの男子生徒は呟いた……
「ほれ」
そう言いビニール袋の中から水が入ったペットボトルを取りだし、まだ床で股を押さえている神納に手渡した
「うぅぅん……ありがとうございます」
神納は、片手でそのペットボトルを受け取りその場で蓋を空け一口飲んだ
「ほれ、利根川のも入ってるから仲良く(・・・)分けろよ」
カラミティにはコーラが二本入ったを袋を渡した
『仲良く(・・・)分ける』を強く強調するのであった
「ナンパラ先輩ッありがとうございます」
満面の笑みでそう言われさすがに南原も照れたのか十円ハゲが出来て完全に不毛地帯となってる後頭部を撫でようとするも、その事を思い出し当てようとしていた手を引っ込めた
カラミティにしても持ち前のプロモーションに顔そしてやや天然な性格によって彼女のファン(?)の男子生徒も多いのだが、その細身の身体には不釣り合いなくらいよく食べるのだ
「あの…先輩?俺のは?」
志村は南原に手を伸ばすが、
「あっ………すまん忘れた」
「そんなー(´・ω・`)」
現実は、甘くはなかった
「外からから聞いてたがお前らなんでコスプレなんか選んだんだ?しかもビキニにチャイナ服……?」
南原の視線の先には、床で寝ていた神納と対象的にキリッとした表情で床に正座している志村の姿があった
鼻血流していても無駄にイケメン面なのが腹立つのだが………
「当然、こうなるのは分かってましたよだいたいは、
ただココまでとは……ちょっと予想外でしたね…」
ぬへへと笑いつつ志村は軽く頭を掻く
頭にはうっすら汗が光っていた
………志村の背後には、AKを持った利根川がまるで不動明王の如く仁王立ちしていた
「あぁ、、いてて、、、そ、そういえば南原先輩なんで来たんス か?
三年生はもう部活引退した筈ですよね?」
痛みが引いてきた神納は、床から上体を起こしあぐらをかいて座った
「ん?あぁ、お前らがなおっちゃんとこから銃を借りてそれを展示するって富士先生から聞いたから俺も実家から色々送って貰ったんだ」
そう言い南原は、ドアを開け部活の外から巨大な段ボールの箱を何個か運んできた
***30分後***
「どうだ!これは!!」
南原が段ボールから取りだしたのは旧日本海軍の士官服と短剣、日本刀であった
軍服以外の物の日本刀、銃剣等の装備品は鑑定書が付属している事からどうも本物のようだ……
「一体コレどうしたんスか!?先輩」
志村も明治時代の陸軍の制帽を手に取り訪ねる
「実家の倉庫から拝借してきた
同じヤツじゃないがとりあえず全員分の軍服と装備はあるゾ」
南原の実家は、明治の頃から続く輸入雑貨・骨董品を扱う商店で国内でもその筋では名の知れた店である
「あぁ^^~モノホン装備品良いッスねぇ^~~」
と神納はまるでどこかのホモビデオの様なセリフを吐き食い入るように見ていた
「おらぁ、着てみろよぉ」
そして神納に触発されたのか南原もまた
「………あれ?いつの間に野◯先輩口調になっとんじゃ?」
そんな状況の利根川は、思わず呟くがその事は誰の耳にも入る事は無かった
******
場所変わり農高の西の隅……
海がよく見える大山農業高校の弓道部の弓道場では、
「暇だなぁ、、、」
弓道場の隅に簡易ベンチを引きその上に仰向けに寝ながら雑誌を読む
弓道部「元」副部長藤野の姿があった
かぁかぁと青い空をカモメが飛び時々臭いアレを爆撃してくるが大半は矢道の芝生に落ちる
……おかげでちょっと臭いが潮の香りと温もりが心地よい
思わずアクビが出る………
やがて、雑誌を顔に乗せスースーと静かな寝息を立て始めた
・・・・・・・べちゃッべちゃッ
足音?誰かな??
