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黒谷ヤマメになっても、私は元気です  作者: 土蜘蛛
黒谷ヤマメとして、幻想入り
13/15

13話「ヤマメと千尋」

「はぁ…疲れた」

ヤマメはソファに吸い寄せられるように顔をうずめた。

2次会どころか4次会まで飲むなんて勇儀は本当凄い、

私は3次会で限界だったよ。

気が付けば、私は酒に対する抵抗がまったく無くなっていた。

むしろ、時々飲みたい気分になることがある。

むくりと彼女は起き上がると、千尋の元に寄り、言った。

「ケガの調子はどう、もう痛みはない?」

「はい、ヤマメさんのおかげで助かりました」

「よかった。千尋さん何も食べてないでしょ?」

ヤマメは笹の葉に包んだ丸いものを千尋に手渡した。

「作り置きで冷えてるけど、おにぎりだよ」

「ありがとうございます、何から何まで」

「そんな、当たり前のことをしただけだよ」

その時の彼女の顔は自分の姉と重なるように見えた。

「お姉ちゃん」

自然と千尋はヤマメのことをそう呼んだ。

「お姉ちゃん?」

「あっ!ごめんなさい、ヤマメさんが姉に似ててつい…」

「そっか、千尋さんはお姉ちゃんがいるのね」

「はい、ヤマメさんみたいにとっても優しいんですよ」

「お姉ちゃん、か」

そういえば、由香は今どうしてるんだろ?

きっと私がいなくて寂しがってるよね…

「どうしたんですか、ヤマメさん」

「何でもない。もう遅いし、寝よっか」


地の底は空が見えず時間がまったく分からない。

しかし嫌われ者たちはどういう訳か、朝から夜までを把握している。

だからって、規律正しく生活する妖怪しかいないわけじゃないが。

ヤマメが寝ぼけ眼をこすりながら窓を見ると、

岩盤の裂け目から差し込む陽光は昼を告げていた。

「おっす、お寝坊さん」

ヤマメの背後からキスメが抱きついてきた。

「わっ、いつからいたの」

「日が昇ってきた時からずっと」

「はわ…ヤマメさん、キスメさんおはようございます」

「キスメ、今日千尋さんを博麗神社まで連れて行くけど、一緒に来てくれない?」

「あそこの巫女怖いらしいから嫌よ」

「今度おごるから!」

「はぁ…仕方ないなぁ、一番高いやつでお願いね」

「ありがと、キスメ」

「千尋さん、立てる?」

ヤマメは千尋の手を取る。

「むむ、平たい」

「何のこと?」

「察しなさいよ」

千尋は頬を染めてベッドに潜り込んでいる。

「あっごめん!勝手に着替えさせたらまずいと思って」

数分後、千尋の姿は身長と髪の色以外はヤマメと瓜二つになっていた。

「ふふっ、よく似合ってるよ」

「どうしてリボンまで…」

「本当よく似てるねぇ、いっそヤマメの妹として暮らせば?」

「…遠慮しておきます」

久しぶりの地底の上。秋が深まり山全体が紅葉に染まりつつある。

「すっかり秋色だね」

「もう少ししたら真っ白になるよ」

「おい、そこの妖怪共!」

前方から突き刺すような怒号が飛んできた。

しばらくすると雑木林から

白と黒を基調にした着物を着た青年が現れた。

彼の背中には黒い翼がついている。

「お前ら、山の妖怪じゃないな。何処から来たんだ?答えによっちゃ、叩っ斬るぞ」

「地底だよ」

「…ん?すまない、もう一回言ってくれ」

「地底」

「うげっ、地底の奴らかよ」

「どうするの、その刀で私達とやるの?」

「何もしねえよ、じゃあな」

青年はヤマメ達から逃げるように飛び去っていった。

「もう大丈夫だよ」

ヤマメの背後からひょっこりと千尋が出てきた。

「怖かった…」

「キスメ、前に地上に出た時はあんな妖怪見た事ないんだけど」

「天狗だよ、最近この山で強くなったらしいよ」

「ふーん、天狗ねぇ」

嫌われ者で助かった、あんましうれしくないけど。

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