15話「戦い」
先に仕掛けたのは相手だった。馬を駆りこちらに向かってくる。
「千尋はキスメの後ろから絶対に離れないでね!」
「う、うんっ」
ヤマメは覚悟を決めた表情で敵を見据える。
「ヤマメ、とにかく相手の隙をうかがって」
「分かった、頑張るよ」
「頼もしいね、私はあんたのフォローをするわ」
ヤマメは骸骨の方へ走り出す。その時、はっと気づく。
(隙をうかがえ、って言われたけど)
そもそもどうやって戦えばいいんだろ?
あのトカゲ妖怪に襲われた時はとっさだったし……
あれこれ考えちゃ駄目だ、とにかく動かないと。
敵の骸骨は大砲を構えると黒い鉄の砲弾をヤマメに撃った。
ヤマメは動きをよく見て砲弾をかわす。
砲弾が地面をえぐり、土を巻き上げる。
「ほら、こっちだよ」
キスメが弾幕のクナイを投げ、骸骨の気を引く。
「ありがと、キスメ!」
その隙にヤマメは馬の両前足に
蜘蛛の糸を巻きつけ、思い切り引っ張った。
「ぬおっ!!」
馬は大きくバランスを崩し、主人を振り落とす。
「やるじゃん、その調子で頼むよ」
「良かった、蜘蛛糸の練習が役にたったよ」
地面に落ちる直前、受け身をとった骸骨は再び大砲を構えた。
「来るよ、ヤマメ」
攻撃にそなえてヤマメは身構える。
だが、それは想像を超える攻撃だった。
大砲とは思えない、ありえないペースで
次から次へと砲弾がばらまかれる。
「わっ、ちょっと!」
ヤマメは頭をかがめたり、転がったりして
被弾すれすれで砲弾をかわした。
キスメ達の方にも数多くの砲弾が襲いかかる。
「キ、キスメさんっ!」
千尋はキスメにしがみつく。
「はーい、何とかするよ」
キスメがおもむろに指をはじくと
キスメと同じくらいの大きさの人魂が2匹現れ、
砲弾に我さきにと食いついた。
たちまち砲弾は勢いを失い地面に落ちていく。
「ヤマメ、前方注意」
またもや骸骨は砲弾をばらまいた。
直撃すれば流石の妖怪でもただではすまない。
しかし、さっきより砲弾の弾幕は薄い。
(これじゃあキリがないよ……イチかバチかやってみようか)
ヤマメは蜘蛛の糸の塊を砲弾に当てて勢いを弱めると、
さながらドッチボールのように砲弾を受け止めた。
「せいやっ!」
すぐにヤマメは撃った勢いより速いスピードで投げた。
「逃がさないよ!」
キスメが骸骨の周囲に人魂を出して取り押さえた。
彼は何とか逃れまいともがくが遅かった。
腹部に強烈な打撃を受けた大鎧は粉々に砕け、
そのまま骸骨の上半身と下半身を切り離した。
彼は断末魔を上げたのち、ぴくりとも動かなくなった。
「お疲れさん、ヤマメ」
キスメが手を振りヤマメに声をかける。
でも、返事がない。彼女はわなわな震えている。
何やら様子がおかしい。
ヤマメは主人を失い力無く横倒れになった馬の方へ
飛び上がると、馬の首に両手を一つに合わせた拳を叩きつけた。
ただれた皮膚から血が吹き、返り血がヤマメにふりかかる。
何か壊したくて仕方が無い。体が勝手に動き、
周囲の地面を一瞬にしてアリ地獄のようにへこませた。
「ひっ、嫌!」
千尋はキスメの後ろに隠れる。
キスメはまったく動じない。
「どうしたの、もう終わったよ」
「……えっ?」
(私、何してたんだっけ?そうだ、千尋を守らなきゃ!)
ヤマメはキョロキョロと周囲を見るが敵はいない。
「キスメ、あの骸骨は?」
「何いってんの、あんたが倒したんでしょ」
「そうだっけ?」
戦いの途中から記憶がない。
「うっ、血の臭いが」
自分の身体を見ると服に点々と血の円がついている。
「ヤマメ、ふざけてる場合じゃないよ」
「う、うん……ごめん」
後で考えよう、今はそれどころじゃない。
12月13日
小説を読み返して、明らかにおかしい所、気に入らない所を修正しました。
今後このようなことが起きないように努力します。