「藤野センパイ何やってんですか?」
唐突に寝ている彼の顔を除き込んでいたのは後輩の青野であった
「うわっ!!」
驚いて藤野は思わずベンチから転げ落ちた
「イヤぁ~あんまりにも天気良いし何より今日休みだしね
ちょっと休憩してた」
藤野は顔にうっすら汗を流しつつ雑誌に付いた砂ぼこりを払いベンチを畳んだ
そして藤野の背後から鈴のように透き通った綺麗な声が聞こえた
「雑誌にベンチまで持ち込んで昼寝なんて、良いご身分のようね、藤野クン♪」
「!!!」
藤野のはこの声に聞き覚えがあった………
「ハァーイ♪」
振り替えるとそこには、
黒い髪をショートヘアにして赤い縁の眼鏡を掛けた弓道部「元」部長 鳳田 祥子の姿があった。
「!!鳳田さん!何時の間に背後に!?」
「え?ついさっき普通に通ったけど??」
!?
おかしい・・・・・・人が来てもすぐ分かるようにあえて周りの土を水でべちゃべちゃにしたはずだが?
しかも、彼女が歩いた後が見当たらないが・・・一体??
思考を巡らすがそれは途中から藤野の耳に入ってきた青野の声によって掻き消された・・・・
「それになんでそれでココで寝るんですか・・・まったく」
青野は半ば呆れた様な表情をしつつ弓道場の用具倉庫に向かい倉庫の南京錠を外し中から白と黒のラインが入った霞的と的を固定する為の合串竹を取り出した
「藤野先輩、的立てするんで手伝って貰えませんか?
鳳田先輩、高さ監督お願いします」
「えっと、僕は………」
ガシッ!
誰かが僕の肩を掴んだ
振り返るとそこには鳳田さんが居た・・・・・・
あれ?鳳田さんってさっき目の前に居たよね?
「可愛い後輩の為にもやったげなさいよ藤野クン♪」
笑顔で言う目が笑ってない
なんというか、野生の虎みたいな・・・・・・
やはり、この人には何故か逆らえない・・・・・・
彼女の何がそうさせるのかはよく分からない
性格?個性?
やはり分からん
「あぁ…うん……分かったよ」
そう言い藤野はベンチと雑誌を名残惜しそうに見ながらも腰をあげて的場に向かった
******
弓道場にて藤野がまだ昼寝をしている頃、
農業高校近くの警察の駐在所では、
「オーライ!オーライ!オーライ!ヨシッ止まれッ!!」
駐在所の駐車場の片隅に青と白色で塗装された大型のトラック ユニグモが一台、警察官の誘導にしたがって停車した
「ヨシッ!各員機材下ろして所内に運び込め」
現場指揮の太田警部の指示によって、警察官達がトラックの荷台からダンボールに入った様々な機材を下ろしていた
「はぁ、やっぱり二個小隊分も泊まるとなったらけっこう荷物ありますね」
黒田は駐在所の二階ある広さ十二畳ほどの和室に本日泊まる警官
の布団を運んできた
「まぁ学校の警備と展示で使う荷物がありますからな……
もっとも、それをきっちり中に入れれるだけの広さを持つこの駐在所も凄いですが」
そう言い、すぐそば同じく布団を運んできた制服を着た初老巡査は天井を見上げる
この建物は元々民間の旅館で駐在所ではなかった
本来駐在所自体は、この建物の隣にある空き地だった場所にあり祭時にはこの旅館に警官が泊まるというワケだったのだか、ある日経営者が不運にも交通事故に遭い旅館は廃業してしまった。
しかし立て替えたばかりでまだ綺麗な二階建ての旅館をそのまま潰すのは実に惜しいと思った県警の上層部は、この建物を買取り(※ちなみにこの当時は日本はのちにバブルと呼ばれる好景気の時代であった)隣にあった古い木造平屋の駐在所を潰し今のこの建物に移転した
早々と布団を敷き始めていた黒田を呼ぶ声が外から聞こえた
「黒田警部補ちょっと来て下さい!」
表の方から若い女性の声が聞こえた
「はいはい」
「コレを保管お願いいたします」
彼に渡されたソレ…
金属ケースが複数
ケースは金属製で簡単には壊れなさそうなうえに頑丈な鍵が付いている
中身は、書類を見ずとも大体分かる………
ケースには『火気厳禁』と書かれていた。
疲れて緩んでいた表情、気持ち両方とも引き締めて
「ハイ、了解致しました!」
*****
台車を格納して気分転換がてら表に出た
「ふぁ~~あ………今日は天気がいつにも増して良いなぁ」
青い雲一つない青空である
秋に入ったと言ってもまだ紅葉には程遠いようだがこんな天気もひさしぶりだ
まぁもっとも毎年どんな天気であっても恒例のモノは相変わらずなのだが………
『自衛隊による軍事教育を許すなァ!』
『教え子に人を殺す方法を見させて恥ずかしくないのかぁ!!!』
見慣れた
毎年、この目の前にある学校の文化祭で自衛隊が校門を抜ける前にはこうして自称『良い市民』または『世界市民』等と
呼ばれる
『市の迷惑条例違反の常習犯』による座り込みやデモが行われる
「………ああ言ったのが居なかったら、俺の仕事もうちょっと減るのかなぁ………」
ふとそう呟き台車に乗っていた金属ケースを思い出す……
(使う事がなけりゃ良いが………
………なんか妙に胸騒ぎがするな)
などと考えていたらい急に誰かに話し掛けられた
「お巡りさん、これお巡りさんや」
「ハイ?
