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黒谷ヤマメになっても、私は元気です  作者: 土蜘蛛
黒谷ヤマメとして、幻想入り
8/15

8話「釣り」

「さて、ヤマメ。釣りに大事なことは何だと思う?」

「うーんと、気長に待つことかな?」

「その通り、道具を準備しとくからさ、餌をとってきて」

「何を持ってきたらいいの?」

「小さい虫とか人魂でもいいよ」

「人魂って…冗談だよね」

「一回それで大きい魚を釣ったことがあるんだ」

「本当に?」

「とりあえず、一匹は捕まえてきてね」

ヤマメは家の周辺をうろつき、餌を集めることにした。

小さい虫は石をひっくり返したらすぐに見つけることができた。

虫を触るのは苦手だったはずなのに、不思議と嫌悪感はなかった。

「あの、すみません」

誰かに呼びかけられ、振り向くと、上半身は黄土色の着物に身を包んだ女性、

下半身は巨大な蜘蛛の足の妖怪がヤマメを見据えていた。

「私の子供を見ませんでしたか?私に似た着物を着た女の子なんですけど」

「いや、見てないですね」

「そうですか…すみません、引き留めてしまって」

蜘蛛足の妖怪はいそいそとその場を去っていった。

あの妖怪ひと、足がキレイだったなぁ…って、何考えてんだろ私は…

次は人魂。手づかみじゃ無理だよね

そうだ、昨日出せた蜘蛛の糸で…でも燃えないかな?

数匹人魂がたまっている所にヤマメは手をかざし、狙いをさだめる。

次の瞬間、空を切る音が鳴り、蜘蛛糸が一匹の人魂に巻きついた。

「やった、これで…っ!?」

人魂は危機を察したのか、ヤマメの方に向かって青い炎の玉を飛ばしてきた。

ヤマメは間一髪でそれをかわしたが、他の人魂も攻撃を始めた。

彼女は逃げ、人魂は追う。

「キスメ、助けて!」

「どうしたの、ヤマメ?そんなに慌てて」

「アレを何とかして!」

ヤマメの背後から数十匹の人魂が彼女を狙っている。

「おお、いっぱい連れてきたね」

キスメは楽しそうに人魂を眺め言った。

「安心して、すぐ倒すから」

キスメは何かを念じるような素振りをすると、人魂の目の前に

忍者が使うような真っ赤なクナイが現れ、貫いた。

人魂は大人しくなり、ふわふわと浮遊している。

「怖かった…」

「臆病だね、ヤマメは」

「だって…いや、そんなことよりさっきのはどうやったの?」

「これは地上にある博麗神社ってとこの巫女が考えたもので、

『弾幕』って言うらしいの。本来の使い方と違うけど、

相手を殺さない程度に攻撃できるの」

「それって私にもできる?」

「できるよ」

「やっぱりできないよね…えっ」

「できるよ、ヤマメでも」

「弱っちい下の方の奴はできないけど、平凡な奴なら誰でもできるよ。

私達は上と中の間かな、今度教えてあげるから今は釣りだよ釣り」

(私は結構強い方に分類されるんだ…)

ヤマメはキスメのしていることを見よう見まねでして

釣り糸を湖面に垂らす。

「後は待つだけ、気長にね」

無言の時間がただひたすら流れ、

ヤマメは少し眠そうにしているが、キスメは一切表情を変えず釣竿に向き合っている。

「きたきた」

キスメの釣竿に動きがあり、獲物を釣り上げた。

「…骨?」

釣り針にかかっているのは骨だけになった魚だ。

「これは骨魚、1銭の価値もないから捨てよ、食べるとこないし出汁もとれないし」

キスメは人魂を餌にして再び釣り糸を垂らした。

「あっ、かかった」

ヤマメの釣り糸にも動きがあり、キスメと同じようにして釣り上げる。

「それは虎魚、虎みたいな模様だから虎魚。普通に食べられるから売れると思うよ」

「魚のこと色々知っているんだね」

「昔やったことでも、覚えているものって結構あるもんだよ?」

そうして淡々と釣りを続け、日が暮れるまでに何十匹かの魚を釣った。

キスメが最後の人魂で『魂喰い』という大物を釣り上げ、ヤマメは心底驚いた。

【旧地獄街道商店街】

旧地獄街道の商店街にて、二人は主に地底の魚を扱う魚屋に来ていた。

「あっ!昨日助けてくれたヤマメさんじゃないですか、いらっしゃいませ」

魚屋の奥から見覚えのあるカメ妖怪が朗らかな笑顔で出てきた。

(ヤマメの知り合い?)

キスメが耳うちで話す。

(うん、まあそんな感じ)

「えーっと…」

「そういえば名前を言ってなかったですね、私は玄宮げんぐうと申します」

「玄宮さん、これは私達が釣ってきた魚なんですけど、

買い取ってもらえないでしょうか?」

「もちろん、ヤマメさんは命の恩人ですし、高く買い取りますよ」

「良かったじゃん、お金は後で山分けだよ」

数十匹の魚は一週間くらい三食食べていけるくらいのお金に変わった。

「また売りに来てくださいね」

「私帰るわ。じゃあね」

「また明日ね」

ヤマメは玄宮とキスメに別れを告げ、今日の終わりをゆったりと過ごした。

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