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黒谷ヤマメになっても、私は元気です  作者: 土蜘蛛
黒谷ヤマメとして、幻想入り
5/15

5話「地上」

時刻は夕方くらい、岩盤の裂け目から見える光はオレンジになっている。

ヤマメはベッドから出て窓からぼんやりと地底湖を見つめていた

(ちょっと散歩でもしようかな…)

これからずっとこの辺りで生活するから、周りのことをよく知らないと困るよね、と思い

小屋の外に出て、地底湖のほとりから旧地獄街道とは反対の方向へ向かった

昼でも夕方でも薄暗くごつごつとした道を進んでいると、

前方に夕日が差し込んでいる、洞穴の出口が見えた。

「眩しい…」

目が慣れていたせいか、太陽がとても眩しく感じた。

地底の外は森に囲まれ、見上げると遥か向こうに頂上、ここは山の中だった。

ヤマメはその周辺を歩くこと数分、汚れが見当たらない綺麗な川を見つけた。

川を覗き込むと大小様々な魚が優雅に水中を泳いでいる。

それと、自分の姿が川に映し出されていた。

(改めて見ると、この格好は…)

まだ慣れない格好を気にして顔を赤らめていたその時、

川の対岸から気配を感じて顔を上げると森の木々並に大きい

イノシシのような姿の4本の牙が生えた動物がいつの間にかいた。

「う……あ…」

このままじゃ殺される……

逃げようと思っているが、腰が抜けて動けない。

しかしその動物はヤマメを見ても特に気にせず川の水を飲み始めた。

ヤマメはほっと胸を撫で下ろした。

(良かった…見た目は怖いけど、大人しいんだね)

「アンタ、見ない妖怪だな。何処から来た?」

「へっ?」動物が喋った。

「えーっと、地底から?」

「そうか。ワシは少し前からこの山に住み始めた妖怪でな、

ここのことをまだよく知らないんじゃがこの辺りのことについて

教えてくれんかの?」

「ごめんなさい、私もよく分からないんです」

「何?まぁ、地底の妖怪はあまり地上に出ないと聞くし仕方ないな。

邪魔したな、さらばじゃ」

イノシシ妖怪は茂みの中に消えていった

(薄々気がついていたけど、やっぱり妖怪だったんだ)

もしかして、この山って妖怪だらけなの?

ヤマメはそそくさと洞穴に戻り帰路についた。

地底湖に戻ると、パルスィが家の前にいた

「ヤマメ、何処に行ってたの?」

「洞穴の外に行ってたの」

「そう…あまり地上に出たら駄目よ、

私達は嫌われ者なんだから」

「何で嫌われているの?」

「地底にいる妖怪は人に危害を加えたり、生活を脅かしたり、

人間に嫌われる者ばかりなの」

「そ、そうなんだ……」

さっきのイノシシ妖怪も

「地底の妖怪はあまり地上に出ない」って言ってたし

…ということは私も嫌われているんだ

「ねぇ、今日泊まってもいい?」

「え?う、うんいいけど」

二人は家の中に入りイスに座り向かい合う。

「お茶、淹れてくるね」

ヤマメはかまどの所に向かい、ふと思い出す。

「…あっ」

かまどってどう使えばいいか調べてなかった…

まごついているとパルスィがキッチンに入ってきた

「何やってんの?」

「いや、その、かまどの使い方が分からなくて」

「仕方ないわね…教えてあげる」

「ごめん…何も知らなくて」

「気にしないで」

ヤマメは手取り足取りパルスィにかまどの使い方を教えてもらって、

湯を沸かし緑茶を淹れることができた。

「そうだ、晩ごはんも作ってあげる」

「そんな、でも」

「まだかまどの使い方慣れていないでしょう?」

パルスィは氷を入れて冷やす古びた冷蔵庫から

食材を取り出して下ごしらえを始めた

「ヤマメってさ、料理はできるの?」

「それなりにはできるけど」

「それなら良かった。ちょっと手伝って」

パルスィは慣れた手つきで野菜を切り、

ヤマメは切り終えた野菜を水を入れた鍋に入れて煮込み、餅と味噌を入れる。

「ちょっと味見してみて」

「うん」

味見皿で出来たものをすくい口に含む。

「美味しくできてる」

「じゃあ、盛り付けといて」

テーブルにできた二人分の雑煮を置く。

「「いただきます」」

ヤマメは幸せそうに餅を頬張っているが、

パルスィは黙々と雑煮を食べ進める。

「「ごちそうさま」」

「ありがとう、パルスィ」

「困った時はいつでも言ってね」

「…そうだ、今から湯屋に行かない?」

「湯屋って?」

「風呂屋の事よ」

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