あ、信楽さんでしたか」
頭を坊主にし作務衣に雪駄という出で立ちで彼に話し掛けてきた老人は駐在所の裏にある鷲雷寺の住職 信楽 慶次であった
「どうしたんです信楽さん、また出前授業の帰りですか?」
「いやの今日は久し振りにぎょうさんお巡りさん(お客さん)が来とるようじゃけんのこれを持ってきたんじゃ」
そう言い、やや大きい紙袋を差し出した
紙袋には手書きで「たくあん」と書かれていた
「あ、ありがとうございます信楽さん」
この人が作るのたくあんは実は農協の直売所でも売られているが味や風味が非常によく
かなりの人気商品で常時品薄の商品なのである
「何々、これくらいどうという事は無い
今回のできばえはかなり良いぞ」
「では、今夜にでも頂きます」
そう言い黒田がその場を立ち去ろうとしたら
「おっと、そうじゃ黒田さんや今夜は嵐になりそうじゃけ雨戸や戸締まりをしっかりしときんさい」
「?
今夜は月や星のよく見える晴天ですが?」
黒田のそうした返事にあきれたかのような顔をし信楽は、まるで教師が生徒に諭すかの様に話をするのであった
「ええから、ちゃんと準備しときんさい
今夜は絶対嵐になる
…あと、あそこら辺に居るヒッピーモドキのバカどもをはよ、解散さして家に帰らしてやりんさい
………大変な事になる前にな」
「は、はぁ……了解致しました………」
黒田は、ただそう言い頷くしか出来なかった
*****
一方、大山農業高校の4階の窓から一人の初老の男がコーヒー片手に校門の様子を見ていた
この学校の長
大山 浩史
である
「毎年、毎年飽きないでよくやりますねぇ~」
昨年、一昨日の今日の様子を思い出しと思わず呟く
もっとも、自分が学生の時にあった頃は、校門をくぐろうとする自衛隊・警察車両に卵や石を投げつけたりレーザーポインターを向けたり等とあったりした
最も、そんな事もあってか自衛隊・警察は何があっても対処出来るように年々装備や人員を充実させている
バラバラ~~
バラバラ~~~
バラバラ~~~~
青い空を数機の自衛隊の軍用ヘリと薄い青で塗装された警察の大型ヘリがこちらに近づいてきていた
おそらく、大半は本校の農薬散布ヘリが駐機しているヘリポート着陸して一部の大型ヘリはグラウンドに降りるのだろう
そういえば今年は海上自衛隊のミサイル挺と掃海挺が二隻と海上保安庁からも巡視艇と消防挺が二隻来るのだったか………
トントンッ
「どうぞ」
ノックをして入って来たのは、緑色の作業服を着込んだ体躯の良い用務員の川嶋であった
走ってきたのか頬を汗が流れていた
「校長先生、あと15分程で理事長先生が到着するとの事です」
「おやおや、もう来ましたか
…さて、忙しくなってきますね」
校長はそう言いコーヒーを一気に飲み干した
*****
「軍国主義反対ァーーイ!!!」
「高校の文化祭に人殺しの兵器は要らなァーーーイッ!!!」
だが、そんな喧騒を掻き消す音が突如鳴り響いた
ブインッ!!ブインッ!!
ドッドッドッド!!!
草刈機、チェーンソー、エアーコンプレッサーのエンジンの鳴り響く音とともに防塵マスクを被った生徒達がやってきた
ザッザッザッという生徒の安全靴の足音に草刈り機、エンジン
音
キーンっというマイクのモスキート音
「校門前の居る皆サンッ
コレカラ、校門付近にて看板取り付けの作業をオコナイマス!
アブナイので下がってクダサイ!!」
とマイク片手に軽トラックをゆっくり運転するは、土木科の教員ジョバンニ・K・佐藤であった
すると、群衆の中にいた黒縁の細い眼鏡をかけたスーツ姿の中年女性が声をあげた
「な、なんなんの君たちはってあんた!なに生徒にあんな危ないもの持たせてんだ!!」
中年女性は、ジョバンニが運転する軽トラに近づいた
「Oh、危ないデスヨ」
「危ないですよじゃないなんで学生にチェーンソーなんか持たせてんの!!」
厚化粧に脂肪が付き二重顎となった顎がよく目立つしかも歯並びが悪いのか唾液が声を上げるごとに散ってくる
それにこの学校の匂いが付かないように大量の香水を付けているようだ
甘ったるい匂いで鼻が曲がりそうなだ
「それはこれから明日校門前で行うパフォーマンスのためデス」
もちろん嘘だ
ここにたむろしてる彼らに対しての威圧という事で生徒たちに持たせている
防塵マスク掛けさせているのも困惑した生徒の顔を見せない為だ
「ふぅん?事前の告知ではそんな事は書いてありませんでしたが?」
告知・・・本校のホームページに挙げている文化祭の催しの一覧なのだ
しかし、
「細かい事はイイんデス!!!!」
最大限の声と最大限の目力でジョバンニは中年女を一喝した
すると彼女はジョバンニの迫力に圧倒されすこし後ろに下がった
しかし、
ジュッルン!
「あっ」
生徒の誰かの声が聞こえた
この学校には他の農業高校と同じように牛や豚、鶏を飼育する
畜産科がある
この日の早朝、ここでは畜産科の生徒が一頭の牛を散歩させていた
しかし、散歩させていたジャージー種の雄牛はなんと散歩中に催してしまった
牛のアレはものすごい量なのだそれこそ十何キログラムからである
大部分は畜産科の生徒達の手によって回収されたがごく少量が残ってしまった
そう彼女はそれを踏んだのだ
彼女は革靴を履いていた
しかし、革靴には残念ながら滑り止めの溝なんかは無い
故にそれは見事に滑った
「ひゃあ!!」
ドスン!
べちゃり・・・
中年女は尻餅をついてしまった
そしてその場所は・・・
「なにコレ・・・くっさ!!!」
ちょうど牛がアレをした場所である
いや狙ってないがタイミングが実に絶妙である
鼻を近づけ中年女も自分が踏み尻でつぶしたモノが何か分かると
顔面を真っ赤にして
「っ!!!
ちょっとなんて事をするのよ!!!!
私のス・・・」
しかしそれを遮るように校門からパァー!パァー!!っとクラクションを鳴らす音が聞こえた
「こちらは消防署です!皆さん道を空けてください!」
見ると赤く塗装された消防署のハシゴ車、放水車に続いて救急車も校門の前に並んでいた
さらによく見ると後方には、大山財閥(※コーポレーション)の傘下
大山建設の大型トレーラーとトラックがいた
校門側学校側双方から板挟み状態となった
さっきまでの威勢はどこにいったのか市民集団は狼狽し車の前に座り込みを続けていた者は後ろにいるトラックを降りて来た建設会社の作業員によって睨まれていた
「あああもう!何だって言うの!?次から次と・・・もういいッ」
中年女は、そう捨て台詞を吐いて群衆の中に戻っていった・・・
「くそくそくそ!!!!!!!」
中年女こと市民団代表
川口はワゴン車の運転席で車のハンドルを何度も何度も叩き付けた
「あいつら舐めやがってこの私を舐めやがって
私が言ってることは正しいんのよこの私は!
警察も自衛隊も学校なんざどうだっていい
私のいってる事は正しい・・・この世界がおかしい・・・そうよ」
ぶつぶつ一人ワゴンの中で念仏のように独り言を呟き続けた
「もう・・・こうなるんだったら
ふひひひ・・・
私の言うこと聞かないとどうなるか分からせてやる
これは正義・・・そうだ正義なの!」
そう言い奇妙な笑いを浮かべた彼女は懐からスマホを取り出した